2003年の政策提言とその回答です。
NPOの基盤整備に向けた和歌山県施策の充実・強化について
わかやまNPOセンター
県行政にあっては、「NPOからのふるさとづくり企画提案事業」の予算増額やNPO講座等の継続取り組みなど、数々のNPO施策の充実をはかることに対し、あらためて感謝申し上げます。また、最近は、知事みずから「NPO先進県への期待」や「自治体の限界を克服するためにNPOとの協働を」等について公言されており、NPO活動にかかわるわれわれにとっては、大きな期待をかけられているものと考えております。
しかしながら、県内NPOの活動強化やNPO活動の立ち上げ等における基盤づくりはまだまだといわざるを得ません。NPO先進国といわれるアメリカでは、創設期の支援は行政・助成財団等がその役割を負い、活力ある地域コミュニティづくりを進めています。
生活者のニーズはますます多様化し、豊かな暮らしの定義は様々です。地方分権がすすむ状況と地域経済の活性化がいまだに望めない現状にあっては、生活者のセーフティネットづくりは、NPO活動の活性化にあるのではないでしょうか。
私たちは、「NPO先進県」への道筋を明らかにするために、県内NPO法人等の声を聞く中で、下記の施策を必要と考えています。NPOの基盤整備を最重点課題と位置づけ、真摯にご検討賜りますようよろしくお願い申し上げます。
1. 「新しい公共」への対応1) 1998年12月に特定非営利活動促進法が制定されて以来、すでに5年が経過しようとしていますが、現在のNPOに求められるのは、行政にできない分野の活動だけではなく、現在行政がおこなっている事業をも担うことで、より効果が高い公益サービスを提供することにあります。それらは「新しい公共」という概念とともに期待されているものですが、こうした動きを行政とNPOのパートナーシップで対応しようとすれば、和歌山県をはじめ、各市町村が、それぞれの事業を洗い出し、事業委託の実施の可否を検討することが必要になります。こうした作業に早急に取り組み、NPOへの事業委託の可能性を検討されることを望みます。
2) 補助金等の交付にあたっても、各部局が合同で見直し作業を行うことによって、その妥当性についても精査することは欠かせません。こうした取り組みをすすめ、本当に今、必要な事業に助成することを切に希望します。
3) 事業を実施するまでにアイデアレベルでの協働も重要なことです。行政・NPO間の交流をすすめるために、たとえば、振興局単位で、行政側が定期的にNPOの事業内容を聞き、相互に情報交換ができるような場をつくられるようご検討いただきたいと思います。
2. 人材活用の具体的取り組み(セクター間人事異動の実現) NPOが真に地域に根ざした活動となるためには、NPOの活動を正しく理解し、市民を啓発し、リードする役割をもった人材が必要です。また、行政の仕組みを市民サイドに知らせることも重要な取り組みであると考えています。そのためには、行政に関わる人たちがNPOの活動現場を体験し、また、NPOの人たちがその専門知識を行政の場でいかせるよう、行政セクターと市民(NPO)セクター相互の人材交流についても具体的にご検討いただきたいと思います。
3. 中間支援機関の充実・強化 NPOの活動を広く知らしめつつ、起業にむすびつけるためには、NPOを支援するNPO(中間支援組織)の役割はきわめて重要です。欧米では、これらは行政の役割として、資金援助やマネジメント支援などに取り組まれているのが現状です。
中間支援組織は、それ自体、収益性は小さく、これらの機能をもった組織づくりのために、中間支援組織ができそうな地域では、その芽を育成していただく必要があると思います。
私たちは、こうした中間支援組織づくりを各地ですすめますが、少なくとも振興局単位で活動場所の提供や、一定期間の活動資金の援助などのご支援をお願いします。
4.基本方針の見直しと方針実現に向けたロードマップ(工程表)の作成 すでに和歌山県にあっては、「ボランティア・NPO活動促進基本方針」が制定されており、その中には、多くのNPO施策をすすめるための基本的な方針が盛り込まれています。しかしながら、それらを具体的に実現するには、進化するNPOを固有の活動として認識し、施策の優先順位づけ、実施期限などを決めた実行計画づくりがかかせません。
強制力を担保するためには、市民・NPOが一体となって「条例」づくりも視野にいれつつ、方針実現にむけたロードマップ(工程表)づくりに着手していただくよう希望します。
5.NPO活動の情報共有と交流 県内NPOの具体的な活動を広く知らしめ、NPO相互の交流をはかることは、広くNPO活動を理解していただくために大変、重要な取り組みであります。
NPO側にとっても、個々にセミナーやイベント等に取り組むより、スケールメリットを活かした開催方法なども模索する必要があろうかと考えています。そこで、一定期間(一ヶ月程度)に各地のNPOが一斉に集い、セミナーやWS、イベント等を行う「NPOケアーズ」(仮称)の開催について、行政との協働で実施したいと考えていますので、資金面や広報面での協力をお願いします。
6.安定した運転資金の確保に向けた仕組みの創設
1) 行政からの委託事業や補助金事業に関わる場合、事業費が後払いになるため、資金ストックを持たないNPOは資金繰りに窮する場合があります。また、そもそも資金不足で事業を受け入れることができないNPOも多くあります。こうした場合、「前払い制度」も利用できるようですが、ほとんど、活用されていないのが実情です。
そこで、たとえば県等が債務保証することにより、簡便に金融機関からそれぞれのNPOが資金を借入れる方法なども、早期に検討していただきたく思います。
2) 市民が資金を拠出し、行政が同額程度の資金を拠出する「わかやま市民ファンド」(仮称)の創設により、NPOの立ち上げ期を応援するような仕組みづくりを、NPOに関わる人たちとともに検討されることを希望します。
最後に
NPOの活動は、多くの場合、地域的なコミュニティで取り組まれるものです。和歌山県だけではなく、市町村レベルでの対応も期待しなければなりません。NPOの認識を高め、情報共有をすすめるためにも、県の指導力を発揮していただきますよう切に期待します。
以上
(2003年12月12日)