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2019年06月09日(Sun)

特定収入の特例(個別対応方式A)
NPO法人等の消費税を見ています。

特定収入に係る仕入税額控除の特例について見ています。

この特例計算をする場合には、納付税額は、以下の算式で計算します。

課税標準額に対する消費税額−(特例計算前の課税仕入れ等の税額−特定収入に係る課税仕入れ等の税額)

特定収入に係る課税仕入等の税額は、個別対応方式の場合には、下記の通りで計算します。

@ 課税売上にのみ要する課税仕入れ等に使用される特定収入×6.3/108

A 課税非課税共通の課税仕入れ等に使用される特定収入×6.3/108×課税売上割合

B (調整前の仕入控除税額−(@+A))×調整割合


今回は、事例で考えてみます。





1.事例

(活動計算書)
T 経常収益
1.受取会費 10,000,000円(不課税)
2.受取補助金 21,600,000円(不課税)
内訳:ソフトウエア購入のための補助金8,640,000円
   人件費補填のための補助金 10,800,000円
   通勤費に充てるための補助金 2,160,000
3.事業収益(課税売上)54,000,000円
(税抜50,000,000円)
4.事業収益(非課税売上) 50,000,000円
収益合計  135,600,000円


・課税売上にのみ使用される課税仕入れに使途が特定されている特定収入が8,400,000円
(ソフトウエア購入のための補助金)

・課税売上と非課税売上に共通する課税仕入れに使途が特定されている特定収入が2,160,000円

・使途不特定の特定収入が10,000,000円(受取会費)

・課税売上高 50,000,000円、非課税売上高 50,000,000円、課税売上割合 50%

という事例です。


U 経常費用
1 事業費 100,000,000 円
2 管理費 30,000,000 円
費用合計 130,000,000 円
(うち、課税売上にのみ要する課税仕入れ 21,600,000円、課税売上と非課税売上に共通する課税仕入れ 32,400,000円、非課税売上にのみ要する課税仕入れ32,400,000円)


経常費用の中で、税抜きで8千万円が課税仕入れという事例です。


2.特定収入割合


特定収入割合の分子は、1千万円(受取会費)+8百40万円+2百16万円の合計で、2千80万円です。

分母は、2千80万円に課税売上5千万円と非課税売上5千万円を足して、1億2千80万円になります。

2千80万円÷1億2千80万円=17.219%で、5%を超えるため、特例計算が必要です。



3.特例計算前の消費税の計算

課税標準額に対する消費税額は、5千万円×6.3%=315万円です。

特例計算前の課税仕入れ等に対する消費税額は、2千万円×6.3%+3千万円×6.3%×50%(課税売上割合)=220万5千円です。

このまま通常の計算をしたら、945,000円の納付です。

しかし、課税仕入れ等に対する消費税額の220万5千円は全額を控除することはできません。

課税仕入れ等に対する消費税額の220万5千円の中から、対価性のない収入を原資にしていると考えられている部分は仕入税額控除から除外します。


対価性のない収入を原資にして行われる課税仕入れは、補助金を原資にしているソフトウエア及び通勤費の課税仕入れと、受取会費を原資にして行われる課税仕入れです。

ソフトウエアは、課税売上にのみ使われる課税仕入れになりますので、全額が課税仕入れに係る税額からカットされます。

通勤費は、課税売上と非課税売上に共通する課税仕入れになりますので、その税額に課税売上割合を乗じた金額が、課税仕入れ等に係る税額からカットされます。

受取会費を原資にしている課税仕入れは正確にはわかりませんので、調整割合が使われます。


4.特定収入に係る課税仕入れ等の税額

課税仕入れ等から控除される、特定収入に係る課税仕入れ等の税額は、以下の合計額になります。

@ 課税売上にのみ使用される課税仕入れ等に使途が特定されている特定収入×6.3/108

A課税売上と非課税売上に共通して使用される課税仕入れ等に課税仕入れ等に使途が特定されている特定収入×6.3/108×課税売上割合

B (調整前の仕入控除税額−(@+A))×調整割合


@は、今回の場合には、ソフトウエアを購入するための補助金ですので、下記になります。

800万円×6.3%×=504,000円


この504,000円は、全額課税仕入れ等からカットされます。

Aは、200万円×6.3%×50%=63,000円


Bは、調整割合をまず、計算します。

分子は、1千万円(受取会費=使途不特定の特定収入)です。

分母は、1千万円に課税売上高5千万円と非課税売上高5千万円を足した1億1千万円です。

従って、調整割合は、1千万円/1億1千円になります。

従って、Bは、以下の計算になります。

(2、205,000円−(504,000円+63,000円))×1千万円/1億1千円=148,909円です。

特定収入に係る課税仕入れ等の税額は、ソフトウエア購入するための補助金に対する税額である504,000円(@)と、通勤費に充てるための補助金に対する税額に課税売上割合を乗じた63,000円(A)と、それ以外の課税仕入れ等の税額に調整割合を掛けた148,909円(B)の合計である715,909円になります。



5.納付税額

控除対象仕入税額は、2,205,000円−715,909円=1,489,091円になります。

従って、納付税額は、3,150,000円−1,489,091円=1,660、900円(百円未満切り捨て)になります。

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コメント
特定収入割合は、原則として会計上の収益として計上している金額を下にして計算しますので、繰越金は関係がありません。

つまり、会費収入が余ったとしても、それは、特定収入割合には関係がないということになります。

Posted by: 脇坂 誠也  at 2023年03月27日(Mon) 18:23

先生の動画で勉強しています。
特定収入割合を計算する際、会費収入で得た繰延金については会費としてとらえて計算すればよろしいのでしょうか。
毎年の会費がきれいになくなることは、実際にはなく、次年度の事業のために必ず繰越金をもって次年度に入っているのが実情です。繰越金を全額会費と認識すればよいのか、それとも前年度繰越金と次年度繰越金の差額が今年度会費収入として実際に活用した金額になると思われるので差額でよいのか悩んでいます。
Posted by: オガワ ミツナガ  at 2023年03月27日(Mon) 16:23