• もっと見る
«就学率99%? | Main | 映画『さくらんぼ 母ときた道』最新上映情報!»
『NPO法人 日本雲南聯誼協会』に、いいね!やシェアだけで支援金を届けられます。〜 NPO/NGOを誰でも簡単に無料で支援できる!gooddo(グッドゥ) 〜

<< 2024年03月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
最新記事
Comment
Category
月別アーカイブ
Link

EAFの模範 [2008年11月17日(Mon)]
え!そうなんだ、知らなかった…


中国はEFAの模範、だが…


 ユネスコのウェッブサイトでEFA報告書(英文)をオンラインで注文した。支払いはヴィザカードでOK。注文して1週間もしないうちに、ベルギーからの航空便でお目当ての報告書が届いた。いやあ、便利になったものだ。

 題は EFA Global Monitering Report 、2000年にセネガルのダカールで開かれた国際会議で討議しまとめた「2015年までに万人に教育を」行動枠組みの目標がどこまで達成されたか、その進捗状況をつぶさに調査し報告するものだ。




ユネスコ(UNESCO)が出版したEFA報告書(EFA Global Monitering Report 2008)の表紙、Education for All by 2015 … Will we make it? 「2015年までに万人に教育を!我々は目標を達成できるか?」と書かれている。







 ざっと目を通して、どのような章建てがなされているか、どんなテーマが項目として設定されているかをとりあえず見ただけだが、折しもこんな記事が目に止まった。前回当ブログに載せた 『人民網』の記事「義務教育の普及率99%」に関連して紹介しておこう。


 非識字者の減少に粘り強く取り組んできた国の1例として、中国を挙げることができる。実に中国では、1990年に22%だった非識字率は2000年には9%にまで下がった。この成果は、初等教育をほぼ100%近くまで普及させたこと、地域的に対象を絞って識字教育に取り組んだこと、識字教育を修了した後の教育にも注意を払ったことに負うところが大きい。急激な経済成長と一人あたりの所得の増加もこれを助長した。

註) the post-literacy education: 識字後教育=識字を修了した後に継続して行うより質の高い教育

 非識字者をなくそうと1970年代後半から努力してきた中国政府の取組みを主に動機付けしたものは、急速な経済成長を遂げようとする強い欲求だ。識字教育こそ、中国の経済的な競争力を強化すべく、専門技術的な訓練教育を向上させるための基礎と見なされた。

 中国の教育政策(プログラム)の成功は、課題取組みの対象をもっとも識字率の低い地域に絞ったこと、地域社会や非政府団体がこの教育政策(プログラム)に関与したこと、「読み書き算盤」学習を農業的・実業的な技術(スキル)と統合して教材を開発したこと、そしてそれらを技術(テクノロジー)と媒体によって効果的に情報伝達したこと、政策(プログラム)の進捗状況をしっかり監査したこと、これら努力の成果である。


註) skill: スキル=「技術」。ただし、「テクニック」(「技術)と区別し、スポーツのコーチングでは「スキル」は「状況判断」や「判断能力」を含んだ「テクニック+状況判断」を意味する。

 文中には、1990年から2000年までの10年間で識字率を大幅に高めたことの原因の1つとして、「初等教育をほぼ100%近くまで普及させたこと」(英語の原文は the near universalization of primary education となっている)を挙げている。これは、前回このコラムで紹介したウェッブサイト『人民網』の記事の見出し「義務教育の普及率99%」をある程度傍証するものと受け止めてよいだろう。

 中国の躍進的な成長発展の背景には、国民の識字率を高めようと地道に、かつ意欲的に取り組んだ中国政府の努力があったことを知り、中国の急激な発展の何であるか、その実相を新たに認識した次第だ。が、ひょっとすると中国の「後進性」を疑わない、あるいは期待する日本人特有の先入観、あるいは歪んだ優越感が私の中にまだ残っているのではないか、とも思った。

 「義務教育の普及率99%」が、中国共産党のプロパガンダではなく、信憑性の高い報道だとして、これは賞賛に値する素晴らしい成果だ。中国の「後進性」を今でも信じたい私のような日本人にとっては妬ましく、信じたくない「過大」な成果ではある。

 が、その一方で、私達が中国雲南省のような辺境の山間奥地に見る「大勢の子どもたちが学校に行けない、行っても中途で学業を放棄せざるをえない、初等教育を修了できる子どもは3分の1にも満たない」ということも、中国の現実である。『人民網』のウェッブサイトには、ぜひそうした現実をもきちんと有り体に報道し、問題を分析した記事も載せてほしいと思う。

 ところで、「義務教育の普及率99%」を誇る中国に、今なぜ教育支援なのか? そんな疑問を抱く人はけっして少なくないだろう。むしろ、大抵の人はそう考える。

 が、「自己責任だ」とばかり言って突き放すことのできない深刻な「格差社会」(=華々しい成功の裏で、その恩恵をほとんど受けることなく、貧しく厳しい生活環境に取り残された人々がいること)を地球的な視野で捉えたとき、この地球上の「格差社会」が投げかける諸課題の1つとして国際教育支援に取り組む当協会の活動の理念や意義は、たぶん大勢の方々から理解され支持されるものと思う。


註) 格差社会: 特定の国や地域にかぎらず、地球全体が1つの大きな格差社会だ。かつては「インド人当量」(例えば、アメリカ人1人が1日に消費するエネルギーは、インド人何人分に相当するか)という術語でこの格差のレベルを表現した。かつて貧困の象徴だったそのインドも、今や中国と並んで経済成長著しいBRICsの一角である。が、インド国内に貧困がなくなったわけではない。インドは、相変わらずいろいろな分野で国際支援の対象となっている国である。

梅本(JYFAスタッフ)


 



コメントする
コメント
メールありがとうございます。とても大事な質問だと思います。何をもって「識字」とするか、いわゆる世界共通の識字検定なるものがあるわけでもなく、「読み書き算盤」能力と言っても、その調査方法には国や地域でかなりばらつきがあるのではないでしょうか?ほとんどが「自己申告」のような気もしますね。EFA報告書にはその辺のことが書いてあるかどうか、まだ詳しく読んでいませんので、分かりましたら、またこのブログ上に記事を載せたいと思います。また、よろしく。
Posted by: 梅本(JYFAスタッフ)  at 2008年11月25日(Tue) 17:56

こんにちは。お世話になっています。
興味深く読ませていただきました。
気になるのは、「識字」の定義がどうなっているかです。以前私が読んだ本では、氏名・数字の読み書きで調査している国があったと思いました。その辺りはレポートで定義されているのでしょうか?
Posted by: エスペラ  at 2008年11月24日(Mon) 23:32