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ワイン樽の露天風呂 [2013年03月24日(Sun)]
写真 1.jpg


黒川清先生との初面談。
「あなた、毎日何しているの?」
不意をつく質問に一瞬詰まってしまった。
脳裏を過ったのは「ワイン樽の露天風呂」♪

ワーママで、学ママ、そしてピアニストママの自分は、一日が、一週間が、そして一年があっと言う間に過ぎて行く。
通常は朝大学で勉強し、午後働き、夜ピアノを弾く。
隙間を縫って、料理、洗濯、裁縫、娘の学校行事の手伝い。
加えて、太平洋の出張があり、音楽会があり、学会がある。
その日その日が矢のように過ぎて行く。

しかし、この数ヶ月、学問より、仕事より、育児より、家事より、心血を注いでいるのが「ワイン樽の露天風呂」なのだ。


<30万円のスパより3千円のワイン樽>
昨年からお預かりしている海の見える家に何か足りない、と思ったのが露天風呂である。
調べると色々あったが、安くて数十万円。湯沸かし器付きの移動タイプは百万円もする。
諦めかけていた時、園芸センターで3千円のワイン樽を見つけた。どうにか一人は入れそうである。元々は植木用だがこれを購入した。
3千円で海を見ながらの露天風呂、である。こんな極楽はない。


<問題山積みの「ワイン樽露天風呂」>
ところが、安かろう、悪かろうではないが、色々問題が出て来た。
ワイン樽は木でできている。当たり前だけど。
水が入っていないと木が縮んで隙間ででき、水が漏れだすのだ。
それで、500円程度の安いシャワーカーテンを敷く事にした。

今度はお湯。バケツで10杯くらい、キッチンから運ぶ必要があり、これが結構重労働。
それに冬はすぐお湯が冷えるので、ちょろちょろと熱湯が出るようにしたい。
詳細は省くが、5、6千円無駄にして、どうにかキッチンの蛇口からホースでお湯が送れるようになった。
大進化である。

写真 4.jpg




<風呂文化>
この海の見える「ワイン樽の露天風呂」を日本人に話すと、ジェラシー燃えたぎった反応を得る。
ところが、この「ワイン樽の露天風呂」を西洋人に見せると一様に哀れな、軽蔑に近い反応が返って来る。
一度大学の指導教官に見せたところ、翌週自宅に招かれた。
敷地内にある屋内プールに案内され、その隣にあるスパを指差し
「リエコ、いつでも入っていいからね。」と同情たっぷりに言われたのである。
(お風呂は外じゃあなきゃ。潮風に吹かれ、夕日を眺め、星を見上げて入なきゃ意味ないんだよね。)と心の中で思いながら、感謝の意は示しておいた。


<摩訶不思議な事>
この「ワイン樽の露天風呂」、娘も気に入っている。
しかし不思議な現象が起こっている。
私が入る時は樽に半分くらいのお湯で、肩までつかる量になるのだが、娘の場合、8割ほどお湯を入れないと、入った時に一杯にならないのだ。
こんな不思議な事があるでしょうか?アルキメデスでも分かるめえ。


黒川先生には「毎日ワイン樽を利用した露天風呂の改良に心血を注いでいます。」と正直に言えなかった。「毎日、学問と仕事と育児に励んでおります。」とも、良心が邪魔して言えなかった。
初対面だったし。
有名無実の海洋保護地区 [2013年03月22日(Fri)]
パラオに関するブログ、なかなか筆が置けません。

一昨年、クリントン長官が発表した「太平洋の世紀」。巷ではほとんど報じられなくなりましたが、太平洋で仕事をしていると米国のプレゼンスをジンワリ、ジックリ感じます。

レメンゲサウ大統領が今月発表した全EEZの商業漁業禁止地区制定計画、アメリカが大きく反応しています。もしかしたら背景にアメリカがいたのかもしれません。

当方はパラオ海域が重要であるとこの事業が始まった時から主張していましたが、今回のパラオ出張で、あのキーティング司令官も同様な事を強調していたと知り、やっぱり一度会って協議しなきゃならん、と勝手な妄想を抱きました。


中国が言う第二列島線。島を言える人はいますか?

グアムーヤップーパラオ  です。
パラオ、ヤップ海域はパプアニューギニア、インドネシア、フィリピンに接しテロも含め非常に警備が必要とされているのに、手薄なところです。

このパラオが全EEZを商業漁業禁止地区に制定する、というこは漁業資源保護以上の意味があると官考えています。米国沿岸警備隊も、海軍もNOAAもハワイ大学も大きく反応しました。私は普段こういう方達と情報交換をしています。
それで海洋監視に関して協議したいので会いたい、と連絡をいただき来週お会いする事になりました。「テクニカルな事、私わかりませんが」と言ったのですが、説明するから時間を調整しろ、と強気です。

PACOMが強化されつつあるハワイは、ビリオン単位の予算が動いているようです。大学、ビジネス、政府とあらゆるステークホルダーが一丸となって太平洋の海洋監視技術の可能性を検討しているらしい。


NOAAの知人からはこれを読んでおけ、と送っていただいた雑誌サイエンスの記事が非常に面白かったので簡単にまとめます。たった2頁なので英語が苦でない方はどうぞ。
Giant Marine Reserves Pose Vast Challenges
Science MArch 5, 2013
Science-2013-Pala-640-1-1 のコピー .pdf

レメンゲサウ大統領が発表した「メガ商業漁業禁止地区」。なんと元祖はアメリカでした〜。
2006年にブッシュ大統領がハワイの362,000km2を制定。
続いて2010年イギリスがインド洋のチャゴス島に640,000km2を。
そして昨年2012年オーストラリアが989,842km2のコーラルシーをメガ海洋保護区を制定しました。
これが元祖三大メガ海洋保護区で且つ商業漁業禁止区域にもなっている。

その後、キリバスやクック諸島、ニューカレドニアがメガ海洋保護区を続いて発表。ミクロネシア諸国もシャークサンクチャリーを表明しましたね。
しかし、最初の米英豪の三大メガ海洋保護地区をのぞいて、全て有名無実の海洋保護区なんだそうで。( ̄Д ̄;)
キリバスの大統領は408,000km2のフェニックス海洋保護区を発表し世界中から表彰されましたが、禁漁区はたった3%。表彰した団体は今頃になって驚いているそうです。(後から返せとは言えないものねエ)
トン大統領はお会いした事があります。何か事情があるのだと思いますが、当方もかなり驚きました。

だからパラオの全EEZ商業漁業禁止地区制定は正真正銘の世界初で、しかもその監視体制作りは想像を超えるチャレンジでもあるわけです。まさに日米豪の協力が必要とされている!


ブリティッシュコロンビア大学の研究者によれば、メガ海洋保護区の海洋監視は、小さな保護地区より100倍の経済効果があるそうです。実際に船や飛行機で監視するのではなく、通信を利用したより効果的な監視システムが開発されている、とのこと。

きっとこれを来週NOAAの方から聞かされるんでしょう。米国国家機密に触れない程度でこのブログでもご紹介したいと思います。(・ω・o)


Big Bang & Birth of the Earth [2013年03月21日(Thu)]
海水ができるのはいつ頃かしら。3分15秒あたり?
私たちはみんなスターダストだった。
夜空を見上げるのは、宇宙の塵だった時の記憶がDNAに残っているから?

属国日本ーその2 [2013年03月21日(Thu)]
こんなブログをちゃんと読んでくださっている方が結構いる事がわかった。
それで以前書いた「属国日本」の続きをメモ程度だが書いておきたい。

https://blog.canpan.info/yashinomi/archive/654

「私は自主独立路線より、属国に位置しながら最大の利益を得る方法を模索する方がよいように考えている。」と以前書いた。
これとばっちり一致する論説を見つけた。2004年2月の中央公論に発表されたビル・エモット著「米国に依存せよ、だがもっと独り立ちせよ」<日本に贈る英国の教訓>である。
この雑誌、渡辺昭夫先生の論説があったので購入し、本棚にあったものである。本棚の整理をしていたら見つけた。

英文はこちらで見れる。
bill_emmot_photo_small.jpg
Japan´s English lessons  Foreign Policy - January 2004
http://www.billemmott.com/article.php?id=34



自立か従属か、右か左か、黒か白か、好きか嫌いか。世の中2項対立で捉えてはいけないと思うが、意外とこういう視点が主流のようである。50、60のおじさん達が高校生か中学生に見えてくる。こういう枠組みをはめ込んで世の中を見るとそこで思考が停止できるので楽なのだと思う。今からでも遅くないから老荘思想を遊びましょう。

小国の島国に「独立せよ、自立せよ」と言う人を見ると少しは小国の歴史を勉強せい、と音大生だけど言いたくなる。

「世の中に金銭的に100%依存していても、絶対的権力を維持しているグループがいます。あなたのそばにいる方です。」というと、多くのおじさん達はニヤニヤとする。
David Gallo on life in the deep oceans [2013年03月20日(Wed)]
海水がなぜ塩辛いのか答えられない母親の事を聞きつけて、TEDさんが連絡をくれた。
海洋の世界は音楽と同じだって。ボルゲーゼさんが聞いたら喜びそう。

David Gallo on life in the deep oceans
ニュージーランドの海の週間 [2013年03月19日(Tue)]
ニュージーランドでは3月2−10日が海の週間だった。
娘から「お母さん、なぜ海の水は塩辛いの?」と突然聞かれ「スミマセン。わかりません。」と素直に謝った。親には迷惑な海の週間!

ニュージーランドと日本では教育の制度も違うし、環境も文化も違うので比べてはいけないが、日本の「海の日」。今ひとつ盛り上がりに欠けるらしい。
その日の前後を入れて週間にしたらどうでしょう?
海の日は休暇になっているので、学校行事が組ずらいかもしれない。

詳細はこちらをご参照下さい。
http://www.seaweek.org.nz/

昨年は学校からの依頼で、海苔巻きを300個くらい作らされた。お寿司=海、らしい。
中味はキュウリとニンジンだったので、辛うじて海苔が海と関係ある。
こういう発想は日本人には無理かも?
2個1ドル位で売って、ドルフィン財団に寄付したとのこと。


今年は全校生徒連れてビーチへ。ゴミ拾いをしたり、大学から海洋学者を呼んで青空教室をやったり。
「なんで亀はビニール袋を食べるか知ってる?亀の好物のクラゲと勘違いして食べてしまうのよ。大学の研究者は亀のお腹からビニールを取り出してあげるの。そうしないと亀は死んでしまうの。」
目を輝かせて母に(英語で)講義する娘は頼もしく見えた。

この10週間は海の事を学んでいるようです。

seaweek.png


「おかあさん、これなんだわかる?」
「プラゴミでしょ?」
「サメの卵だよ〜。私も触ったんだ〜。」
左下の写真。てっきりゴミだと思っていた。
サメって卵だったの?ほ乳類だと思ってたー!
お母さんは何も知りません。
レメンゲサウ大統領パラオ全EEZ商業漁業禁止計画を発表 [2013年03月19日(Tue)]
3月11日、パラオのレメンゲサウ大統領が、全EEZを商業漁業禁止地区にする計画を発表。
モナコ大公、大公妃がパラオ公式訪問中の発表で同国の協力を求めた。
モナコ大公アルベール2世は環境保護活動でも有名。パラオにはヨットで来訪。
すごいヨット。( ̄▽ ̄;)!!
日本の皇室にも早くミクロネシアを訪問していただきたい。

Palau President proposes 'no commercial fishing zone'


Palau welcomes Prince and Princess of Monaco


フランス語でわかりませんが、こっちの画像のほうが奇麗。ヘレン環礁の説明も受けている様子。
パラオのLaw Enforcement Academy [2013年03月18日(Mon)]
パラオに関するブログ。ここで一旦終了します。
麻薬問題、自由連合、環境問題等々広く取り上げ、多くのコメントをいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
しかし、このブログに書けるのは本来業務のほんの一部。
太平洋の未来を編纂するようなアドレナリン全開の業務内容が書けないのは残念です。(*⌒∇⌒*)



ー パラオのLaw Enforcement Academy ー

今回レメンゲサウ大統領との面談でも多くの情報が飛び交った。
当方のパラオ訪問の前に行われた大統領の来日。安倍首相との会談はレメンゲサウ大統領の安全保障への意識を大きく変え、日本財団と笹川平和財団が法執行を前面に出して進めている海洋安全保障事業の重要性を大きく認識されたようだ。ここにはまだ書けない大きな展開もあった。


さて、今ほどパラオの法治国家としての能力が大きく問われている時期はないかもしれない。
人身売買、密輸、違法操業等。広大な自由の海、太平洋は無法地帯にも見える。
皮肉なことに、冷戦下米ソの緊張は太平洋の海に一定の秩序を与えていた。
90年代始めから新たな脅威が太平洋に押し寄せ、また昨今の拡大する新興国家は、人口2万人の小国パラオに直接的に脅威を与えている。

そのパラオの法執行能力。
パラオ国家警察は毎日の配置人員が5、6名。その内病欠等が1、2名。事務所待機が1、2名。現場を見回るのは1、2名、なのだそうである。(法務省職員からの情報だが裏を取っていない。)
海洋警備(Maritime Law Enforcement)も同じような人員配置。当方のパラオ滞在中、若手職員を1名増やしたばかりであった。

法執行を担う人材育成がレメンゲサウ新政権の、新法務大臣の課題の一つのようである。
パラオにはポリスアカデミーというのがあった。校舎のあるアカデミーではなく、年間数ヶ月開催されるプログラムである。場所は法務省前のパラオコミュニティカレッジの空き部屋を借りて行われている。
日本からの支援も既にある。昨年ロンドンオリンピックに選手を出した柔道活動だ。青年海外協力隊に応募した高野重好さんが2003年3月から2年半派遣され、その土台を作ったのだ。
当方は個人的にパラオの柔道を支援しており、昨年末高野さんからご連絡をいただき京都でお会いする機会があった。

高野さんによると、国家警察だけあったポリスアカデミーは、今では州レベル、また将来警官を希望している若者の参加も含めLaw Enforcement Academyとして運営されているとのこと。今は14週間のプログラムが組まれ、約35名の参加者がある。

このLaw Enforcement Academy。海外からの支援提案もある。
オーストラリアは伝統的に王立海軍が太平洋島嶼国の安全保障を担ってきたが、脅威は伝統的安全保障だけではなく、違法操業や人身売買といった法執行の分野に広がっている。
これらの脅威を扱うのは海軍ではなく警察、との観点よりオーストラリア連邦警察は太平洋島嶼国の治安維持活動を積極的に展開している。
ミクロネシア連邦ポナペにはオーストラリア連邦警察が4、5年前Trans National Crime Unitを設置。

この豪州連邦警察がパラオのLaw Enforcement Academyへの支援を過去4年提案してきたそうだが、前政権は関心を示さなかったという。
またUSCGはミクロネシア地域の海洋警備訓練をパラオを中心に展開している模様。しかし、これも場所の確保が難しく、Law Enforcement Academyの強化が望まれている。


レメンゲサウ大統領との会談は前回同様大統領の私邸で行われた。
帰りに子供用の柔道着が干してあるのを見つけた。今までに10着程の柔道着をポケットマネーで寄付している。「これ、私が送った柔道着かも。」と思いつつ、大統領がお孫さんを通して、柔道を、日本を理解していただいている事に感謝した。

移動する環礁 ー ヘレン環礁の記憶 [2013年03月15日(Fri)]
パラオの話が続きます。
自由連合の話も、law enforcementもそしてこの環礁の話も、奥が深く。
まだざーっと調べただけで、とっかかりの情報、議論です。


200px-Helen_Reef.png200px-Helen_Reef-NASA.png


<移動する環礁>

パラオの離島の中で、毎年3−4メートル南東に徐々に移動している環礁があります。70年前、日本軍が設置したコンクリートの土台が、今は150メートル先の沖に移動しており、その環礁の移動を確認する事ができます。
高潮の時は、ほぼ全体が海水に覆われ、島と呼べる陸地でも10センチ程度。

その名は、ヘレン環礁。
以前、島国の離島問題で取り上げたパラオのソンソロール州とハトホベイ州(通称トビ)。パラオの中心地コロールから300、500キロ離れ,インドネシアやパプアニューギニアの方が近い島国の離島。
ヘレン環礁はそのトビ州に属する環礁です。

数ヶ月に1回あった定期船(定期?)も今は止まり、人口は5人もいない状態。パラオ政府はヨットや観光船に頼んで、物資を運んでもらっている状態だと言います。


しかし、このヘレン環礁に世界の注目が集まっているのです。世界中のお金持ち(特に個人の寄付文化が成熟している米国の財団)や、第一線の海洋学者、ジャーナリストが、惜しみない支援をしているのです。


<ヘレン環礁を護れ>

ヘレン環礁はその海洋生物の多様性では太平洋一、と言われるほど有名な島。パラオと言えば昨年、世界遺産に指定されたロックアイランドとこのヘレン環礁。

無人のヘレン環礁は、70キロ離れているトビ州の人たちの自然の食料貯蔵庫のようでした。亀は毎日のように産卵に上陸し、魚も鳥も豊富。
環礁の長さが25km、幅が10km。礁湖は103km2。浅い珊瑚礁をあわせると大体163km2の面積。(ウィキから)

しかし、近隣のフィリピン、インドネシア、台湾等からの密漁が後を絶たず。しかも珊瑚礁を引きはがして持って行ってしまうような行為もあったそうで、90年代始め、トビ州はヘレン環礁に常駐のマリンレンジャー3名を配置しました。

200px-Desertisland.jpg


ヘレン環礁を襲ったのは密漁だけでなく、温暖化。1998年の異常な海洋温度の上昇で、その90%の珊瑚が死滅。地元の漁師は、突然魚の数が減り、その緊急性はトビ州の知事を動かします。

2000年、バリで開催された第9回International Coral Reef Symposiumでトビ州の知事がヘレン環礁の救済を訴え、Global Coral Reef Allianceが動きます。Global Coral Reef Allianceは世界のダイバーや海洋生物学者の集まりのようです。
彼らのレポートによると、ソーラパネルをヘレン環礁に持ち込んで、檻のように作ったワイヤーにつなげ電気を通すと、通常よりサンゴの育成が4倍ほど早くなるそうです。
レポートには多くの写真もリンクしてあります。

"Hotsarihie (Helen Reef) Project Report "
September 30 2004
Thomas J. Goreau, Wolf Hilbertz, Sabino Sackarias, Huan Hosei,
and the Hatohobei State Marine Park Rangers



<ヘレン環礁の記憶>

南洋庁のあったパラオと日本は切っても切れない関係。
こんな離島にまで日本軍が設置したコンクリート台が150メーター先の沖に残されていたり、Helen Reefに持ち込まれたソーラーパネルを運搬した船"Atoll Way"は日本の中古船だったり。

01540.JPG01576.JPG

Atoll Way



2004年に実施された"Hotsarihie (Helen Reef) Project"にイギリスのジャーナリスト、Caspar Henderson氏が参加し、"A Pacific Odyssey"というレポートを書いています。わかりやすく、興味深い内容です。

ドイツ時代(20世紀初頭)には5,000人いたトビの人口は今300人に減っています。しかもそのほとんどは現在コロール州に住んでいる。なぜこんなに人口が減ってしまったのか。オーストラリアへの強制的な労働連行もあったし、第二次世界大戦の被害もあった。しかし一番の原因はヨーロッパ人が持ち込んだ病気、だそうです。

ところで、島の人は日本人がくれば、アメリカやドイツの非道を訴え、アメリカ人がくれば日本人の非道を訴えます。だから「日本時代はよかった。」とミクロネシアに人々に言われても簡単に信用してはいけません。
ヘレン環礁にコンクリート台まで設置して、建物を建造した日本軍。いったどの程度の軍隊がヘレン環礁やトビ島に配置されていたのでしょうか?
Caspar Henderson氏は、島の老人から聞いた恐ろしい話を紹介しています。

"米軍の攻撃を前に、日本軍は集会場に島の人を集め、手榴弾を投下し殺してしまった。これを知ったアメリカ人が怒って日本に核爆弾を投下したのだ。"

本当の話かどうか確認していません。確かめようもない話なのかもしれません。
重要なことは、今でも戦争の記憶が150メーター先の沖に残されたコンクリート台と共にトビ州に残っており、これがイギリスの若いジャーナリストに伝えられ、記録され、パブリックに伝えられ、新たな記憶となっていく現実、です。

(ここで筆を置いてはいけない。)
日本の記憶が残るトビ州やヘレン環礁に日本は、日本人の私やあなたは何をすればいいのか?
この設問は無意味でしょうか?
同じ様な記憶を持つ絶海の孤島は太平洋にまだまだあるようです。


参考
Helen Reefは現地の言葉で"Hotsarihie" 。イギリス船HELENが1794年にこの環礁を確認した際にHelen Reefと名付けた。
British ship HELEN, Capt George Seton, sighted Tobi on April 5. Saw lights on it -- sign of habitation. Also saw a reef which they named "Helen's Reef." [Stevens 1808: 600, 620]
太平洋に広がる麻薬 [2013年03月14日(Thu)]
<日本人が開発したメタンフェタミン>

メタンフェタミン、通称アイス。
ウィキペディアには
「1893年(明治26年)、日本の薬学者・長井長義によりエフェドリンから合成されて生まれた。1919年(大正8年)、緒方章がその結晶化に成功した。」
とある。
続いて 長くなるが、摘みながら引用する。
「ヒロポンとは、大日本住友製薬(旧:大日本製薬)によるメタンフェタミンの商品名であり、(途中略)日本では太平洋戦争以前より製造されており、「除倦覺醒劑」として販売されていた。その名の通り、疲労倦怠感を除き眠気を飛ばすという目的で、軍・民で使用されていた。(途中略)
軍では長距離飛行を行う航空兵などに支給されている。ヒロポンの注射薬は「暗視ホルモン」と呼ばれ、B29の迎撃にあたる夜間戦闘機隊員に投与された。(途中略)
ヒロポンは「決戦兵器」のひとつとして量産され終戦時に大量に備蓄されていた。
終戦により軍の備蓄品が一気に市場へ流出すると、酒や煙草といった嗜好品の欠乏も相まって人々が精神を昂揚させる手軽な薬品として蔓延した。 (途中略)」
引用終わり。

戦争はミシンや、インターネット等便利なものも開発するが、麻薬のような恐ろしいものも生み出す。始めて知った。


<太平洋 - 自由の海は麻薬密輸の楽園?>

グアム、ハワイでこのアイスが増えている、という。特にハワイがひどい。
グアムの殺人事件を起こしたデソト容疑者も各種の麻薬を使用していたことがニュース等で報じられている。
太平洋の海洋安全保障の中で、違法操業、人身売買、密輸 ー 特に大きな問題となっているのが麻薬の密輸入である。
南米、アジアから船に積み込まれた麻薬は、太平洋の小さな島に捨てられる。もしくは島の沖に捨てられる。犯罪組織の海洋監視システムはすごいらしい。どこに流されたかちゃんとわかるのだそうだ。
これを別の船が拾って、人知れず陸揚げする。イヤ、知っていても現地の警察は厄介な事件になるのがわかっているので無視、もしくは煙草一箱で丸め込まれるのだそうだ。
こうして入手された麻薬は、日本、アメリカ、オーストラリア等々先進国にも売られて行くが、グアム、ハワイでも蔓延している、という。

詳しく知りたい方は下記の3つのレポートをご参照ください。
BORDER SECURITY TRANSNATIONAL CRIME IN MICRONESIA (PART 1) by Michael Yui: Singapore
http://www.asiapacificdefencereporter.com/articles/159/Border-security-Transnational-Crime-in-Micronesia-Part-1

MICRONESIA AND ITS LAW ENFORCEMENT PROBLEMS (PART II). by Michael Yui: Singapore
http://www.asiapacificdefencereporter.com/articles/198/Micronesia-and-its-Law-Enforcement-Problems-Part-II

BORDER SECURITY - TRANSNATIONAL CRIME IN MICRONESIA by Michael Yui: Singapore
http://www.asiapacificdefencereporter.com/articles/216/Border-security-Transnational-crime-in-Micronesia



<殺人を招く麻薬>

グアムの殺人事件の容疑者はパラオ、日本人の血も引く母を持っている。
今回訪ねたパラオでも知らない人はいなかった。そして麻薬の話が必ず出て来た。
90年代、パラオでも麻薬が一時問題になったが、収束したそうだ。しかし最近また問題になりつつあるという。

1月に立ち上がったレメンゲサウ政権。
昨年12月のトランジッションの期間に法務大臣の候補だけは早々に決まっていた。副大統領に選出されたTony Bell氏だ。大統領のメッセージに、”ベル副大統領ほど国の法執行の整備が必要と感じている人物はいない、”とあった。何があったのだろう?と気になっていた。

今回パラオで何があったのか始めて聞くことができた。ウェッブではなかなか見つからないニュースである。
ベル氏のご子息が、パラオ人の青年のけんかを止めようとして、逆に鉈で頭を割られ殺されてしまったのだ、という。昨年の選挙期間中のことである。同じくけんかを止めようとしたベル氏のご子息の友人は鉈で腕を切り落とされた。
情報をくれたパラオの友人は言う。
「パラオ人同士で殺すことは滅多にない。それに酒に酔っていても年長者の注意は聞くという伝統的文化、規律があるのよ。麻薬をやっていたに違いない。」


薬学者・長井長義氏は医療に貢献することを願ってメタンフェタミンの開発に心血を注いだはずである。
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