• もっと見る

«田中弥生先生の講演V | Main | NPOの役員報酬(法人税)»

2007年01月30日(Tue)

NPOの役員報酬
 昨日、NPO支援東京会議でNPOの人件費について、NPO会計税務専門家ネットワークの赤塚和俊氏を講師に迎えての定例勉強会が行われました。
 その内容に基づいてNPO人件費について、まとめたいと思います。

 テーマは大きく分けると、NPOの役員に対する人件費と、職員又はボランティアに対する人件費の問題です。
 最初に役員の人件費の問題について、何回かに分けてまとめたいと思います。

 なお、今回のテーマでは、講演再現録というよりは、講演を受けて私が自分なりにまとめたものになっています。



人気ブログランキングに参加しています。応援クリックお願いします






1. 役員に対する人件費で何が問題になるか 

 役員に対する人件費で問題になるのは以下の2点です

@ 役員に対する人件費がNPO法上の役員報酬になるのか

A 法人税の申告をしている場合に、役員に対する人件費が損金(経費)になるのか


2.NPO法上の役員報酬について問題となる点
 
 NPO法上の役員報酬について、なぜ問題になるのかというと、NPO法で「役員のうち報酬を受ける者の数は役員総数の1/3以下でなければならない」(NPO法第2条2項1号ロ)とあるからです。

 つまり、理事3名、監事1名のNPOの場合に、役員報酬を支払える役員(理事と監事を合わせて役員といいます)は1名だけです。

 しかし、理事は3名とも毎日NPOに来て仕事をしているということもあります。
 このような場合に、役員に支払う人件費のうち役員報酬とされる金額をどう考えればいいのか、ということが問題となります。

 もし役員に対する人件費を全額役員報酬としてしまえば、働いている理事に給与を支払えないことになってしまうからです。



3.法人税法上の役員報酬(役員給与)

 法人税については、平成18年度の税制改正で、役員に対する給与は定期同額であるか事前に届出をしている場合に限り損金に算入できるというように変更になりました(利益連動というのもありますが、NPOには適用されないのでここでは考慮しません)。

 法人税の申告をしているNPOにとっては、役員に対する人件費が損金に算入される(つまり、法人税を計算する上で経費にできる)かどうかは、大問題です。

 従って、どのような場合に役員に対する人件費は損金として認められるのか、あるいは認められないのかをしっかりと把握しておくことが必要になるのです。



4. NPO法上の役員報酬と労務対価 

 最初に、NPO法上の、役員報酬と労務の対価としての給与の違いを考えてみることにします。

 役員報酬とは、「役員(理事、監事)」という地位や職務に対する報酬のことで、労務の対価とは違います。
 例えば、1月間に全く出勤していないものに役員報酬が支払われることもありえるわけです。
 労務の対価であればこのようなことはあり得ません。

 NPO法で「役員報酬の支給額は役員総数の1/3以下でなければならない」という場合の「役員報酬」は、あくまで役員という地位に対する報酬のことです。
 従って、理事に対する支払いであっても、その理事が他の職員と同じような基準で労働の対価として給与を得ているような場合には、NPO法では、役員報酬とならず給与であると考えます。
 
 この規定がある理由は、「法人の目的が非営利であるという要件を実質的に担保するために設けたものと解釈できる。非営利(=剰余金の分配の禁止)という要件を、役員に対する給与(賞与)という形で脱法的に運用されることを防止するために規定した要件である」(NPO法コンメンタール 日本評論社 P90)ということです。

 NPOは利益の分配が禁止されています。
 利益の分配は営利企業では「配当」という形で行われますが、NPOでは配当をすることはあり得ません。
 しかし、形を変えて実質的な利益の分配をすることも考えられます。
 その典型が「役員報酬」という形で行われる場合の利益の分配です。
 この規定は、法人の運営が利益の分配に傾くことのないように制限したものです。
 
 従って、役員報酬という形でなくても、(例えば役員に対する過大な家賃の支払など=日本スケート連盟の事件)実質的な利益の分配になるものはNPOでは禁止されています。
 
 逆に言えば、役員に対する家賃や役員の関連会社への外注費など、NPO内部の人に対する支払いは、実質的な利益分配につながる可能性があり、不正支出にもつながりやすいものです。
 
 このようなものは「内部取引」「利益相反取引」と言われるようなものです。
 
 お手盛りでなく、理事会の決議などを得た上で支出することが望ましいでしょう。

トラックバック
ご利用前に必ずご利用規約(別ウィンドウで開きます)をお読みください。
CanpanBlogにトラックバックした時点で本規約を承諾したものとみなします。
この記事へのトラックバックURL
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
トラックバックの受付は終了しました

コメントする
コメント
ありがとうございました

修正しました

Posted by: 脇坂 誠也  at 2012年07月25日(Wed) 09:34

まだ訂正されていないようです。「役員報酬の支給額」は「役員のうち報酬を受ける者の数」と訂正すべきではありませんか?

条文は、下記のとおりです。
「役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること。」
Posted by: 一色忠彦  at 2012年03月25日(Sun) 11:34

2.NPO法上の役員報酬について問題となる点
 
 NPO法上の役員報酬について、なぜ問題になるのかというと、NPO法で「役員報酬の支給額は役員総数の1/3以下でなければならない」(NPO法第2条2項1号ロ)とあるからです。

上記の「 」内の文面は人数について規定されたものではなかったでしょうか?
Posted by: dush  at 2011年05月03日(Tue) 18:34

CBaさん

ありがとうございました

訂正しておきました

Posted by: 脇坂 誠也  at 2007年06月28日(Thu) 06:56

「利益相反取引」ですね。
Posted by: CBa  at 2007年06月17日(Sun) 17:55