• もっと見る
«第9回「小学生の疑問に答えないけど一緒に考えるゼミ」の報告(6) | Main | 第9回「小学生の疑問に答えないけど一緒に考えるゼミ」の報告(7)»
イワンは今でも達者でいて・・・ [2017年12月14日(Thu)]
(327)
 イワンは今でも達者でいて、みんなが彼の国へ押しかけてまいります。



 老悪魔は、遂に破滅してしまいました。イワンが、勝ったのです。ところが、よく考えてみると彼は決して悪魔と戦ってはいないのです。これは、とても奇妙なことにも思えます。
 イワンはただ、自分の生き方を貫いただけなのです。自ら耕し、自ら生産に従事する。労働を厭わず、労苦を悲しまず、便利さ・快適さ・華美・享楽を追わずに、ただただ日々の暮らしを淡々と積み重ねていく。それが結果として、悪魔の誘惑をしりぞけ、悪魔の策略に陥らず、悪魔の攻撃に打ち克つことになったのです。
 悪魔との戦い。それは、自分自身との戦いです。「楽をしたい。利益を得たい。競争に勝ちたい。成功を収めたい。豊かな暮しをしたい。他の人々を支配したい。・・・」そのような欲望に従ってしまえば、その人は気付かないうちに心を悪魔に奪われてしまいます。
 そうなのです。悪魔は決して、「お前を滅ぼしてやるぞ」などと言って私たちに近付いて来るのではありません。反対に、「あなたの苦労を取り除いてあげますよ。あなたに利得を与えてあげますよ。あなたを幸せにしてあげますよ。・・・」などといった甘美な声で私たちにささやきかけて来るのです。
 本当に、恐ろしいことではありませんか。このような悪魔によって我が身を滅ぼされないようにするためには、深遠な叡智と強靭な意志を持った賢者・聖者になるか、あるいはイワンのような人になるかのどちらかしかないのではないかと思います。
 というわけで、この物語の中でイワンやその国の人々は「馬鹿」と呼ばれていましたが、実はそういう人こそが本当に賢い生き方をできるのではないしょうか?
 さて、この物語はまだ終わりではありません。その後、イワンは・・・
 
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました

コメントする
コメント