民を愛するがゆえにこそ、民を叱る。 [2018年02月01日(Thu)]
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そして三番目は、もしも人々の中に誤った考えがあれば、それは誤りであると勇気を持って明言することです。 これが、ガンディーの考える新聞の使命の最後です。一番目の使命は、「大衆が抱いている感情を理解し、代弁すること」でした。そして二番目の使命は、「人々の間に望ましい感情を喚起させること」でした。 第一の使命によって、自分はあくまでも民衆の立場に身を置くのだという基本姿勢をガンディーははっきり示しています。ただし、決して彼は大衆迎合主義者ではありません。第二の使命として掲げられている項目を見れば、民衆のオピニオンリーダーとしての自覚を彼が持っていたことも分かります。 しかし、単に自分の考えを完全無欠の正論、唯一至上の問題解決方法とみなし、自らが権威者となって大衆にそれを示して高圧的に従わせようとしたのではありません。ガンディーは日々の自己省察を怠らずに思想の深化に努め、また非常に厳しい実践を自らに課して内面化に励み、常に謙虚な姿勢で真理探求の道を歩み続けたのです。彼が中心的な拠り所としたのは、バガヴァッド=ギーターをはじめとするヒンドゥ教の聖典でした。さらに彼は、ソロー・トルストイ・ラスキンなどの欧米の思想家の著書も精力的に読んで自分の思想を吟味検討し、そのような研鑽を経て到達した真理に基づいて「正しい」と思われることを人々に説いたのでした。 彼が規範としていたのは絶対的な真理ですから、もちろん妥協はありません。だから人々に対しても、いかなる反発も恐れずに誤りは誤りであると指摘し、何としても彼らを正しい方向に導くことが自分の使命であると考えていたようです。 この三つの使命を挙げた後、ガンディーは・・・ |