てんぷらとなぞとき。[2013年07月14日(Sun)]

「こっちの人にとって、てんぷらってそんなに特別なのかな」
沖縄・浜比嘉島を車で巡っていた時、運転席から、ぽつりとそんな声が聞えた。
「え、どうして?」「だってさ、天ぷらって書いてある看板があちこちにあるから。あんまり、そういうことってないよね?」「確かに。あ、ホントだ。あった、天ぷら」
言われて、意識してみると、本当にあちこちに「天ぷら」の看板やのぼり旗があって、驚く。
「聞いてみようか?」
車を降りて、南国の、そよ風のような昼下がりの店先を尋ねる。「すみません・・・沖縄、初めてで詳しくなくて、教えて欲しいのですが・・・」
聞くと、こちらの人は「天ぷら」をおやつ代わりのように、よく、食べるのらしい。「食べてみる?」「はい!」。その場で揚げてくれるのを待っている間、ひとりの客が訪れた。頼んでおいた、天ぷらを受け取りに。こうしてふらりと、買いにくるものらしい。天ぷらは。
「醤油と七味、それか、ソース」。人によって好みは分かれるけれど、そのどちらかで食べるのが一般的なのだそうだ。「醤油と七味かな、やっぱり」「そのままの味も、好きだな」
ほふほふしながら「おいしい」「おいしい」といって、出来たての熱いのをいただいた。ビールが飲みたくなったけど、運転があるから、お預けにして。

それにしても、このお店、面白かったな。「あ、あの、携帯の・・・」「あ、この携帯の番号ね、使えないの」「いや、そうじゃなくて、間違ってます、帯の字・・・」「・・あら、いやだ!」とか。

おいしさと、しょっぱさと、日焼けのひりひりのまざった笑顔を交わして、お礼をいって、お店を後にした。
「天ぷら」に目をつけるとは、さすがだな。おかしくなるほど念入りに日焼け止めでガードしたたくましい横顔を、目を細めて眺めた。
今年に入って、いろんな「誰か」と旅をしている。いろんな景色や時間を共有しあって、満たされた今も、やはり共有の中にあって。アルバムの1ページみたいに、そういう旅は、懐かしい。