3月1日、東京大田区大森北の「キッズな大森」にて、杉並区子育て支援課の山本佳子さんを講師に招き、同区で平成19年に始まった制度、「子育て応援券」に関する講演会が開催された。
「子育て応援券」は、就学前の子どもがいる家庭を対象に、申し込みをすれば子どもの年齢に応じて年間最大6万円分が発行されるもの。利用者は、区から登録を受けた事業者が提供するさまざまなサービスの中から、自分が利用したいものを選び、子育て応援券で「支払う」ことにより支援サービスを受けることができる。サービスには例えば、親子で参加できるリトミック、子育て相談、保育所や幼稚園での一時保育などがある。
山本さんは、子育て応援券は単なる「バラマキ」や「金券の代わり」ではないことを説明。応援券は物品の購入に使えないのはもちろん、提供されるサービスは、親子で一緒に楽しめるものか、親をサポートするものか、子どもにとって良いサービスであるか、という視点に基づき区から承認されたもの。したがって、利用者が例えば「親子参加のコンサート」を選んだ場合、提供されるサービスは単なる「コンサートの入場券」や「託児付きコンサート」ではなく、「親子で一緒に楽しめるコンサート」といったものになる。
一方、サービスを提供したい人は、既存の企業、団体、個人に関わらず誰でも事業者になることができる。利用したいサービスがなかった女性が、自分の特技や子育て経験を生かし、地域にサービスを提供する例があることなども紹介された。
山本さんは、子育て応援券制度は、家庭の声やニーズを細やかにキャッチし、それを地域全体での子育て支援につなげる新しいしくみであること、また、助成対象となる子育て支援の内容を区が決定していたこれまでの方法と違い、助成の分配を区民が決める新しいしくみであることを語った。
今後の課題としては、利用者の声を受ける窓口の整備、サービスの質向上、個々の家庭の状況に応じたニーズ調査の必要性などが挙げられた。また、参加者からは、サービス自体もさることながら、例えば出産直後、家を出ることもままならないような時期に、地域のどこに何があるのか、どこに相談に行けば良いのかといった情報を得る手段として、このような制度があるといい、という感想も聞かれた。