
(←「童具館」のおもちゃ)
講演には、定員の3倍を超える申込者があり、抽選で選ばれた20人が聴講しました。
和久さんは、アトリエに通う子どもが描いた絵を見せながら、「こういう絵は大人にはぜったいに描けない。これを見ると、自分は芸術大学まで行って何をやってきたんだろうと思います。」と語ります。大人が邪魔をしさえしなければ、子どもは思いもつかないくらいすばらしい感性を発揮するのだそうです。
和久さんが講演会を通して終始強調していたのが、子どもに安易に手を貸さないこと、答えを見せないこと、我慢して子どもの好きなようにさせること。
子どもは何もしていないように見える時間、必死に答え探しをしています。その時間を奪うことは、子どもの価値観を否定することであり、失敗する機会を奪うことです。そしてそのような育て方をされてしまうと、自分の世界がない、自立していない大人になってしまうのだそうです。
和久さんは、1年間何もしなかった子どもがある日突然、20分ですばらしい絵を描きあげたことや、それを見守り続けたお母さんの例など、次から次へと具体的に親子の関係について紹介。参加者は時折大きくうなずきながら、和久さんの話に聞き入っていました。
(「わくわく創造アトリエ」の体験ワークショップ↓)

講演とともに、別の部屋には「童具館」のおもちゃで遊べる「積み木ワンダーランド」も設けられました。特に午前と午後の2回開かれたワークショップは、「わくわく創造アトリエ」の積み木のプログラムが体験できるとあって、整理券がすぐになくなってしまうほどの人気を集めていました。
続いて午後1時半からは、「パパ力検定」仕掛け人でもある安藤哲也さんによる講演会、「仕事も子育ても楽しみたい!〜パパのハッピーワークライフバランス」。
(安藤哲也さん)

安藤さんは、出版業界を中心に複数の企業を経験しながら、3人の子どもをもち、2006年にはNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。父親がもっと子育てを楽しめるよう、講演会の開催や、企業への働きかけといった活動をしています。それとともに2003年からは、子育て中の父親達で立ち上げた「パパ's絵本プロジェクト」のメンバーとして、絵本の紹介、出張おはなし会といった活動を全国で展開中です。
(安藤さんによる絵本のおはなし会↓)

安藤さんには、撲滅したい言葉が3つあるそうです。「お父さんの子育て参加」、「子育て協力」、「家族サービス」。あくまで子育ての中心は母親、父親はときどき関わるだけという意識や、子育てに対する義務感が透けて見えるからです。
「子どもができたら、OSを入れ替えましょう」という安藤さん。ただ、男性の中には、父親になるとまず自分の父親を思い浮かべ、自分の家族にも同じことをしてしまう人が多いと言います。安藤さんによれば、それはわざわざ古いOSをインストールするようなもの。「自分のパソコンに、Windows95をインストールして使う人がいますか?すぐにフリーズしてしまいますよね。フリーズしたらどうします?」。参加者から飛び出した「買い換える」との答えに、会場は大笑い。安藤さんも笑いながら、「まあ、まずは強制終了(=離婚)ですよね。そうならないためにも、新しいOSをインストールすることが大切です」。
安藤さんは、ちょっとした工夫をしながら楽しく子育てに関わってきた自らの経験を紹介。例えば、最初は苦手だったというウンチのオムツ替え。これを楽しむにはどうすればよいか、考えた安藤さんは、あるとき「ウンチも情報だ!」ということに気づいたそうです。「それからは、いいウンチを見たときには妻とハイタッチですよ」。
子育てをすることで、男性は人間的に大きく成長することができ、危機管理や人材育成など、仕事に役立つ能力も身に付きます。父親になることは、そのすばらしい体験への入場券を手に入れるということ。「それをどうしてもっと楽しまないの?」というメッセージが、全体を通して強く伝わってくる講演会でした。
講演の後には、安藤さんによる絵本の出張おはなし会も開かれ、参加者は思い思いの場所に座り、おはなしに聞き入っていました。