理由もなく、ただ。[2012年08月06日(Mon)]

気づいた時には既にアブラゼミのジーッと鳴く声が一面に響き渡っている夏の朝。朝五時に目覚めてもこれだというのだから、セミは本当になんて早起きなのでしょう。そうしているうちに、ミンミンゼミの声も負けないくらい大きく聞こえてきました。
朝起きて、ベランダのまだ若いゴーヤの苗を触るのが好きです。緑のカーテンを作ろうと思って種から育てたゴーヤちゃん。育ててみて初めて知ったのですが、ゴーヤの苗には独特の甘さと苦み予備軍の交ざったような香りがあっておもしろくなります。「香りソムリエ」なんて言葉があるそうですが、香りというものはどのように表現したらいいのやら、本当に何ともむずがゆい。

とても素敵なのに、人に話しても通じることがほとんどない香りというのがあります。それは、ビニールハウスの中の匂い。特に、トマトやキュウリを育てている空間の匂いが私は大好きで、時々都心のビルの中のような空間でもこの「ビニールハウス」の匂いを感じることがあるので「ねえ、ビニールハウスの匂いがしない?」と傍にいる人に尋ねてみるのですが、「特に何も感じないよ」と分かってもらえないことがほとんどです。私の伝え方がよくないのか、それともそれは、他の人の嗅覚にはひっかからないものなのか・・・。
香りを感じ取る脳は大脳旧皮質。サバイバル(生存欲求)や記憶というものに関係が深いのだといいます。

自然の豊かな地域を訪れると、そこかしこに、風に運ばれたさまざまな香りが漂っています。渓流からの水しぶきをたくさん含んだ空気、トマトやナスの生きている香り、草むらにかさかさと音をたてて飛び回る虫やカエルたちの放つ存在の匂い。深く深く、胸の奥まで吸い込みたくなるやわらかな土の香り・・・。
土地に流れる風はそれらすべてを美しく統合し、台所から漂う香りだとか、働く人の汗の匂いなどを交えて生きているものたちを結びつける。

豊かさというものは、香りととても深い関係があるように思えてなりません。そしてそれは、生きている実感につながる「ゆるぎない確かさ」とも結びついているのでしょう。
「あなたは、懐かしい香りを持っていますか?」
写真は福島県二本松市を訪れた時に写したものです。ただ美しい風景で、あの土地を漂う風を既に懐かしく感じています。
追伸:馬洗川渓流について調べようと思ったら、こんなブログに辿りつきました。「おお、なんて美しいカーブだ!」。本当に、その通り。そしてついでに、同じ方のブログからこんなスペシャルな情報に辿り着いてしまいました。♡のお話です。