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「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の目次 [2021年04月13日(Tue)]
 読者の便宜を図るために、「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の目次を作りました。


 目次

第1章 インド国民会議とその議員たち

第2章 ベンガル分割

第3章 不満と不穏

第4章 自治とは何か?

第5章 イギリスの状態

第6章 文明

第7章 インドはなぜ滅びたか?

第8章 インドの状態

第9章 インドの状態(続き) 鉄道

第10章 インドの状態(続き)ヒンドゥー教徒とイスラム教徒

第11章 インドの状態(続き) 弁護士

第12章 インドの状態(続き) 医者

第13章 真の文明とは何か?

第14章 どうすればインドは自由を獲得できるのか?

第15章 イタリアとインド

第16章 暴力

第17章 受動的抵抗

第18章 教育

第19章 機械

第20章 結び
物質主義的な現代文明に対する根本的な批判の書。 [2021年04月12日(Mon)]
 そしてまた、物質主義的な近代文明に対するガンディーの厳しい批判は、非常に根本的で重要な示唆をぼくたちに与えてくれると思います。
 それは、ソローやトルストイからの思想的流れを汲む文明批判の書であると言えるのではないでしょうか。しかも、ガンディーにおいてはさらに分析が深められ、内面化され、具体的な実践につながる様々な教えが提示されていると思います。
 「えっ、そんなこと、書いてあったっけ?」という人は、是非ともこの本を再読してみてください。
 しかし、とは言っても・・・
連載終了。 [2021年04月11日(Sun)]
 2018年の1月から連載を続けてきたブログ連載ゼミですが、ガンディーの「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」が遂に完結しました。ほぼ一日一回更新で、なんと3年3か月もかかってしまいました。文庫本だと非常に薄い本なので、実はこんなに長期の連載になるとは思っていなかったのですが・・・。
 それにしても、ガンディーの言葉は百年を隔てた現代においても新鮮で、はっとさせられる所がたくさんありました。イギリスの議会政治の矛盾についての話は、現代日本にもほとんどそのまま当てはまると感じました。また、テロリズムはもちろんのこと、あらゆる形態の暴力を否定する彼の訴えは、今の世界にとっても非常に貴重なメッセージになっていると言えるでしょう。
 さらに、鉄道や機械やグローバリズム経済に対して彼が厳しく批判したような問題は、現代においては一層深刻化しているのが明らかです。
 だから、この連載は3年の歳月を費やしてでも取り組む甲斐のある重要な仕事であったなあと自分では思っています。
 そして・・・
真の意味におけるインドの自治を実現するために・・・。 [2021年04月10日(Sat)]
(1145)
 そして、私の良心は確かにこう言っているのです。
 私は、この真の意味におけるインドの自治を実現するために全生涯を捧げなければならないのだと。


 
 ガンディー著「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の最後の言葉は、「真の意味におけるインドの自治を実現するために全生涯を捧げる」というガンディーの強い決意表明です。
 彼の後半生は、まさにこの宣言の通りでありました。それは、皆さんよくご存知のことと思います。
 さて、この本は今から約110年前の1909年に書かれたのですが、「真の意味における自治」ということを考えると、2021年の日本にとっても決してそれは既に達成されたことではなくて、これから強い決意によって実現させていかなければならない未来に向けての大きな課題なのではないでしょうか?
 ・・・
真の意義を理解しないで、その言葉を使っているのではないか? [2021年04月09日(Fri)]
(1144)
 「スワラージ(自治)」という言葉を我々は盛んに使ってきましたが、実はその真の意義を理解していなかったのではないか。私はそのように言いたいのです。
 私は、自分の理解している所に従って、それを解き明かそうと努めてきました。



 2018年の1月から連載を続けてきた「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」研究も、いよいよ本当に最後の最後を迎えました。
 これが、遂に最終段落です。
 結局、本の題名の通り、「スワラージ(自治)とは何か?」というのがガンディーの最も訴えたかったテーマなのです。
 「真の自治とは、自分自身を統治することである」(1138)。これは、彼が明確に、しかも繰り返し述べていることです。しかし、「多くの人々はその真の意義を正しく理解していないのではないか?」とガンディーは問いかけるのです。
 このことは、本の前半の部分で既に言及されていましたね。「多くのインド人が自治を望んでいるが、自治という言葉の意味を皆が正しく理解しているわけではない」「スワラージを求める多くのインド人たちは、『イギリス人を自分たちの国から追い払わなければならない』と考えている」(103)とガンディーは言っていました。
 その「真の自治」という問題について、ガンディーがここまで非常にたくさんの言葉を費やして懇切丁寧に、かつ総合的に述べて来たのが、「ヒンド=スワラージ」なのです。
 そして、この本の締めくくりとして・・・
イギリス人は憎まないが、彼らの文明は憎みます。 [2021年04月08日(Thu)]
(1143)
 これらのものは、その本質において我々の害になるのです。このことは是非とも肝に銘じておいてください。我々がそれらを望まないのは、そういう理由からです。
 私は、イギリス人に対しては少しも敵意を抱いてはいません。しかし、彼らの文明は我々の敵だと見なしているのです。



 「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の最後のまとめの四番目、これが最後の項目なのですが、まだ続きます。
 「ヨーロッパ文明は有害なもの、憎むべきもの、断固として拒否すべきもの」というのは、この本の最も重要なテーマです。ただ、彼はヨーロッパ人(イギリス人は、その代表です)を憎んでいるのではありません。ヨーロッパ人への敵意や対抗心から、その文明を受け入れがたいと思っているのでもありません。
 そうではなくて、彼はヨーロッパ文明(ヨーロッパはたまたま歴史的にその発祥地になっただけなので、近代文明と言った方がいいかもしれません)がその本質からして極めて有害なものであると主張しているのです。
 もちろん、それはインド人にとって有害であるだけでなく、イギリス人にとっても有害なのです。(235)では、「イギリス人たちは、今まさに文明によって苦しめられている」と語られていましたね。
 さて、これで最後のまとめは終わりです。
 次はいよいよ、ガンディーの結びの言葉に入ります。
 ・・・
機械製の品物は用いない。イギリスの産業は取り入れない。英語も使わない。 [2021年04月07日(Wed)]
(1142)
 だから、仮にイギリス人が塩税を廃止し、我々に富を返し、インド人を最も高い地位に就け、そして軍隊を撤退させたとしても、我々は決して機械製の品物は用いませんし、イギリスの産業もほとんど取り入れません。また、英語も使いません。


 
 「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の最後のまとめの四番目の続きです。
 ガンディーにとって、インドの自治を目指す上で最も重要なのは「イギリス帝国による政治的・軍事的支配を排除すること」ではなく、「ヨーロッパ文明の影響を排除してインド独自の文明を守ること」なのです。
 「塩税」については(67)などで、「富の収奪」「インド人の社会的地位」は(116)などで、そして「イギリスの軍備に対する批判」については(1080)で述べられていました。
 なぜ、ガンディーはこのように主張するのかと言いますと・・・
イギリス人を敵として戦うのではなくて・・・。 [2021年04月06日(Tue)]
(1141)
4.我々が望むことは是非とも実現されるべきです。それは、イギリス人への反発からではありません。彼らへの報復としてでもありません。そうすることが、我々の義務であるからです。
 


 「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の最後のまとめの四番目は、「自治を求める運動は、イギリスに対する戦いではない」ということです。
 ご承知のように、当時のインドはイギリスによる植民地支配を受けていました。だから、ナショナリズムに目覚めた多くのインド人が祖国の独立と民族の自治を強く求めていたのです。それは、ガンディーも同じです。
 しかし、「インドの自治はイギリス人に対する闘争に勝利することによって実現される」という考えを彼は否定します。そうではなくて、「インドが支配されている本質的な原因はインド人自身の中にあり、その自治の実現はインド人が自らの問題を克服できるかどうかにかかっている」と言うのです。(1125)
 そしてまた、「それは、我々の義務である」とも述べています。多くの人は、「民族の自治は当然の権利だ。だから、我々は自分たちの権利の回復を要求し、その要求が聞き入れられなければ、実力でその権利を勝ち取るのだ」というふうに考えるでしょう。
 もちろん、ガンディーもそれが権利であることは否定していないと思います。ただ、「権利を求める闘争」によっては本当に価値ある権利は実現しないと言いたいのではないでしょうか。(698)これは、「人間の義務について」という本を書いたイタリアのマッツィーニに非常に近い考えであると言えると思います。
 それから・・・
スワデシ。 [2021年04月05日(Mon)]
(1140)
3.この力を用いるために必要なものがあります。それは、スワデシです。どのような意味で解釈するにしても、受動的抵抗にはスワデシが不可欠なのです。
 


 「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の最後のまとめの三番目は、「スワデシ」についてです。
 スワデシは、受動的抵抗の具体的な内容の一つです。普通は、「国産品愛用・国産奨励の提唱」というふうに理解されていると思います。しかし、ガンディーの考える「スワデシ」というのはもっと過激で、もっと哲学的なものです。(1015)
 しかし、このまとめの部分を読むと、ガンディーは必ずしも自分の考えに固執せず、「あらゆる意味におけるスワデシ」と言っています。すなわち、イギリスの経済進出からインドの産業を守るための保護主義的な政策あるいは国民運動としての国産品愛用にも意義を認めているものと思われます。
 それから、次に彼が言及するのは・・・

受動的抵抗は、魂の力。 [2021年04月04日(Sun)]
(1139)
2.真の自治を実現する方法は、受動的抵抗です。それはすなわち、魂の力です。あるいは、愛の力と呼んでも構いません。



 「ヒンド=スワラージ(インドの自治)」の最後のまとめ、第二番目は、「真の自治を実現する方法としての受動的抵抗」についてです。
 受動的抵抗については、第17章で詳しく述べられていましたね。
 しかし、ガンディーの主張によれば、「受動的抵抗」というのは決して受動的ではありません。それどころか、極めて能動的なものだと言えるでしょう。
 ですから、この時点では最も一般的な用語であった「受動的抵抗」という言葉を使ってはいますが、本当は適切とは言えないのです。だからガンディーは、これを「魂の力」「愛の力」「真理の力」と呼ぶことを提唱しているのです。
 そして・・・
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