1.はじめに最近、ある一般社団法人(非営利型)に顧問税理士として、関与することになりました。
その一般社団法人は、講習会を開催して参加者から受講料をもらう、という活動と、会員からの会費(正会員の会費、一般会員の会費、特別会員の会費がある)をいただき、定期的にメールや会報等で情報提供をするという活動をしています。
普及啓発型の一般社団法人によくあるケースではないか、と思います
この法人が、講習会の受講料部分を収益事業、会費部分を非収益事業として法人税の申告をしており、非常に複雑な経理をしているため、その経理方法についてのアドバイスを求められたのが、関わるきっかけでした。
最初にこの話を聞いた時に、そもそもこの受講料を収益事業としているが、その処理が正しいのか?という疑問を持ちました。受講料が収益事業でなければ、複雑な経理も必要なくなりますし、法人税の申告も不要なくなります。
そこで、まず、研修会、講習会等の受講料が収益事業になるのか、ということについて見ていきます。
2.収益事業とはNPO法人や、非営利型の一般社団法人、一般財団法人は、法人税法上は収益事業課税が適用されます。
収益事業は
、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続的に事業場を設けて行われるものいう」(法人税法2条13項)と定義されています。
従って、収益事業に該当するかどうかの要件は、以下、@~Bになります。
@ 政令で定める事業(34事業)としての性質を有すること
A 継続して行われる規模であること
B 事情場を設けて行われる規模であること
今回は、AとBの要件は満たしているという前提で、@について、検討していきます。
3.34事業と講習会の受講料について @ でいう、政令で定める34事業は、以下の事業になります。
(1)物品販売業 (2)不動産販売業 (3)金銭貸付業 (4)物品貸付業 (5)不動産貸付業 (6)製造業 (7)通信業 (8)運送業 (9)倉庫業 (10)請負業 (11)印刷業 (12)出版業 (13)写真業 (14)席貸業 (15)旅館業 (16)料理飲食業 (17)周旋業 (18)代理業 (19)仲立業 (20)問屋業 (21)鉱業 (22)土石採取業 (23)浴場業 (24)理容業 (25)美容業 (26)興行業 (27)遊技所業 (28)遊覧所業 (29)医療保健業 (30)技芸教授業 (31)駐車場業 (32)信用保証業 (33)無体財産権の提供業 (34)労働者派遣業
このうち、研修会や講習会の受講料で問題になるのが、(30)の技芸教授業です。
「技芸教授業」とは、@「技芸の教授」、A「学力の教授」、B「公開模擬学力試験」を行う
事業をいいます。
そして、@の「技芸」は次に掲げる22の技芸に限定されています。
(1)洋 裁(2) 和 裁(3)着物着付け(4)編 物(5)手 芸(6)料 理(7)理 容(8)美 容(9) 茶 道(10)生 花
(11)演 劇(12)演 芸(13)舞 踊(14)舞 踏(15)音 楽(16)絵 画(17)書 道(18)写 真(19) 工 芸(20)デザイン(21)自動車操縦(22)小型船舶操縦
従って、
研修会や講習会の内容が、この22の技芸に該当するものであれば収益事業、そうでなければ収益事業にならない、ということになります。
私が相談を受けた一般社団法人は、講習会が上記の22に該当する技芸の教授ではありませんでした。
税務署でも確認をし、法人税法上の収益事業ではないことについて、税務署からも了解が取れました。
なお、消費税は、対価性のある収益ですので、課税対象になります。
4.資格認定事業は
この一般社団法人が、研修会や講習会を開催する以外に、資格認定制度を作り、その認定料を徴収している場合にはどのような扱いになるでしょうか。
資格認定制度など技芸の教授に関する免許の付与について、以下の通達があります。
法人税基本通達15−1−66
令第5条第1項第30号《技芸教授業》の「技芸の教授」には、自らは技芸の習得に関する教授を行わないで同号に規定する技芸に関する免許の付与等のみを行う行為が含まれるが、同号に規定する技芸以外の技芸に関する免許の付与等はこれに該当しないことに留意する。
(注)
1 同号の「免許の付与その他これに類する行為」には、卒業資格、段位、級、師範、名取り等の一定の資格、称号等を付与する行為が含まれる。
2 同号に規定する技芸の教授若しくは免許の付与等の一環として、又はこれらに付随して行われる講習会等は、たとえ一般教養の講習をその内容とするものであっても、同号の「技芸の教授」に該当する。
従って、
技芸教授業の「技芸」(22の限定列挙)に該当する資格の認定の場合には収益事業になりますが、技芸教授業の「技芸」に該当しないものに関する資格の認定の場合には収益事業になりません。