豊田市には、人口の3.7%にあたる約1万6千人の外国人が暮らしています。平成19年度から、トヨタ自動車の基金や行政のまとまった予算のもと、外国人の日本語習得を支援する仕組み作りが始まりました。その土台となるのが、とよた日本語学習支援ガイドライン。誰が、どのように日本語教室を開設し、支援するのか、学習者は何を、どのくらい学ぶのか、効果をどのように判定するのかなどを網羅しています。
ガイドラインを作る過程では、地元企業、名古屋大学、豊田市や愛知県行政の関連部局、地域で活動するNPOなど、多くの人が連携してきました。必要な人に実際に教室に来てもらえるよう、民生委員を通じて家庭に声掛けしてもらうこともあるとのこと。土井さんのようなシステムコーディネーターが仲介となり、必要な人が必要なときに連携できる仕組みが整っているという印象を受けました。
(庄嶋孝広さん、土井佳彦さん)

続いて第2部では、市民社会パートナーズ代表の庄嶋孝広さんと、大田区で外国籍の子どもの学習支援に取り組む、NPO法人日本語ぐるりっと代表理事の飯島時子さん、蒲田小学校日本語教室担当教員のユン・チョジャさん、外国からの子どもの教育支援を考える会代表の河合良治さん、母子支援や生活相談を展開する一般社団法人OCNet代表理事の鈴木昭彦さんによるパネルディスカッションが行われました。
庄嶋さんからはおおた未来プラン10年を受け、「日本語教室などの個々の外国人支援の活動が、地域に支えられたものになるには?」、「『多文化共生社会』のために期待される地域力とは? その地域力が発揮されるために役立つ行政施策とは?」という2つの問題提起がなされました。
(飯島時子さん、ユン・チョジャさん)

飯島さん、ユンさん、河合さんからは、学習言語習得の重要さと難しさが紹介されました。日常会話は問題なく見えても、日本語での授業を理解する言語能力を習得するのは容易ではなく、授業についていけず毎日ぼうっとしている子どもも少なくありません。それがどれだけ辛いか、ユンさんはある子どもに、「僕はただ息をしているだけ」と言われたことがあるといいます。
一方で蒲田小学校では、外国籍の子どもをきっかけに学校にいる皆が国際人になってほしいと、日本語教室を「地球子ども教室」と名づけています。世界の遊びを体験する時間が設けられるなど、外国籍の子どもは多文化共生への架け橋となる可能性ももっているのです。
(鈴木昭彦さん、河合良治さん)

OCNetの鈴木さんは、関係する活動間の連携について、例えば自分達でできないことを日本語ぐるりっとにお願いする、といったことを地道に続けていると言います。しかし、「それぞれの活動は点にはなっているが面にはなっていない」と言うように、庄嶋さんの2つの問題提起に対して、大田区ではまだ限られた人が解答を模索している段階です。土井さんからは、「もし外国人への支援がまったくなかったらどれだけ困ったことが起こるか、多くの人にイメージしてもらい、それを解決するために明日からできることは何か、具体化することが重要」というアドバイスがありました。豊田市の日本語教室も、本来の目的は住民同士の相互理解の機会を増やすためであり、ボランティアを担うのは地域の人です。多文化共生社会の実現には、1人の100歩より100人の1歩、という言葉が印象的でした。