フォーラム「未来を創る」に参加して [2014年07月31日(Thu)]
ふれあいの旅に参加された佐々木英介さまからいただいた手記です。 今回改めて、協会の活動の意義について語ってくださいました。 手記の一部は8月15日発行の会報でも掲載予定です ![]() ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私がこの協会の門を叩いたのが2009年の1月でしたから、既に5年半が経過しました。 WTO加盟以後急速な経済発展を続けていた中国では、その間に2010年発表のGDPではわが国を抜いて世界第二位の経済大国となり、その年に行われた上海万博をバネとし、以降増々巨大化な国へと変化し続けています。 それに伴い、協会が支援の対象としている雲南省の少数民族が居住する地域もここ数年のうちに開発が進み、生活環境も大きく変化してきています。 「西部大開発」の名の下に東南アジア・南アジアへの陸の玄関としてインフラ整備が怒濤のごとく促進され、各村々には電気が通うようになり、牛馬しか通れなかったような道が次々に拡張・舗装され、テレビまで持つようになった家々も増えてきました。 当初、満足に教育も受けられない貧しい少数民族の子供たちの為に小学校を建設しようとして立ち上がり活動を続けてきた当協会も、こういった急激な大発展でそろそろお役ご免となるかと思いきや、現実には、貨幣経済に取り込まれてしまった農民達の、特に働き盛りの年代層の多くが都市部への出稼ぎを余儀なくされ、こういった農家では老人だけでは労働力が足りず、小さな幼子まで田畑にかり出されるようになり小学校へ通えなくなってしまうという悪循環が表面化してきていること、更に昨今の労働賃金の上昇による、海外企業を中心とした中国外への工場移転が加速化し始めたことより、出稼ぎ労働者の失業問題も既に目につくようになり、協会もこういった環境の変化に即したフレキシブルな支援方針を長期的視野と共に考えていかなくてはならなくなっています。 このような社会情勢の中、私たちは今年も6月28日より、卒業生フォーラムと新卒生の卒業式へ参加してきました。 2006年に開始された「25の小さな夢基金」の卒業生も、既に大学を卒業して社会人を排出するまでになり、2011年より催されるようになった卒業生を中心としたフォーラムも4回目になりました。このフォーラムも、当初は協会の活動紹介に加え、民族の壁を越えた友好の種を育てることなどに利用されていたものが、回を重ねるごとに、春蕾班出身の生徒たちだけでなく、通訳のボランティアとして参加してくださっている昆明市内の5大学日本語学科の学生たちも含めて、その友好の種が芽を出し始め、根を広げだし、更に国境の壁を越えた自分たちの将来を真剣に考える場として育ってきたように思えます。 日中関係は政治的にはますます溝が深まるばかりに見えますが、少なくともこのフォーラムに参加してくださった地元大学生の面々に関しては、現状を驚くほど客観的かつ冷静に把握しており、中国に欠けているものを貪欲に日本から学ぼうとする謙虚な志が見て取れ、このイベントを主催した私たちが却って勇気づけられる思いでした。 協会の支援は、「50の小学校プロジェクト」も含め一度行えば終わりというものではありません。支援に加わった人達、特にその支援を募った者には、支援をしたことによって現れる善し悪し様々な変化への責任があります。ですから卒業生によるフォーラムは、その意味でも欠かすことのできない重要なイベントであり、これから先も情勢の変化に即した形で続けられていかなければなりません。 現在、国際協力活動に関わっている日本のNGO団体の数だけでも400以上と言われていますが、調べてみるとその殆どが一方的な支援で終わっています。学校を欲しがっているそうだから建築する、学校に行きたがっている子供たちがいるそうだから教育資金を出して行けるようにする、飢えで多くの子供たちが亡くなっているようだから食糧を支援する、といったような。 支援をすることによって現れる変化に対し、責任を持って対処している団体が殆どない中、団体の実績などという無意味な幻想に捕らわれることなく、弱者の立場に立った本来あるべき未来を見据えた支援活動を続けているこの団体の手伝いを少なからずさせていただき、そして私たちが播いてきた種が少しずつ芽を出しだしたことを確認できるだけで、私はこれまでの努力が無駄ではなかったことを感じています。今後、その芽が育ち、花開き実を結ぶまでこの目で確かめられるかどうかは分かりませんが、それらはきっとこのフォーラムを体験した次の世代が引き継いでくださることでしょう。 協会の支援活動が縁で私たちと結びつき、これから社会へ羽ばたいていこうとしている生徒達のうち、ひとりでも多くが、思いやりの心を引き継いで新たなグローバル社会の礎となってくれるよう願ってやみません。 会員・佐々木英介 |