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早川理恵子博士
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パラオ海洋保護区が年金破綻対策?? [2017年09月28日(Thu)]

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クリックすると拡大します。



EEZの80%を商業漁業禁止するパラオ海洋保護区の目玉はなんといってもその資金システムにある。
基金を創設するのだ。
その収入は主に観光客から。
すなわち現在出国時に払う50ドルが100ドルに値上げされる。
しかし、増額する50ドルのうち50%が年金に当てられる。

PALAU NATIONAL MARINE SANCTUARY
http://www.pesforum.org/docs/2017/Presentations/Day_3/D3_04_Sengebau.pdf

これも毎月5、6千人入ってくる中国人観光客がいてこそであろう。
パラオの年金の状態を調べていないが、サイパン同様破綻しているのでないか?
もしこの海洋保護区の基金がうまく動かない場合は、そう! カジノしかしないのです。


小島嶼国の脱植民地化、自決権の行くつく先がカジノ!
どの小島嶼国の年金の問題を抱えている。特に公務員が島嶼国経済では現金収入を得るメインの職業だ。彼らの声は大きい。
思い切って、島嶼国の年金運用支援を日本の財務省がしてあげたらどうでしょう?
カジノで中国マフィアが入ってくるよりいいのでは?
パラオの中国 [2017年09月27日(Wed)]
小島嶼国パラオに中国からの直行便が飛ぶようになって、あっという間に中国の影響下に置かれてしまったのは、確か天皇皇后両陛下が尋ねられる前年からだったと記憶する。

町で、また古い友人たちから聞いた情報である。

<危険な農薬>
(コメントをいただき修正しました。多分パラオも農薬を規制する法律はないと思います。)
少なくとも3人が同じことを言っていた。中国から持ち込まれるコンテナには申告されずに持ち込まれる物品が10はある、と言われているそうだがその一つが農薬。
都市開発、観光開発が進んでいないパラオ北部は農地として中国人が買い占め、有機栽培と称して持ち込んだ農薬で虫が食った形跡もない綺麗な野菜が作られ、市場に並んでいるそうである。

<パラオ中国商工会議所>
国交のない中国。パラオでの活動拠点は? パラオ中国商工会議所というのがあるそうだが、それほど強力ではない、と。

<メディアは?>
太平島嶼国では忠告がメディアを抱え込む様子がよく見られる。
知り合いの新聞社の社主が、トリビオン元大統領やベルズ前副大統領と共にパラオ中国経済協力協会の立ち上げメンバーになっているので、「ああ、もうあなたも報道の自由を失ったね。」と言ったら「とんでもない。社主が中国へいったすぐ後に中国批判の記事を掲載したよ。報道の自由は守る!」と頼もしい回答をえた。

<中国人の土地転がし>
どんな勢いで土地が買われているのか?
中国人は買った土地をどんどん転売するのだそうだ。よってホテルのオーナーがどんどん変わる。中には買っただけで開発せず放っておくケースもある。開発しなければ経済に貢献しない。新しい法律を作る必要がある、と。

<違法売春>
売春自体が違法なのだそうだが、就労で来た中国人が夜売春を行っているという。サイパンと同じだ。麻薬も中国から入ってくる、と。

<違法民泊>(これも法律自体がないのかもしれない)
中国人がマンションを一棟借り上げ、ホテルのように商売している。しかしホテル税を払っていない。

<パラオの99.9%は中国人が嫌い?>
友人からパラオの99.9%は中国人が嫌いだよ。と聞かされた。
じゃあ、0.1%は誰?中国人との商売で潤っているビジネスマンさ。



遊んでいる土地は山ほどある。しかし開発計画も法律もない。多分政策も。
人口12,500人のパラオではとても無理である。
日本のように官僚が数万いて、学者も数百、千人いるという国家とは違う。大臣と事務次官だけ。学者もいない。いるのは米国から流れて来た白人のチンピラ弁護士だけ。嘘ではない。現実だ。
日本が助けなければ、中国が危険な農薬を持ち込むのだ。親日国家はすぐに反日国家になるであろう。
パラオにも後藤新平が、新渡戸稲造が必要だ。
早々に日本パラオ友好協定の締結を検討してほしい。

終戦後のパラオを救ったのは日本の缶詰? [2017年09月27日(Wed)]
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現場でしか得られない情報が多々ある。

パラオの官僚との会話の中で、クジラの話が出てきた。

「米国が終戦後信託統治となったミクロネシアに何もしてこなかった事は知っているよね。」
「はい、ケネディ政権まで放って置かれたんですよね。」
「食べるものもなかったんんだよ。でも日本から鯨の缶詰が送られて来た。貴重な食料だった。」

戦後の日本の飢えを救ったのが、水産業、特に捕鯨、と言うイメージがあった。
パラオまで救っていたとは。。もちろんミクロネシア連邦やマーシャル諸島にも送られていたはずだ。
梨木神社便り〜秋 [2017年09月26日(Tue)]
京都 梨木神社、満開の萩。
4月に訪れた時は10センチ位に刈られていたのが私の背丈を優に超えている。

萩が好きだった新渡戸もこの景色を、満開の萩を見たであろうか?

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ナカムラ元大統領との会談(3)APPU [2017年09月26日(Tue)]
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パラオ訪問。他にも盛りだくさんの情報があり、忘れる前に書いておきたい。
ナカムラ元大統領との2時間近い会談でギリギリ公表できる内容の最後の話題。ナカムラ大統領の後継者となったご子息のアリックさんの事だ。
確かナカムラ元大統領のご兄弟か、親戚の方のお子さんを養子にもらわれた。実の息子さんではないが血が繋がっている。

昨年、史上最年少の26歳で国会議員になった。
「今、日本に行っているよ。APPUの会議だよ。今度紹介するからよろしく頼む。」

APPU、アジア太平洋国会議員連合。先週大分で開催されていた。
ウィキには1965年に岸信介元首相らの提唱により設立、とある。

参加国は日台と太平島嶼国!しかも中国との関係の深いはずのフィジー、トンガ、パプアニューギニアが入っているではないか!

参加国:中華民国(台湾)、日本、ナウル、キリバス、フィジー、パラオ、ツバル、マレーシア、トンガ、パプアニューギニア


加えて謝長廷駐日代表のツイッターによると日台パラオの3者懇談会が開催されたとのこと。(上の写真)

謝長廷 Frank CT Hsieh‏ @FrankctHsieh Sep 18 より
蘇嘉全立法院長(国会議長)をトップとする超党派の立法委員(国会議員)14名が、アジア太平洋国会議員連盟の年次総会が開催される大分県にやって来ました。総会が始まる前に、日本、パラオ、台湾の三者懇談会が行われ、それぞれの友好と海に浮かぶ島国が直面する共通の課題について意見交換しました。

実は私が訪問中、パラオはある問題で揺れていた。
国会議長とPresident of Senatorが中国政府の招待を受けて中国を訪問中だと言う。米国大使も不満を示している、とこれは噂で聞いた。中国は当然大分で開催されているAPPUの会議の事も、ナカムラ元大統領のご子息が参加されている事も承知であろう。

ところで、この時期のこの面子による会議。日本にとっても非常に重要だと思うのだが、日本のメディアは一切報道していない。産経も取り上げていない。どうしてだろう?



「中華民国代表団が「アジア太平洋国会議員連合(APPU)」第47回年次総会・第81回理事会に出席 蘇嘉全・立法院長:中華民国は国際社会への積極的な貢献に尽力」
http://www.roc-taiwan.org/jp_ja/post/50530.html#.WcUgd_QoFCE.facebook

アジアの国会議員、台湾の提案を異議なしで採択 蘇立法院長が感謝
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201709200009.aspx#.WcUh0jzVwls.facebook

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ナカムラ元大統領との会談(2)皇太子殿下の話題 [2017年09月26日(Tue)]
ナカムラ元大統領との会談。
当然、2015年の天皇皇后両陛下のパラオ訪問の詳しいお話をお伺いする事ができた。
心温まる皇室外交、と言うのでしょうか?天皇陛下とナカムラ元大統領の交流はプライベートなことのような気もするので、ここに書いて良いかどうかためらっている。

ナカムラ元大統領から、譲位の事を聞かれた。
「長男か?」
「はい」
「しっかりした方なんだな?」
日本の皇室を日本人以上に気にかけてくださっている様子であった。
トンガ国王の国葬に参列する機会をいただいた時、日本の皇太子殿下を目の前で拝見した事があるのでお伝えした。
「5、6時間続く国葬で、各国の王室、皇室の賓客が並ぶ中、一糸たりとも乱れなかったのは日本の皇太子殿下だけでした。」
「立派だ!」

ナカムラ元大統領に、譲位は来年と間違ってお伝えしてしまったので、メールでお詫びと修正のご報告をした。
その際、英文資料で参照したのが下記のSouth China Morning Post の2016年の記事。
よくまとまっている。
一体どれだけの日本人が皇太子殿下の学位論文が瀬戸内海の海上交通であることを知っているであろうか?

"All you need to know about Japan’s Crown Prince Naruhito"
Thursday, 14 July, 2016,
http://www.scmp.com/news/asia/east-asia/article/1989513/all-you-need-know-about-japans-crown-prince-naruhito より

"Before his graduation in 1982, he wrote a diploma thesis on medieval water transport in the Inland Sea area of western Japan"
"he studied for two years from 1983 at Oxford University’s Merton College, where he lived in a dormitory for the first time. His research theme in Oxford was the history of transportation on the River Thames. He published a paper titled “The Thames as Highway” in 1989 and was awarded an honorary degree of Doctor of Laws by Oxford University in 1991."

皇太子殿下は法学博士だった!知らなかった!
ナカムラ元大統領との会談(1) [2017年09月26日(Tue)]
パラオのクニオ・ナカムラ閣下は、パラオ共和国の初代大統領である。
パラオは1994年10月1日に独立した。

このナカムラ元大統領が私の名前を覚えてくださっているのは1999年に笹川平和財団田淵節也初代会長が三塚博議員とパラオを訪ねる事になり、そのアレンジを全て任された事にある。即ちナカムラ大統領と直接日程や現地プログラムを調整したのだ。
日本パラオ友好議員連盟会長でもあった三塚博議員がパラオに来る、という事は、ナカムラ大統領にとって青天の霹靂だったようである。

2001年に大統領をお辞めになったが今でもパラオで強い影響力を持っている。今回どこからか私の情報を得たようで、ホテルに秘書の方から電話があり昼食をご招待したい、と。この小さな島では隠れることも嘘もつけない。急遽お会いすることとなった。

2時間近い会談は天皇陛下のことから青少年問題と 途切れることはなかった。
人口減少の話しも。
ナカムラ大統領の出身地ペリリューは2千人いたのが今は400人に。
パラオ自体は人口が2万人から今や12500人に。

私は、この4、5月に海洋議連と島嶼議連でパラオの話をさせていただいた事をご報告した。
「ナカムラ大統領からお伺いしたペリリューの子供達全員マリワナをやっている事もお話ししました。」
もしかして怒られるかもしれないと思いながらお伝えしたのに、
「マリワナはしょうがない。それしか収入を得る方法がないからね。怖いのはアイスなんだよ。フィリピンと中国から入ってくる。リエコさん、どうにかしてよ。」

自分にどうにかできるだろうか?
とにかく、この現状を広く知ってもらう事が必要だろう、とここに書いておきたい。

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柔道でパラオを麻薬から守れ! [2017年09月25日(Mon)]
法務省のジェニファーに子供用の柔道着を送って欲しいと頼まれ、娘の古着を送ったのをきっかけに、天皇皇后両陛下が、そして高須院長が、と支援の輪が広がっている。(防衛省や山下泰裕氏の財団も畳や柔道着を寄付されている)
ジェニファー始めパラオの友人たちから来い来いと以前から誘われ、パラオを訪ねた。

中国の問題、麻薬、人口減少の問題と、次から次へとパラオが抱える問題が耳に入ってくる。やはり普通の観光客としてこの国には関われない事を痛感した。

それにしても若いとはいえジェニファーはすごい。
3時から5時までがポリスアカデミーで柔道指導。
続いて夜の7時までが柔道キッズの指導。
来年はまた講道館の夏合宿に参加したいからよろしくね、とのこと。

麻薬問題が深刻らしいのだが、なんと警察官自身が麻薬を使用。そしてこれが子供たちにも蔓延。
そういえばジェニファーが柔道キッズ教室を始めたきっかけの一つが放課後行くところがなくブラブラしている子供達が麻薬や犯罪に巻き込まれるのを守りたい、ということだった。

パラオの麻薬問題。マリファナは問題ないそうです。アイスが問題とのこと。麻薬問題全く知らないので驚きでした。


ポリスアカデミーでの柔道指導
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続いて柔道キッズ
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海洋法とセレブリティ・ディプロマシー  [2017年09月16日(Sat)]
海洋法とセレブリティ・ディプロマシー 

1. 概要
海洋法に関わる議論、特にその国際的な議論に非国家アクターとして、ハリウッドの俳優やビリオネラーなどの「セレブリティ」が登場する。彼らの影響力は大きく、国内のもしくは国際的海洋法を制定する中で無視できる存在ではないように見える。「セレブリティ」は国連、国家、NGOと共に、時には単独で行動する。彼らは単に宣伝に利用されるだけでなく、時には太平洋島嶼国など小国の声を代弁したり、もしくは小国の政策決定に大きな影響を与えているように見える。


2. セレブリティと海洋問題の関連性に関心を持つに至った背景

筆者がセレブリティと海洋問題の関連に強い関心を持った事例を2つあげたい。
まずは、現在国連で議論されているbiodiversity beyond national jurisdiction (国家管轄権外区域の海洋生物多様性、以下BBNJ)の事例を紹介する。
2017年7月にBBNJ第四回準備会合が開催され、カナダのInternational Institute for Sustainable Development (IISD)というNGOが分析をその報告書の中で行なっている。興味深いのはその分析文章は俳優のレオ・デカプリオのコメントで始まり、バージン航空のリチャード・ブランソン会長のコメントで締めくくっている事だ。

“We can’t afford to leave 70% of our oceans to unlimited exploitation. We need a Paris Agreement for the ocean with ambitious and measurable goals.” This was Leonardo DiCaprio’s clarion call, delivered via video-message to the UN Ocean Conference in June 2017. DiCaprio was among the many celebrities, artists, scientists and social entrepreneurs that helped generate genuine hope and momentum for addressing the multiple threats to the oceans at this high-octane event. "(p. 19, IISD)

"Walking off into the warm New York night, many considered the end of PrepCom 4 too early to say if a firm course has been set towards developing―as Virgin Founder Richard Branson put it at the UN Oceans Conference―“a bold treaty with teeth and vision.” (p. 20, IISD)

デカプリオ氏もブランソン氏も今回の会議に直接参加した様子はないが、サイドイベントや会議周辺でのイベントに参加したようである。二人とも探検家として海洋をある程度知っているかもしれないが、BBNJや海洋法の議論に必要な科学、法学の専門的知識持っていないはずである。
ディカプリオ氏のコメントの「70%の海洋が無制限に開発される」というのは公海の事である。現在の法規定でも公海が無制限に開発される、というのは正確ではない。ブランソン氏は強制力(teeth)とビジョンを持った明確な条約が必要だ、と述べる。掛け声としては印象的だがなんの具体性もない。これらコメントを見てもわかるようにその内容は扇動的で感情的であり、非論理的で非科学的である。また彼らの有する財団のスタッフや委員を見たところ、 BBNJの議論に必要な専門家を抱えているようには見えない。それにもかかわらずIISD の分析文章は、NGOの報告書とはいえ、国際的海洋ガバナンスの重要な議論を分析する文章であり、その始まりと終わりに彼らのコメントが引用されるのである。


もう一つ例をあげたい。こちらは筆者がセレブリティの存在を小国の主権の観点から「脅威」にすら感じた事例である。

筆者は2008年から笹川平和財団のミクロネシア海洋安全保障事業を担当し、パラオの海洋保護区制定の動きを現場で観察してきた。パラオの海洋保護区法案とは、全EEZの80%商業漁業を禁止する条件である。パラオ人が経営する遠洋漁業も禁止されることになるため国内のビジネスリーダーを中心とする反対意見が当初非常に大きかった。また域内の水産資源管理組織であるWCPFC, FFA, PNAからも反対の意見があった。流れが変わった理由の一つが、モナコ公国のアルベール2世やデカプリオ、ブランソン氏など世界のセレブリティの支持、そして国連で開催された会議での同法案への支持である。国連の会議というは、国連で行われたというだけの会議で、国連自体の会議ではない。主催者はビリオネラーの資金を背景に設立された国際NGOで、その運営者は会計士である。即ち海洋問題の専門家ではない。
このような世界のセレブリティが同法案を支持したことがパラオ国内で周知、報道され、特にパラオの若者が強く支持するようになった。さらにこの海洋保護区は本来一番重要な保護区域の監視やモニタリング、科学的調査に関してはほとんど議論されず、中心的議論は新たに設置される信託基金であった。この基金はパラオ人の年金不足分への穴埋めなど海洋保護区とは関係のない項目も含まれている。さらに同法案が国連海洋法条約にどのように適応するか、パラオ国内に国際法、海洋法の専門家がいないため一切議論された形跡はない。このメガ海洋保護区は海洋法条約62条の観点から疑義がある。
パラオと自由連合協定を締結する米国政府は本来このような動きにアドバイスを与える立場にあるはずだが、法的、科学的アドバイスを与えた形跡はない。逆にメガ海洋保護区制定のキャンペーンを世界展開する環境NGO PEWトラストと共に、国務省主催で”Our Ocean”という会議を米国で開催。俳優のデカプリを招き、オバマ大統領、ケリー国務長官が参加するショーのような会議で、海洋問題の法的、科学的議論はほぼ扱われなかった。この会議にはパラオのレメンゲサウ大統領も招かれスピーチを行った。そこにはただ一人として海洋問題の科学的議論や法的議論をする専門家は、米国のNOAAの研究者さえも招かれなかったと理解している。

この他にセレブリティが関わった海洋問題としては、古いところで海洋探検家(科学者ではない)のクストー、ハワイの伝統的航海者ナイノア・トンプソン、そしてシーシェパードを支持、支援する多くのハリウッド俳優たちなど事例としては事欠かないように見える。

3.セレブリティ・ディプロマシーの先行研究
デカプリオなどハリウッド俳優や、ビル・ゲイツなどビリオネラーが国連や国際的な開発、環境保護に参加、関与しているケースの研究が数は限られているようだが過去10年近く、積み重ねられているようである。2つの論文を紹介したい。

“Celebrity Diplomacy”というタイトルの本を2007年にカナダのウォタールー大学、政治社会学専門のアンドリュー・F・クーパー教授が出版している。セレブリティを外交と結びつけた論文として画期的だったようだ。
同書はセレブリティと国連の関係をフォローしている。具体的には初期の国連の活動に関与したオードリー・ヘップバーンやダニー・ケイというセレブリティが単なる慈善家として宣伝的役割を担ったのに対し、徐々にセレブリティ自身が意見を持ち、自らの意思で行動して行く、即ち外交の担い手としての活動する姿がポジティブな面とネガティブな面、両方から議論されている。
彼らが共に活動する国連や、米国政治家、そして大衆への影響についても多様な角度から分析を試みている。例えばオックスファムというNGOはセレブリティの力を借りて普段であれば大衆が見向きもしない支援事業に多くの注目を得て、寄付金を得る事にも成功した。しかし、一旦セレブリティの「スターパワー」が失われれば、その活動も組織自体にもマイナスの影響が出て来る。(7−8頁、Cooper)
またセレブリティが「グローバル」な課題に取り組む際は、米英系のアングロ系西洋人のセレブリティ・ディプロマシーだけが注目を浴び、同じセレブリティでも非アングロ系のセレブリティ・ディプロマシーは無視される傾向があることも指摘している。(8−9頁、Cooper)さらに外交や国際政治を知らない一介の俳優や歌手が「外交」という極めて専門的な分野に関与する事に関しても批判的な議論を展開しいている。他方で、世界が関心を示さない国際紛争などにジョージ・クルーニーが声明を出すことで国際政治が変わってしまうことも事実として指摘し、セレブリティ・ディプロマシーの可能性を完全に否定はしていない。

もう一つの論文は、ロンドンメトロポリタン大学のマーク・ウィーラー教授2011年に書いた”Celebrity Diplomacy: United Nation’s Goodwill Ambassadors and Messengers of Peace”。この論文は2010年に創刊されたCelebrity Studiesという学術誌に掲載されている。
ウィーラー教授は前述のクーパー教授のセレブリティ・ディプロマシーの概念とジョン・ストリートのセレブリティ・パフォーマンスという概念を下敷きに、国連のGoodwill Ambassadors と Messengers of Peaceを中心にセレブリティ外交官の役割などを議論。
1997年から2007年のアナン事務総長の時代、400名以上の国連のGoodwill Ambassadors と Messengers of Peaceが指名されたという。背景には国連改革を目的に国家主体からパブリックを主体するためにセレブリティを利用したことが分析されている。国連に利用されるセレブリティも様々で、チベット支援をするリチャード・ギアなどは逆に中国の立場を守るUNHCRに対して非難声明を出し、国連とセレブリティが対立するケースがある事も指摘している。ウィーラーはこのようなセレブリティの活用には複雑な外交問題を単純化しすぎる傾向や感情的な反応を利用する事の危険性を指摘している。まさに、先に事例であげた法的にも科学的も複雑な海洋問題が扇動的かつ感情的、非論理的かつ非科学的に取り上げられていることへの筆者の懸念と一致する。他方でウィーラーは信頼性のあるセレブリティ・ディプロマシーが国際的コミュニティで展開された事も指摘している。

この他に、村田晃嗣教授が現在執筆されているレーガンに関する論文などは、米国特有のハリウッドと政治の関係を分析するのに有効であろう。米国で海洋問題が大きく動いたのが2009年でオバマ政権である。海洋政策策定とともに2016年には太平洋にメガ海洋保護区も制定した。これら民主党とハリウッドの関係も興味深い。環境保護を目的としたセレブリティの財団や環境NGOが環境保護という美名に隠れた租税回避を行なっていることを研究する論文も存在する。(浅妻、2011)

4. 今後の課題
国連での海洋問題の議論に非国家アクターがどのように関わっているかという視点で、セレブリティだけでなく、国際環境NGOの動きも加えながら議論を展開する可能性があるかもしれない。BBNJの協議過程自体が、4回の準備会合設定し「アドホック・オープンエンド非公式作業」という形式でNGOも招かれ行われて来た。ここに参加したNGOの動きを分析することは可能であろう。
太平洋島嶼国や小国でよく観察されるのが、海洋問題の知識や経験の限られた島嶼国政府の中に環境NGOが入り込み、政府の政策に大きな影響を与えるケースである。例えばパラオの海洋保護区は米国の環境NGOピュートラストが大きく関与している。この現象に関する批判的な声は至るところで聞くものの、研究対象として書かれたものはまだ読んでいない。NGOと海洋ガバナンス、もしくは環境ガバナンスの研究はかなりあるようなので今後これらの資料を当たってみる可能性もあると考えている。


参考資料
Cooper, A.F., 2007. Celebrity diplomacy and the G8: Bono and Bob as legitimate international actors. Working Paper no. 29. Waterloo, Ontario, Canada: Centre for International Governance Innovation.

Wheeler, Mark, 2011. 'Celebrity diplomacy: United Nations' Goodwill Ambassadors and Messengers of Peace', Celebrity Studies, 2: 1, 6 − 18

IISD (International Institute for Sustainable Development), Bulletin A Reporting Service for Environment and Development Negotiations, Vol. 25 No. 141 Monday, 24 July 2017

浅妻章如「ナショナル・トラストその他の環境保全団体等への寄付に係る優遇税制の設計」 立教法学81号234-213(23-44)頁(2011.3)
http://www.rikkyo.ac.jp/law/output/rituhou/81/03.pdf


これから読みたい資料

LM Campbell et al. Global Oceans Governance: New and Emerging Issues,Review in Advance first posted online on July 6, 2016.
http://sites.nicholas.duke.edu/xavierbasurto/files/2011/11/oceans-governance.pdf

Rémi Parmentier, Role and Impact of International NGOs in Global Ocean Governance, Ocean Yearbook Online, Volume 26, Issue 1, 2012.

Lee. A. Kimball, "Ocean Governance: The. Role of NGOs". in Davor Vidas, "Order for the Oceans at the Turn of the Century" 1999.

クック諸島の政治的地位再考の動き [2017年09月15日(Fri)]
今年になってクック諸島の政治的地位に関する議論が多少話題になったようだ。
クック諸島はニュージーランドと1964年から自由連合協定を締結している。

Sovereignty, Free Association With New Zealand - Or Independence?
Submitted by PIR Editor on Mon, 04/17/2017 - 13:23

RETHINKING THE COOK ISLANDS’ FREE ASSOCIATION AGREEMENT WITH NZ: PART 1
APRIL 4, 2017、Evelyn Marsters

上記2つの記事を読むと、発端は2015年にクック諸島首相がニュージーランドからの完全な独立を言い出したことにあるようだ。


Cook Islands push for independence from NZ
May 31 2015
http://www.stuff.co.nz/world/south-pacific/68986939/Cook-Islands-push-for-independence-from-NZ

人口の半分以上がニュージーランドに住むクック諸島の人々。ニュージーランド市民として数々の恩恵がある。上記の記事は、現在の自由連合の状態について何の調査分析もせず、また肝心のクック諸島の人々の意見も聞かず、このような話が出てきたことを批判している。と同時に1960年の国連決議1541で規定された、統合か、独立か、自由連合か、という選択の中の「自由連合」とは何かが議論されている。


プナ首相の気持ちを想像すると、同じ自由連合のミクロネシア3国は独立国として国連で演説。海洋問題が国連で活発に取り上げられる昨今、レメンゲサウ大統領などが世界的に注目されるなかでクック諸島の存在がほぼ見えないことへの不満があったのではないだろうか? 全くの想像です。
クック諸島は約200万㎢の広大なEEZを保有する。
加えて、中国や韓国と直接交渉する中で独立国としての誘惑が自分の内からも、外からもあったのではないだろうか? ここも想像です。

プナ首相の独立構想は引っ込めたようである。

50年経って、完全な独立より自由連合の継続を希望するクック諸島の人々の事を、松井教授や山形教授はどのように分析するであろう?

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