2019年03月08日(Fri)
一般社団法人の基金
一般社団法人に「基金」という制度があります。
私も今まで、この「基金」の制度を使った法人に関与したことはなかったのですが、最近、基金を使いたいという法人があったので、この一般社団法人の「基金」について、考えていきます。 |
1. 基金とは
一般社団法人の「基金」について、法務局のQ&Aでは、以下のように紹介されています。 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html#23 「基金」とは,一般社団法人に拠出された金銭その他の財産であって,当該一般社団法人が拠出者に対して法及び当該一般社団法人と当該拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務を負うものとされています。 基金は,一種の外部負債であり,基金の拠出者の地位は,一般社団法人の社員たる地位とは結び付いていません。 そのため,社員が基金の拠出者となること自体はもちろん可能ですし,社員が基金の拠出者にならないこともできます。 基金制度は,剰余金の分配を目的としないという一般社団法人の基本的性格を維持しつつ,その活動の原資となる資金を調達し,その財産的基礎の維持を図るための制度です。 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律では,基金制度の採用は義務付けられておらず,基金制度を採用するかどうかは,一般社団法人の定款自治によることとなります。 また,基金として集めた金銭等の使途に法令上の制限はなく,一般社団法人の活動の原資として自由に活用することができます(なお,一般財団法人には基金の制度は設けられていません)。 2. 基金の性格 上記の法務局の説明から、一般社団法人の「基金」の性格について考えていきます。 @ 「基金」は、一般社団法人に拠出された金銭やそれ以外の財団だが、寄付でもらったものではなく、返還義務があります。 一般的に「●●基金」というと、資産(借方)の概念であることが多く、特定の目的や特定の人から寄付で受け取って、預貯金等を分別管理しているものであるケースが多いのですが、一般社団・財団法でいう「基金」はこれとは違い、返還義務がある負債であり、貸方の概念(どのような形で資金調達をしたのか)です。 A 基金を拠出することと、一般社団法人の議決権は結びついておらず、その意味では、議決権と結びついている、株式会社の「資本金」とも違います。 B それでは、どのような場合に、この基金が利用されるかというと、「剰余金の分配を目的としないという一般社団法人の基本的性格を維持しつつ,その活動の原資となる資金を調達し,その財産的基礎の維持を図るための制度です。」と書かれており、株式会社のような「資本金」という制度がない一般社団法人が、ある程度まとまったお金を資金調達するための方法として位置づけられています。 C このQ&Aには書かれていませんが、「基金」のもう一つの特色として、会計上は、「負債の部」には計上されず、正味財産としての扱いをすることです。 これは、「基金」が劣後債務であるため、その経済的特性に着目したためといわれています。 3. 基金が使われるケース このような性格を持つ「基金」がどのような場合に利用される可能性があるのか、考えてみたいと思います。 (1) 拠出者が望む場合 拠出者が「基金」として拠出することを望む場合を考えてみます。 おそらく「基金」という形で拠出することを望むのは、ある程度まとまった資金を拠出する企業であるケースが多いのではないかと思います。 なぜ、まとまった資金を拠出する企業が「基金」で出すことを望むのか、というと、次の理由が考えられるのではないかと思います。 @ 「寄付金」という形で拠出することは、会社にとって、費用計上することであり、大きな金額を出す場合には、かなり明確な理由がないと、通りにくい。 「基金」であれば、拠出者にとっては、将来返済される可能性があるので「資産」であり、財務諸表上も投資有価証券などと似たような扱いになり、出しやすいケースがある。 A 「基金」ではなく「貸付金」という形にしてしまうと、利息を取らなければいけないことや、返済計画などの説明も求められ、一般社団法人へお金を貸し付けるということは、やりにくい。 (2)一般社団法人側が望む場合 @ 一般社団法人側は、基本的には「寄付金」と受け取ることを望むでしょうが、「寄付金」だと出せる金額が限られるが、「基金」だと出せる金額が大きくなる、と拠出者から言われる場合も考えられると思います。 そのような場合には、「基金」は負債とはいえ、劣後債で、当分の間は返済することは求められないので、それなら「基金」で受けようというケースもあるのではないかと思います。 A 「基金」は貸借対照表では「正味財産」に分類されるので、金融機関からの借入などをおこなう一般社団法人にとっては、「長期借入金」などの負債で受けるよりも、貸借対照表の数字が良い数字になり、お金も借りやすくなるのではないか、と思います。
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