実践はいつも理論通りには行かない。 [2021年06月07日(Mon)]
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もちろん、実践はいつも理論通りには行きません。それは、ユークリッド幾何学の理論的な直線を実際に引くことができないのと同様です。 そこで、次のように言うことができるでしょう。完全な独立がどこまで真に完全でありうるかは、真実と非暴力という理想に我々がどこまで実践において近づくことができるかにかかっているのです。 (「建設的な計画」1961年) 「真実と非暴力によって達成される完全な独立とは、誰も取り残されない独立でなければならない」とガンディーは言います。 しかし、それはあくまでも理念的な話です。「完全な平等」というのが目指すべき理想であることは間違いないとしても、現実には非常に解決が困難な差別が無数にあり、決して理想通りではないことは彼も十分に理解しています。けれども、だからと言って理想を放棄してはいけないというのが彼の考えなのです。 ここで、ユークリッドが出て来ました。ユークリッドとは、古代ギリシャの数学者です。ギリシャ語では、エウクレイデスと読むそうです。彼は、それまでの数学の成果を集大成して「幾何学原本」(または「原論」)という本にまとめ、後世に大きな影響を与えました。ガンディーも、恐らくイギリス留学時代にユークリッド原論で幾何学を学んだのでしょう。 さて、その「原論」には、「線とは幅のない長さである」と定義されているそうです。確かに、実際にそれを描くことは不可能ですね。しかし、理念的にそのようなものを想定することは学問的に有効なのです。そして、このような理論的な探求活動の結果として現実的な利益をもたらす成果が無数に導き出されてきたことは周知の事実でしょう。 そして・・・ |




