あの小説の記憶[2012年09月17日(Mon)]
氷室冴子さんの小説に「ハリーの一番美しい夏」という作品があり、その情景を思い起こさずにはいられない一日でした。敬老の日。お年を召した方々の、佇まいや無邪気になった瞳に時の累積を見るような。
もう何年も昔、演劇仲間の友人たちと企画し、この作品の朗読劇を開催したことがあります。朗読劇の練習はとても楽しい。同じ本を手にして、同じ言葉に触れているのに、それぞれが少しずつ違う世界を思い描き、違うキャラクター設定を想定しているのだということに気づかされるから。そして、読む人のそれぞれの個性ある声質を通じて、いくつもの人格や行間に出逢うことができるから。
(私の)解釈が(私の)世界をつくっている。
(私とあなたが)出逢うということは(私とあなたの)世界が出逢うということなのです。
だからそこに、宇宙の衝突のような衝撃や奇跡があっても、しかたがないよね。
夕刻、遠く離れた友人と、メッセージを交わし合いました。短い遣り取りのなかで、深くに眠っていた感情のことについて会話し、こんなことを記しました。
古くから眠っていた感情に出逢ったら、それがどんなものであっても、こういう言葉をかけてあげよう。「やっと会えたね。ありがとう」。