2019年05月31日(Fri)
特定収入の特例(特定収入割合)
NPO法人等の消費税見ています。
特定収入に係る仕入税額控除の特例について見ています。 まず、「特定収入とは何なのか」を見ています。 特定収入=対価性のない収入−消費税施行令75条1項で定める収入 であり、特定収入から除かれる対価性のない収入だが、特定収入にならない施行令75条1項で定める収入が何なのかを見てきました。 今回は、「で、具体的に特定収入とはどんなものなのか?」ということを見たうえで、特定収入割合について見ていきます。 |
1.特定収入とは 特定収入=対価性のない収入−消費税法施行令75条1項で定める収入です。 具体的には、消費税法基本通達16-2-1に記載されています。 16−2−1 法第60条第4項《国、地方公共団体等に対する仕入れに係る消費税額の計算の特例》に規定する「特定収入」とは、資産の譲渡等の対価に該当しない収入のうち、令第75条第1項各号《特定収入に該当しない収入》に掲げる収入以外の収入をいうのであるから、例えば、次の収入(令第75条第1項第6号《特定収入に該当しない収入》に規定する特定支出のためにのみ使用することとされているものを除く。)がこれに該当する。 (1) 租税 (2) 補助金 (3) 交付金 (4) 寄附金 (5) 出資に対する配当金 (6) 保険金 (7) 損害賠償金 (8) 資産の譲渡等の対価に該当しない負担金、他会計からの繰入金、会費等、喜捨金等 このうち、(1)租税、(3)交付金、(7)のうち他会計からの繰入金は、NPO法人等には関係がありません。 (5)の配当金、(6)保険金は、ありえますが、株式を対象に保有する財団法人などを除けば、それほど大きな金額になることはないかと思います。 そうすると、NPO法人等としては、特定収入の中心になるのは、(2)補助金、(4)寄付金、(7)会費などになるかと思います。 また、助成団体からの助成金も特定収入になります。 2.特定収入割合 特定収入に係る仕入税額控除の特例の計算は、特定収入割合が5%以下である場合には、この特例を使う必要がなく、通常の計算方法によって算出した仕入控除税額の全額をその課税期間の仕入控除税額とします。 課税売上割合が95%以上だと課税仕入れの全額を仕入税額控除できるのと似ていますね。 特定収入割合は、その課税期間中の特定収入の合計額をその課税期間中の税抜課税売上高、免税売上高、非課税売上高、国外売上高及び特定収入の合計額の総合計額で除して計算します。 特定収入割合=特定収入の合計額/(課税売上高(税抜き)+免税売上高+非課税売上高+国外売上高+特定収入の合計額) 寄付金や助成金はほとんどなく、会費が数十万円程度あるくらいのNPO法人等の場合は、特定収入割合が5%以下になるケースが多いと思いますので、そのような法人は、特例計算の必要がありません。 一方で、会員が多く、受取会費が多かったり、寄附金や助成金をたくさん受けているような法人は、特例計算をする必要が出てくる可能性があります。 ただし、免税事業者や簡易課税制度を選択している事業者は、この特例の計算は必要ないことは、以前に述べました。 https://blog.canpan.info/waki/archive/858 3.特定収入割合を計算する際の注意点 特定収入割合の計算で、いくつかの注意点を述べます。 @分母の金額には、課税売上だけでなく、免税売上、非課税売上、さらには国外売上も含みます。 特に国外売上は注意が必要です。 国外売上は、消費税の計算では、通常、課税の対象外という扱いをしますが、これは、対価性がないからではなく、消費税が「国内における資産の譲渡等」に該当するからです。 従って、国外売上は、課税対象外の収入ですが、特定収入にはならず、特定収入の分母には算入されます。 A分母では、売上に係る対価の返還等を売上高から控除する計算は行いません。 B分母では、有価証券の売却収入の5%を非課税売上とする調整計算は行いません。 C特定収入から除かれる消費税法施行令75条1項の収入及び資産受贈益は、分母にも分子にも含まれません。 以前、私が税務調査を受けた際に、担当官が、消費税法施行令75条1項の収入が特定収入から除かれることを知らず、「補助金の割合が5%を超えているのに、なぜ特例計算をしていないのですか?」と聞かれたことがあります。 特定支出に使途が特定された受取補助金等を特定収入から除くことをしておかないと、そもそも特例計算をしなくてもいいのに、特例計算をしてしまう、という間違いを起こしてしまう可能性があります。 |