ガンディーの葛藤。 [2024年11月04日(Mon)]
(1264)
医療関係者のある友人が、私にこう言いました。「あなたが誓いを立てた時、あなたはコブ牛と水牛の乳しか念頭に置いていなかったのではありませんか。それならば、ヤギの乳を飲んでも誓いを破ったことにはならないのではありませんか」 妻も彼に賛同しました。それで、とうとう私もその勧めに従うことにしたのです。 本当のことを言えば、ミルク断ちをしている者にとっては、たとえ誓いを立てた時にコブ牛と水牛の乳のことしか念頭になかったとしても、ミルクはやはりタブーであるべきです。実際、どんな動物の乳でもその性質はみな同じなのです。ただ、成分の割合が種類によって多少異なるだけです。だから、私は誓いの心を忘れ、単に形式的にそれを守っているだけに過ぎないと言われてしまうかもしれません。 ・・・ 食べ物についてのガンディーの話の続きです。 動物の肉はもちろん、ミルクや乳製品も口にしてはいけないという考えを持ち、それを実践する誓いを立てていたガンディーですが、その彼が重い赤痢に罹ってしまい、ベッドから起き上がれないほど衰弱してしまったのだそうです。(1263) しかし、決して彼はすぐにミルク断ちをやめようとしたわけではありません。医療関係の友人が、彼に強く勧めたのです。流石は友人だけあって、彼はガンディーの性格をよく知っていました。自分が立てた誓いを破るようなことは絶対にしないだろうと思ったのでしょう。彼は、非常に良い説得法を考え出しました。それは、コブ牛や水牛の乳ではなく、ヤギの乳なら誓いを破ったことにならないだろうという理屈なのでした。 インドでは、一般に牛と言えばコブウシのことを指したようです。一部では、水牛を飼っている地域もありました。(827)いずれにしても、インドにおける一般常識として、ミルクと言えばコブ牛か水牛の乳のことであり、ガンディーもそれを念頭に置いて誓いを立てたのです。 まったく、なかなか見事な説得術だと思いますが、それでもガンディーは素直に従ったわけではありません。彼の心の中では、非常に激しい葛藤が続いていたのでした。 ・・・ |