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2019年01月18日(Fri)

助成金を受けている場合に貸借対照表を分ける必要があるか
Q:助成団体から助成金を受けています。

助成団体からは、助成金の支給を受けた部分は、会計を分けて経理することを求められています。

その場合には貸借対照表も助成金の会計を分けて作成する必要があるのでしょうか?


A:活動計算書を2つの事業に分けて経理することは、それほど難しくはありませんが、貸借対照表を2つに分けて作成することは、非常に高度な知識と手間が必要であり、難易度が高くなります。

助成団体が貸借対照表の区分をどの程度求めているのかを、助成団体から発行されている会計処理の手引きを見たり、助成団体に直接問い合わせるなどして、確認したうえで貸借対照表を作成することをお勧めします。



<解説>

助成金の支給を受ける際には、助成団体に、その助成金の使途についての報告が求められます。

その際に、どのような報告を求められるのかは、その助成団体によります。

助成金の支給を受ける預金口座を、通常使う預金口座とは分けて作成することを求められるケースもあるかと思います。

助成金に関わる収入、支出は、その口座を基本的に使うことを求められることもあるかと思いますが、すべての収入、支出を1つの口座だけで完結することは難しいのではないでしょうか。

例えば、助成金に関わる事業とそれ以外の事業の両方に関わっていた職員に給与を支払った場合に、給与を2つの預金口座から支給することは現実的ではありません。

かといって、1つの預金口座から支払った場合に、貸借対照表を分けて会計処理をするためには、非常に高度な会計処理が必要になります。

NPO法人会計基準でも、貸借対照表を区分することがいかに難しいのかを、Q&Aの23-2で紹介しており、NPO法のその他の事業を行う場合でも、貸借対照表の区分経理は任意としています。

http://www.npokaikeikijun.jp/guideline/qa/q23-2/

助成団体も、収支を区分することを求めているのであり、貸借対照表を厳密に区分することまで求めていないケースが多いのではないかと思います。

例えば、財産目録に、現金や預金の内訳を記載し、その内訳に助成事業の現金、預金は明示するという方法で、許容されるケースも多いのではないかと思います。

 例えば、以下のような感じです。

<財産目録>
 現金
  現金(一般会計)  ×××
  現金(●●助成事業)×××
 普通預金
  みずほ銀行(一般会計)    ×××
  三菱UFJ銀行(●●助成事業) ×××


とにかく、貸借対照表を区分して経理することは、複雑で、事務処理も増大し、間違いも起こりやすくなりますので、できるだけ避けるべきかと思います。

以下、NPO法人会計基準のQ&A23-2を掲載します。

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23-2 その他の事業を実施している場合でも、貸借対照表は区分をしなくてもよいですか?


A NPO法人会計基準では、その他の事業を行っている場合には、活動計算書は区分して表示しますが、貸借対照表を区分して表示するかどうかは、法人の任意となっています。

 その理由は、貸借対照表も区分するとなると実務的には相当複雑になり、財務諸表を作成するNPO法人にとって事務負担が増大するからです。

また、間違った会計処理にもとづく区分や、恣意的な区分がなされた貸借対照表は、利用者にとってかえって分かりにくいものとなる可能性もあります。

 その他の事業を実施している場合に、貸借対照表を区分表示するには、会計処理がどれくらい複雑になるかを、以下の設例でみてみましょう。

設例 消耗品費50,000円を現金で支払った。内訳は以下の通り。
(1)特定非営利活動 35,000円
(2)その他の事業   15,000円
○貸借対照表を区分しない場合の会計処理
特定非営利活動:
(借)消耗品費 35,000
(貸)現金預金 50,000
その他事業:
(借)消耗品費 15,000

○貸借対照表を区分する場合の会計処理
 (50,000円は特定非営利活動会計で支払い、後日、その他の事業会計と精算する方法)
・支払い時
《特定非営利活動会計》
(借)消耗品費
35,000
(貸)現金預金
50,000
(借)その他の事業会計
15,000


《その他の事業会計》
(借)消耗品費
15,000
(貸)特定非営利活動会計
15,000
・資金の清算時
《特定非営利活動会計》
(借)現金預金
15,000
(貸)その他の事業会計
15,000
《その他の事業会計》
(借)特定非営利活動会計
15,000
(貸) 現金預金
15,000

 このように、貸借対照表を区分表示する場合には複雑な会計処理が必要になります。
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