4年目の「さっと」は今 [2015年10月18日(Sun)]
以前、やるじゃん!おおたでは、南相馬市の精神障害者移動支援事業、「さっと」を紹介しました(2012年5月22日記事「移動支援で南相馬と大田の市民団体がコラボ」)。立ち上げから4年がたち、現在はどうなっているのか、8月30日に行われた報告会から現状を聞くことができました。
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もともと「さっと」は、おおた市民活動推進機構(以下「推進機構」)が助成金の申請団体となり、運転手などの実働スタッフを現地で担う、全国的にも珍しい広域連携で始まりました。しかし継続的な運営のためには、助成金関連も含めすべての業務を現地で担う必要があります。推進機構事務局の中野真弓さんによれば、2013年4月からは、それまでの現地スタッフが中心となって立ち上げた「相馬市、南相馬市に新しい移動支援モデルを創る会」に運営が引き継がれ、さらに2014年4月からは、利用事業所のひとつである「あさがお」が主体となって運営しているとのことです。
「あさがお」利用者でもある蒔田さんは、運転手として大車輪で活躍しています。毎日朝夕、平均6〜7人の利用者をピックアップし、住まいと各作業所の間をまわります。利用者の通院時は病院への送迎も行います。現在利用者は4つの作業所の計30人ほど、立ち上げ当時からほぼ変わっていないそうです。特に精神障害者にとって病院へのアクセスは重要であり、原発事故による病院閉鎖や作業所のスタッフ不足が重なる中、「さっと」のもつ意味は大きいとのことでした。 「さっと」はガソリン代や利用者の収入、作業所の財政状況などを考えると採算ベースに乗せるのは難しく、継続した何らかの助成が必要です。これまでWAM(福祉医療機構)やジャパン・プラットフォームからの助成金を1〜2年単位で得て運営されてきましたが、来年は南相馬市が行政として支援する案も出ているそうです。さらに、特別支援学校での公的な送迎サービスは中等部までしかないという問題を受け、今年からは対象を特別支援学校高等部の生徒にも拡大しています。これは、地域にもともとあった問題が「さっと」ができることにより解決に向け動き出した例といえます。人口密度が低い地域において、福祉分野での移動支援の問題は共通する課題のはずです。「複数の施設の移動支援を一つの主体が行うこの南相馬市のような形が、全国のモデルになっていくとよいのではないか」と、中野さんは今後の展望を語りました。 |