(1005)
<編集長>
それは、難しいでしょう。
既に出来てしまっているものを廃止するのは容易な仕事ではありません。
だから、「悪しきことをやめるのは賢い人にしかできないが、最高の賢人は初めから悪しきことに手を染めない人だ」と言われるのです。
「工場はすべて閉鎖すべきだとおっしゃるのですか?」という若い読者の質問
(1004)に対する編集長(ガンディー)の答えです。
確かに彼は、機械文明や工場における機械生産を強く批判しています。しかし、だからと言って、「今あるすべての工場を、即刻廃止せよ」などという乱暴なことは決して言わないのです。ガンディーは過激と言っていいほどの原理主義者ですが、同時に現実主義者でもあるのです。
だから彼は、「今ある工場の操業をすぐに停止して、工場自体も閉鎖・撤去すべきだ」ということは主張しません。それには必ず大きな困難が伴うし、またその困難を乗り越えて実行したとしても、かえってより深刻な矛盾や弊害を生み出してしまいかねないことを知っているからです。
「悪しきことはやめればよいというわけではない。そもそも悪しきことを始めないように我々は心掛けなければばならないのだ」と彼は言うのです。
しかし、それはそうだとしても、既に出来てしまった工場という悪しきものに対しては一体どうすればよいというのでしょうか?
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