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«その他の事業が赤字の場合 | Main | 「その他の事業」のNPO法人会計基準での取り扱い »

2019年03月13日(Wed)

その他の事業の利益を全額繰り入れること
内閣府のホームページあるNPO法のQ&Aを解説しています。

https://www.npo-homepage.go.jp/qa

「その他の事業」について書かれた、1-3-5を取り上げていますが、このQ&Aに関連して、東京都の運用方針について、書いています。

今回、取り上げる運用方針は、東京都の運用方針の7ページ目にある、下記のもので、「その他の事業の利益が特定非営利活動に係る事業会計に全額繰り入れられている」ということを求めるものです。

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/houjin/npo_houjin/laws/files/0000001200/shin-guideline2904.pdf

東京都以外の所轄庁でも、その他の事業の利益は全額特定非営利活動に繰り入れる決算書になっていないと、指導監督が入るケースがあると聞いていますが、私は、この運用方針はとても問題があると思うので、取り上げたいと思います。


青字が運用方針です。

イ 利益

<運用上の判断基準>

@認証基準

その他の事業の利益は、設立当初の事業年度(又は定款変更の日の属する事業年度)及び翌事業年度ともに特定非営利活動に係る事業会計に全額繰り入れられていること。

A報告徴収等の対象となり得る監督基準

その他の事業の利益が、特定非営利活動に係る事業会計に全額繰り入れられていない場合


<説明>
NPO法人は、特定非営利活動を行うことを「主たる目的」とした法人であり、その他の事業の「利益」については、「特定非営利活動に係る事業のために使用しなければならない」(法第5条第1項)とされています。

したがって、その利益は、当然に特定非営利活動に係る事業の実施のために使用する必要があることから、特定非営利活動に係る事業に全額繰り入れることが必要です。



<解説>

「その他の事業の利益を特定非営利活動に係る事業のために使用しなければならない」のは法律の要請(NPO法5条1項)であり、異論はありません。

「その利益が特定非営利活動に係る事業の実施のために使用される必要がある」というところも問題ないです。

問題は、「特定非営利活動に係る事業に全額繰り入れることが必要です」というところです。

つまり、運用指針ではその他の事業の利益は、その事業年度に全額特定非営利活動に繰り入れて、その他の事業で利益が生じないようにしないといけない、と言っています。


しかし、これは、ちょっと無理があると思うのです。

もし、特定非営利活動に係る利益を、その事業年度に全額繰り入れることが必須であるとすると、その他の事業の次期繰越正味財産が0円になるということです。

所轄庁の方のイメージは、その他の事業の貸借対照表の金額はすべて0円ということのようなのですが(以前、モデルケースとしてみたことがあります)、その他の事業の正味財産が0円になるのは望ましくないケースも多々あります。

以下、思いつく例をあげます、

@ 事業を行う場合には、運転資金が必要です。

3月決算で、4月1日の現預金が0円では、事業ができません。

その他の事業の利益を毎年すべて特定非営利活動に入れてしまったら、その他の事業を現実に運営していくことができないケースも考えられます(というか、普通考えれば、運営できません)。

事業を継続していくうえで当然に必要な資金は、その他の事業で持っておくことが必要であり、それを否定してしまっては事業ができません。



A その他の事業が物品販売で、在庫を持つような事業の場合には、利益を全額特定非営利活動に入れてしまっては、在庫分の資金がなくなってしまいます。


例えば、200万円で仕入れをし、今期に300万円売れたが、在庫がまだ50万円残っていれば、事業収益300万円、売上原価は、150万円(仕入200万円−在庫50万円)で、その他の事業の利益は150万円です。

現金は、300万円−200万円=100万円しかありませんので、150万円を繰り入れることはできません。

どうしても繰り入れるとしたら、150万円を繰り入れたうえで、特定非営利活動からその他事業にお金を貸すことでしかできず、こんなことは法律が求めることとは思えません。

B 不動産の寄付を受けて、それを賃貸不動産として運用し、その運用益を特定非営利活動に充てているというケースも考えられます。

その場合に、その他の事業の利益の全額を繰り入れるということがどんなことをイメージしているのか、私には理解ができません。

建物であれば、減価償却費を計上しますが、減価償却費は、キャッシュの出ない費用であり、利益の全額を繰り入れても、減価償却分のキャッシュはその他の事業に残ります。


通常の商売であれば、この減価償却分のキャッシュは、次の投資に使われるということを想定しているのですが、NPOで、その他の事業の利益を次の投資に使うための貯えるというのは、違和感があるし、そもそも「その他の事業の利益は特定非営利活動に係る事業のために使用しなければならない」という法律の趣旨にも合いません。

減価償却分も特定非営利活動に繰り入れて、その他の事業は赤字になる、というのがむしろ法律の趣旨に合うと思いますが、このような経理をすると、所轄庁から「その他の事業が赤字だからダメだ」と指導監督が入る可能性があるように思います。


2017年12月のNPO法人会計基準の改正で、その他の事業がある場合の様式を改正したのは、このように、その他の事業の全額を特定非営利活動に繰り入れることができないケースも想定され、それに対応するための改正でした。

次回は、NPO法人会計基準の改正内容についてみていくことにします。


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