ぷらっとツアー開催報告 見て触れて感じて学ぶ「地域の宝」の見つけ方〜霞ヶ浦 アサザプロジェクト見学会 [2009年01月12日(Mon)]
アサザで湖を甦らせよう―。
霞ヶ浦のアサザプロジェクトは、これまでメディアでも幾度となく紹介され、その取り組みは日本全国、ゆくゆくは世界にまで広がろうとしています。 12月21日(日)、おおた市民活動推進機構では、先進的な市民活動に学ぶ「ぷらっとツアー」第3弾として、NPO法人アサザ基金の活動と霞ヶ浦の見学会を実施しました。 ![]() |
東日本最大の湖である霞ヶ浦は、かつてはワカサギなどが豊富にとれる自然豊かな湖でした。しかし、高度経済成長を経て、工業排水、生活排水、護岸工事の影響で環境は悪化。行政、研究機関、市民団体らによりさまざまな取り組みが行われてきましたが、解決の糸口は一向に見つからないままでした。
![]() アサザ基金代表理事の飯島博さんが、霞ヶ浦の再生を模索して、それまで誰もしたことのなかった「徒歩による霞ヶ浦調査」を始めたのは1993年頃のこと。知り合いの小中学生と一緒に、全周約250kmの湖岸を4周、ひたすら歩いたといいます。 その途中、歩き疲れて休憩していたときにふと、沖のアサザ群落の内側では、他の場所に比べて波が穏やかなことに気づきました。さらに、アサザが波を和らげることで岸辺に浅瀬が作られ、他の植物が多く生長できることもわかりました。 それが、アサザを種から育て、大きくなったら湖に植えて湖の自然を取り戻す「アサザプロジェクト」の始まりでした。 ![]() (小学校のビオトープ) 中心のない動的ネットワークで社会の壁を溶かし膜に変える―。 アサザプロジェクトは常に動き、広がり続けます。 アサザの里親、植えつけなど、活動の推進役は子どもたちです。「生き物とお話しする方法を身に付ける」ために、それぞれの学校ではビオトープを作ります。観察結果を学校間でやりとりすれば、環境モニタリングにもなります。霞ヶ浦の以前の姿を知るため、お年寄りに対して聞き取り調査を行います。世代間交流につながります。 アサザを定着させるための消波堤には、間伐材の枝を束ねた粗朶を使います。流域周辺の里山保全になり、雇用も創出されます。 湖にたくさんいる外来魚は漁協に捕ってもらい、そこから肥料を作って有機農業に使います。採れた野菜は「湖が喜ぶ野菜たち」というブランドで、地元のスーパーで売り出します。流域周辺の農業振興にもつながります。 ![]() 飯島さんが最も強調していたのが、「中心にあるのは組織ではなく、場である」ということ。 アサザプロジェクトの中心にあるのは、組織化されたネットワークでも、NPO法人アサザ基金でもありません。行政機関、研究機関、子ども、大人などそれぞれが、必要なときに必要なだけネットワークを作り、つながりあいます。 そして、プロジェクトが広がる最大の鍵は、地域の物語を掘り起こし、現代に読み替えること。小学生が公共事業を行い、霞ヶ浦水源地から流域にかけての「生き物の道」、「河童の道」を甦らせよう。NTTと協働で水源地に田んぼを作り、採れたお米を流域周辺の造り酒屋に仕込んでもらった「愛酊で笑呼(あいてぃでえこ)」。地域に伝わる「八郎太郎物語」の竜を、とんぼ=ドラゴンフライで甦らせる八郎潟再生プロジェクトなどなど。 新しく見出された物語、ブランド、価値を、場に関わる皆で作ることで、それまで自己完結していた環境保護、里山保全、地域間交流などの目的が、それぞれの解決策として互いに連鎖し始めるのです。 ![]() 飯島さんにお話いただいた後には、実際に小学校で作っているビオトープ、霞ヶ浦でアサザを植えている地点、牛久市バイオマス構想の菜の花畑を見学しました。 霞ヶ浦は臭いこそないものの透明度はかなり低く、周辺地域の化学肥料などの影響もあって水質改善はなかなか進まず、アサザは波に流されてしまうことも多いとのこと。「100年後にトキが舞う霞ヶ浦」を目指して、息の長い取り組みが進行中です。 一方、見学した菜の花畑は2ヘクタールでしたが、同じような耕作放棄地は牛久市だけでも400ヘクタールあるそうです。菜の花は密集させて植えれば草取りなどの手間がかからず、菜種から取れた油を学校給食などに使う構想とのことでした。 飯島さんは、NPOや社会起業家は、新たな物語、文脈を生み出し、場を創る触媒としての機能、離れた組織をつなぎ、体のすみずみまでネットワークをいきわたらせるホルモンのような機能を果たすべきだといいます。 おおた市民活動推進機構がめざすのも「価値の創造」です。今回のツアーに参加した人、さまざまな問題に取り組む人などと共に、大田区でもこれから「新たな物語」を創っていけたら、と思います。 ツアーに参加した推進機構副代表の庄嶋も感想を書いています。詳しくはこちらのブログへ→https://blog.canpan.info/cs-partners/archive/104#BlogEntryExtend |