
1月23日(月)、熊本地方裁判所の優生保護法国賠訴訟で、原告の渡辺数美さん(78歳)と女性(76歳)の一部勝訴の判決がでました。
地裁初の勝訴であり、とくに意義が大きいのは「除斥期間」についてです。東京高裁、大阪高裁においては、一時金支給開始からの観点で示されましたが、熊本地裁においては、そもそも除斥期間は認められないという判決でした。それは、私たちが一貫して裁判の中で争ってきた争点です。
裁判官は3つの理由を説明しました。
●原告が被った身体的・精神的損害が甚大であり、大規模かつ長期にわたる憲法違反の人権侵
害よりも法的安定性を例外なく優先させなければならない理由(除斥期間)は、見いだせないという事。
●約半世紀という長きにわたり、被害者への適切な対応や救済措置を取らずに、差別や偏見を
正当化・固定化してきた国は、重大な責めに帰すべきという事。
●深い羞恥、後悔や自責の念、周囲の者らへの言いようがない負い目ないし恐れを内心に抱え
ていた者が、優生手術を受けさせられた事を社会に公表して損害賠償請求権を行使する事が
長期にわたり事実上、不可能であったのは無理からぬ事。

そのうえで、「憲法17条で保障されている損害賠償請求権の行使を民法によって妨げる事は、慎重であるべきだ」としました。
判決を前に1月14日(土)に行なった集会では、障害者は「孤独だった」と語られました。
私たち福祉の人間や医師から、親が手術を勧められて、「この子の為に」という本人不在の意
思決定がなされました。
私たちが彼らの人生を奪った反省をしなければ本当の意味での障害者
の人権回復はできません。それを承認してきた司法、進めてきた国を含めてこの問題に向き合
うことが大事だと思います。
また、女性は渡邊さんの半分の損害賠償金となりました。
生まれた子どもに障害があり、親戚や親から責められ、その後、二人目を授かった時に中絶
手術をし、不妊手術もした方です。障害に対する差別や偏見が彼女を追い込んでしまったので
す。しかし、成人で、自らの判断で手術を受けたことで、損害賠償は減額されました。
優生保護法の全面解決は、私たちがしっかりと反省した中で、仲間の願いを聞く事からはじ
まると思います。未来の子どもたちの為にも、この問題に向き合い、連帯して取り組み、障害
者権利条約がこの国の文化として位置づけられる事を願っています。