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亀井善太郎
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心のデフレを乗り越える [2013年01月16日(Wed)]
今日の話、なんか新しい宗教みたいですが、そういうハナシではありません。

昨日、大垣で出会った地元の経営者とお話しているときにふと自分の口から出てきた言葉が「心のデフレを乗り越える」です。

まずは昨日の岐阜訪問のあらましを共有しておきます。facebookで読んだ方は重複してしまいますので、以下3段落くらい(写真のちょっと上まで)読み飛ばしてください。

昨日訪問したのは岐阜県を中心に活動されているG-netというNPO法人、そして、彼らと協働している企業経営者や大学教授の皆さんのところです。

G-net(代表理事:秋元祥治さん)は、大学生が地元の中小企業に長期(半年程度)のインターンシップをする"つなぎ役"となっているNPOです。
インターンシップというと遠い言葉に聞こえるかもしれませんが、要は大学生が本気で中小企業の社長の下に弟子入りし、社会の厳しさと温かさ、そして、自分自身の可能性を見極める場をつくることにほかなりません。
地元の企業にとっては、大学生を受け入れることで新しい販路を開拓させるなどの事業拡大のきっかけとすると共に、時には、長年コリ固まってしまった社長と社員の関係に変化をもたらす等のいろいろなインパクトを産み出しています。

そんなうまいハナシがあるのかしら?と思うかもしれませんが、そのための準備はここに書ききれないほどのものがあります。
コーディネーターと一言ならおしまいですが、G-netがやっていることは多岐に及びます。
大学生向け説明会の開催、やる気溢れる大学生人材の選抜、受入企業の掘り起し、半年間のテーマの設定、学生・企業双方への進捗状況の確認、1か月ごとのフィードバック面談、次に来るインターン学生への引き継ぎサポート等々・・・。
これだけのことをやり遂げる彼らの専門性はきわめて高いものがありました。なるほど、これだから、うまくいくのですね。。。
こりゃなかなか、神奈川県西部あたりで同じことをやるにしても、いろんな準備が必要そうです。
(そこらへんの話はまた改めて・・・)

そんな中、出会ったのが、大垣の経営者の皆さんです。
「心のデフレ」の話は、その中の一人、大橋さんとのお話の中でふと出てきた言葉でした。

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大橋さんは大垣市で大橋量器という会社を経営されています。
檜(木曽等の産地で出た建築資材の木材の端材)から"ます"を作っていらっしゃいます。
9名の従業員の皆さんが手分けをして"ます"を作っていらっしゃいます。
檜を削っているので工場全体がなんだかよい香りです。

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もともと、大垣は全国のますの8割を生産する日本一のますの町です。
けれども、ますを使う場面をちょっと想像してみればわかりますが、ますの需要は先細りです。
そんな"ます"のすばらしさをもっと伝えたい、日本全国はもちろん、世界にも・・・。でも、いまいる従業員は生産で手一杯だし、営業もいままでの得意先を回るのは自分だけ。それでは、思っているばかりで何も現実化しない、そんなことに悶々とされていたと言います。

G-netの学生インターンを知った当初は、そんなに期待はしていなくて、学生を育てるのも社会貢献かなあという軽い気持ちだったということです。
しかし、G-netの皆さんや学生さんとお話しているうちに、ずっと悶々としていた思いとつながったのでしょうか、新しい販路開拓のため、ますの魅力を新鮮な観点から再発見するため、学生との協働が始まりました。

学生がインターンとして来るのは半年間と期間は限られていますが、限られているからこそ、具体的な結果を追求し、結果を出すことにこだわり、気がつけば、売り上げも拡大していたと言います。

五角形のます、合格祈願ますの販売拡大もそうした活動の成果だと聞きました。
いまでは、海外での展示会の準備や新しいますの使い方の開発等、いろんなことを学生に任せているそうです。
ついには、インターンで来ていた学生が大橋量器に入社するところまできてしまいました。

思わぬ副産物は、社員と社長の関係に変化が生まれたことだと言います。
新しい風が入るとギスギスもすることもありますが、そういうよい効果ももたらすのですね。

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(インターン学生が売り込んだ「ますフラワー」:大橋量器webshopより)

大橋さんのお話を伺っていて、ふと感じたのが、大橋さんがとにかく前向きなことです。
学生との協働といっても、全部が全部、うまくいくはずはありません。
(僕も学生さんといっしょにやることが多いですから、よくわかります・・・。)
期待以上の活躍をすることもありますが、期待外れはけっこう多いものです。まあ、それが学生さんといっしょにやる面白さでもあるのですがね。

面白そうだと思ったら"やってみよう"。
やりたいという彼の気持ちを信じて"やってみよう"、"任せてみよう"。
ダメになるかもしれないけど、ダメだと思える理由はいくらでもあるけど、それでも"やってみよう"。
失敗したとしても、失敗する経験ができるから"やってみよう"。

組織で仕事をしていると、しばしば、できない理由ややるべきでない理由をたくさん言える人に出会います。
僕の経験で申し上げれば、偏差値の高い組織ほど、そういう人が多いような気がします。
たしかに、彼が言う「できない理由」はもっともらしいですが、それでできなければ、何もかもどんどん小さくなるばかりです。

以前、自分が成長するためには1.01の掛け算を続けなければならないということを教えていただいた話をこのブログに書きました。
1.01を掛けていけばどんどん成長できるけれど、0.99を掛けはじめた途端、それはゼロに向かうという話です。

その話をふと思い出して、大橋さんとの会話の中でふと口から出たのが、
「心のデフレを乗り越える」です。

未来がわかる人はどこにもいません。
リスクのない、苦労のない未来はどこにもありません。

物質的に豊かになった結果、心のデフレが起きているのだとすれば、なおさら、僕たちはこれを乗り越えていかねばならないのだと思います。
ふと考えれば、自分自身、いろんな場面で心のデフレに遭遇します。
そこをどう乗り越えるのか、その逆に考え前に進むこと、そう考え行動していきたいものです。

「アベノミクスが効くのか」という議論が盛んにおこなわれていますが、GDP成長率とか、株価ばといった経済の数字ばかりを見るのではなく、また、ちょっと消費に踏み出すとか、そういう話でもありません。
大切なのは、もしかすると多くの日本人の中に深くある「心のデフレ」を乗り越えるために、私たち自身が何ができるのか、それぞれに考えなければならないのだと改めて思いました。

大橋さんとお話させていただいたのは「ますや」のお店の中でした。
お店にあるたくさんの"ます"は、ます=立方体という僕たちが知っているますを超えたものばかりです。
ますを追求していくとこれだけのものができてくるし、そこには無限大の可能性があるようにも感じました。
もしかすると、ますという制約があるからこそ、自由なカタチを産ませることができるのかもしれません。
そう言えば、福沢諭吉が言った「不自由の中に自由がある」という言葉ともつながった気がしました(厳密に言えば、福沢先生が使ったのはこの意味ではありませんが・・・)。

心のデフレを乗り越える。
これは、日本の国全体というちょっと遠いハナシではありません。
自分自身の問題であり、自分の周りの組織の問題でもあります。
それが積みあがって、日本社会全体になっていくというボトムアップの話なのです。

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いただいた"ます"を手に考えたいと思います。
まずは、この取組みを神奈川県でどうしたらできるものかなあ・・・。
Posted by 亀井善太郎 at 23:32 | この記事のURL