知らない世界のこと[2012年07月18日(Wed)]
あまりに鮮やかな色彩をしているので、思わず写した一枚です。ブラジル、リオ・デ・ジャネイロのB&B(ベッド・アンド・ブレークファースト:朝食付きのホテル)での一枚。
リオではふたつのB&Bを利用しましたが、その両方が女性の方が自分の暮らすマンションの空き部屋を使って経営しているものでした。
夫に先立たれた未亡人の女性。部屋には旅行好きだった旦那さんの思い出の品がいっぱいで、訪れたお客さんからのプレゼントも含め、そこいらじゅうに珍しいものたちがたくさん並べられています。もうひとつのB&Bを経営していたのは、旦那さんと別れて自立することを決めたという女性。彼女には子どもがひとりいて、それ以上は授かりたくなかったのだがブラジルでは避妊が認められていない(*)。そこで旦那さんと意見が合わず、離婚するしかなかったのだといいます。さいわい彼女はB&Bを経営するという選択肢を手にすることができました。セキュリティー万全の快適なマンションで娘と二人で豊かな生活を営んでいるようです。
このふたりの女性は・・・お互いを知っているのかどうか、尋ねることはなかったですが・・・同じリオのコパ・コバーナのまちで毎朝客人と共に朝を迎え、マンゴーやパパイヤのたっぷりはいったフルーツサラダとご自慢のブラジルコーヒーを朝食に出し、言葉も通じないような誰かと(ゲストの多くは海外からの旅行者のようです)と一日いちにちを過ごしているのでしょう。「こんな贅沢な朝食、日本ではたべられないよ」とそれらの果物が日本ではとても高いのだとつげると、ふたりとも(おもわず両方のB&Bでその話をしてしまった)「もっとお食べなさい」と笑って応えてくれました。「たくさん食べなきゃだめよ」「ここ(コパ・コバーナのまち)にもジャパニーズレストランはあるからね」と。
知らない場所にはいつも新鮮さがあり、発見があって楽しくて。だからつい旅を求めてしまいます。けれどもどんな旅人も、そこにずっと暮らす人の持つ「どうしてもはいりこむことができない『暮らしの風景』」をどこかで感じ、自分にもまた還る場所があることを知るのでしょう。
少し前のことを思い出しながら、「可愛らしい朝食のある風景」のことを、人生で一番くらいに大切にしていきたいと考えました。
(*)ブラジルの避妊についてはナショナルジオグラフィック(日本版)2011.9.9付で「少子化とメロドラマ」と題する記事が掲載されていました。