働かざる者食うべからず。 [2022年01月26日(Wed)]
2 肉体労働
(261) 自分の手足を使って労働をしない人には食べる権利もありません。働かないで食べ物を得るのが正当な権利だなんて、一体どうしてそんなことがありうるでしょうか。 (「From Yeravda Mandir」1957年) ここからは、肉体労働についてのガンディーの意見です。 肉体労働というものを、彼は頭脳労働より価値の低い労働、誰にでもできる単純な労働とはまったく考えていません。それどころか、肉体労働だけが真に価値ある労働であると考えているのです。(109) そしてここでは、「肉体労働をしない者には食べる権利もない」とさえ言っています。多くの人が、あの有名な言葉「働かざる者食うべからず」という言葉を想起するでしょう。 この言葉を有名にしたのは、ロシア革命の指導者のレーニンです。(『働かざる者は食うべからず』――これが社会主義の実践的戒律である) レーニンの思想や立場を考えれば、「働かざる者」というのが自らは労働せず他人の労働から生み出された富を搾取している資本家や地主たちを指していたことは明らかです。ガンディーが意図していたことも、それに近いと思われます。 しかし、この言葉はレーニンが考案したものではありません。マルクスでもありません。ずっと昔の、聖書の言葉です。新約聖書の中の「テサロニケの信徒への手紙(二)」に、「働こうとしない者は、食べてはならない」と書いてあるのです。また、「自分で得たパンを食べなさい」「たゆまず善を行いなさい」とも記されています。ですから、やはり、「自らは働こうとせず、他人の労働の成果を受けて暮らしている者」が批判されていると考えられます。全体の文脈から推測すると、「病気などの原因で肉体労働ができない人」に対して「お前は働いていないのだから、食べることも許されない」と言っているとはまったく考えられません。むしろ、「自分は肉体労働よりも重要な仕事をしているのだから」と言って、肉体労働をしている人たちより豊かな生活を享受することが当然の権利であると勘違いしているような人たちに対する厳しい言葉なのではないかと思います。 なお、出典となっている「From Yeravda Mandir」は、1930年、ガンディーが投獄された際に獄中からアシュラムに送った手紙の内容が後に出版されたもののようです。 |