さらに、ソローは貧しい生活の好ましさ・豊かな生活の不都合について様々な表現で語ります。
「公的な扶助を受けているよりもっと多いのは、決して誠実とは言えないやり方で自分の生活を支えている人たちだ。その方が、ずっと不名誉なんじゃないか」
「生活の貧しさだってそれが立派に育つようにきちんと注意して世話するべきだ。それが賢者というものだ」
「君の衣服は売り払ってもよい。でも、君の思想は売り渡すな」
「狭い屋根裏部屋の隅に何日間も閉じ込められた蜘蛛のような境遇になったとしても、ぼくにとっての世界は少しも狭くなりはしない」
「貧困と窮乏の影が、ぼくたちの周囲に集まって来る。すると、見よ。新しく創造された宇宙がぼくたちの視界に広がってくるではないか」
「仮にクロイソスの富が与えられたとしても、ぼくたちの目指すべき目標はそれ以前とまったく変わらない。その目標に近付いて行くための手段だって、本質的には何も変わらないだろう」
「余分な富で買えるのは、まさに余分な物だけだ」
という具合です。
「貧しい生活(簡素な生活)が大事だ」というのは、「ウォールデン」の大きなテーマの一つです。しかし、世間一般の人々は正反対のことを考えています。
そこで、ソローは次に、そういう人々の常識的な考えを痛烈に批判するのです。
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(つづく)