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2012年06月28日(Thu)

活動計算書の作り方(エクセルで作成する場合)
今年の4月1日からNPO法が改正され、活動計算書がNPO法人が提出する会計書類となりました



従来の収支計算書から活動計算書に変わると実務上どのように変わるのか、多くの方が悩まれていると思います


NPO会計道では、3回にわたって、どのような変更が必要なのかを、「営利企業用の会計ソフトを使っている場合」「NPO法人用の会計ソフト(ソリマチ 会計王)を使っている場合」「エクセルで会計処理をしている場合」の3つに分けて触れていきたいと思います



前回は、「営利企業用の会計ソフトを使っている場合」を見てきましたが、今回は、「エクセルで会計処理をしている場合」について、見ていきたいと思います


具体的には、日々の現金出納帳や預金出納帳をエクセルで記帳し、それを勘定科目ごとに集計して、決算で活動計算書(従来であれば収支計算書)を作成するというやり方です


私の経験でいえば、このやりかたで帳簿をつけているNPO法人が一番多いのではないかと思います


このやり方で、何が問題で何が問題でないのか、活動計算書を作成する場合において、このやり方だと、どのようなことがネックになってくるのかについて書いていきたいと思います




1. 正規の簿記の原則とエクセル方式


NPO法の第27条では、「会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること」とあります。


「正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること」とはどんな記帳方法ででしょうか?


NPO法の「正規の簿記の原則」については、NPO法成立時の国会答弁で、以下のようなものがあります


「「正規の簿記の原則」とは、一般論で申しますれば、企業会計原則で確立した概念として用いられておりまして、会計記録の正確性を期する上に必要な基準となるべき記録計算方法についての原則であって、内容的に少なくとも次の三つが含まれているというふうに解されております


@ その第一は、取引記録が客観的に証明可能な証拠によって作成されていること。


A 第二は、記録計算が正確に行われ、かつ、順序、区分などが体系的に整然と行われていること


B 第三は、取引記録の結果を総合することによって、簿記の目的に従いまして企業の財政状況及び経営成績あるいは財産管理の状態などを明らかにすることができる財務諸表が作成できること


以上の三つの内容を充足するものであれば、複式簿記はもちろんでありますが、単式簿記でも正規の簿記の原則にかなうものと解されるものでございます


したがいまして、本法案では単式簿記を排除するものではございません」



ここで、@については、取引を証明する領収書などがちゃんと揃っていること、ということですので、これは当然のこととしていいでしょう


AとBが何を意味するのでしょうか?


Aの「記録計算が正確に行われ、かつ順序、区分などが体系的に整然と行われていること」ですので、エクセルで作成した場合にも、日々の取引が発生した日付順で、勘定科目に分けられてきろくされており、計算も正確に行われている必要があります


そして、Bでは、「取引記録の結果を統合することによって財務諸表が作成できること」とあります


ここで問題は、「取引結果を統合する」ことがどのようにして行われているのか?ということです


エクセルで記帳している方でよく見るケースが、現金出納帳や預金出納帳には勘定科目が入っているのだが、その勘定科目の金額をどのように統合して収支計算書や貸借対照表の金額がでてきているのかがわからないものです


エクセルに計算式などが入っており、いろいろなシートに飛んだあとに集計されているようなのですが、作成した本人以外はどのように数字が飛んできているのかがわからない、印刷して一覧で見てもわからないものです


これは、「取引結果を統合して財務諸表が作成された」ということが非常にわかりにくいもので、私も今までNPO法人の監査や帳簿のチェックで、このパターンの会計処理をしているところについて取引が確認できず、非常に苦労した経験があります。



「取引結果を統合して財務諸表の作成」につなげる帳簿として、「総勘定元帳」があります


「総勘定元帳」とは、勘定科目ごとに、いつ、どのような取引が、いくら生じたのが一覧でわかるものです


この「総勘定元帳に相当するものがない」ということは、現金出納帳や預金出納帳などから最終的に財務諸表の数字にどのようにつながっているのかがわからない(わかりにくい)ということです


逆に言うと、エクセルで記帳している場合でも、家計簿方式(専門用語では「多桁式現金出納帳」)のように、勘定科目ごとに横に展開していき、勘定科目ごとの金額を毎月集計し、そのトータルが財務諸表の数字になっている、といったような場合には、総勘定元帳に相当する帳簿があると言えますので、NPO法の正規の簿記の原則は満たしているのではないかと思います(これを、この後、「多桁式出納帳方式」と呼ぶことにします)。


認定NPO法人になるための要件の中に、「帳簿書類の備付け、取引の記録及び帳簿書類の保存について青色申告法人に準じて行われていること」というものがあります。


今までの国税庁の認定の調査でも、エクセルで記帳し、計算式を入れて集計しているような場合には、総勘定元帳に相当するものがないと判断され、「取引の記録が青色申告法人に準じて行われていない」とされ、ここで要件をクリアできないという法人もあります


つまり、会計基準の導入や活動計算書になるという以前の話として、エクセルで記帳している法人について、この計算式をいれて集計するというやり方自体に問題があるので、このような方法をしている法人にはついては、改善の必要があります


2. エクセル方式(多桁式出納帳方式)で問題がないところ 


 エクセル方式(多桁式出納帳方式)でも問題ないところはどのようなところでしょうか?


 事業が一つで、勘定科目がそれほど多くなく、現金や預金以外に資産や負債がないところでは、エクセルで、多桁式出納帳方式で作成する場合には問題ないと思います。


 それ以外のところは、このエクセル方式だとどんな問題があるでしょうか?


@ 複数の事業を行っていたり、勘定科目がたくさんある場合には、この「多桁式出納帳方式」だと、横が長くなってしまい、記帳するのも大変ですし、印刷するときに、同じ日の取引が複数枚に渡ってしまい、とても見にくくなります。

 勘定科目が少なく、印刷したときにも1枚に収まるくらいのところであれば問題ないと思いますが、それ以上に渡るところはこの方式はふさわしくないと思います


A 現金や預金以外に資産や負債がない場合には、現金出納帳と預金出納帳をエクセルで作成するだけで決算書の数字までつながります


 しかし、現金や預金以外に資産・負債がある場合、例えば未払金を計上したり、借入金を計上したりしている場合には、未払金や借入金がどのように増えたのか、減ったのか、その結果貸借対照表に計上されている金額とどのようにつながっているのかがわかるようにしなければいけません


これをエクセルで全部作成するのは、非常に難しいと思います


NPO法人の中には、活動計算書(従来でいえば収支計算書)の勘定科目や、貸借対照表の金額でも現金や預金は、エクセルで集計してでてきていても、現金預金以外の貸借対照表に計上されている金額の動きはどこにも明らかにされていないという場合が多いのではないかと思います


これは、NPO法でいう、「取引記録の結果を統合することによって財務諸表が作成できること」というところに該当しないのではないかと思います


従って、現金預金以外の資産・負債があるようなところや、事業が複数行っていたり勘定科目がたくさんあるような法人では、エクセルで会計帳簿を作成することには限界があり、会計ソフトを導入することをお勧めします


 

3. それでもエクセルでやる場合
 

 現金預金以外には重要な資産・負債がない場合で、勘定科目数などが少ない場合には、エクセルで現金出納帳と預金出納帳を多桁式出納帳方式で記帳することは可能と思います。その場合に、会計基準導入によってどのような変化が出てくるでしょうか?


 「現金預金以外には重要な資産・負債がない」というのは、会計基準の「実務担当者のためのガイドライン」の記載例1に載せているようなパターンで、このパターンの場合には、活動計算書といっても実質的には現金主義の収支計算書と同じであり、会計処理には従来とは何も違いはありません


 違うのは、勘定科目の体系で、従来は、事業費について「○○事業」など事業名で計上していた場合が多かったと思いますが、会計基準では、事業費も形態別の分類をしますので、勘定科目を、例えば「旅費交通費(事業費)」「旅費交通費(管理費)」のように、同じ勘定科目名でも事業費の旅費交通費なのか、管理費の旅費交通費なのかの区分けが必要になってきます


 この勘定科目の振り方さえできれば、あとは、それぞれの勘定科目ごとに集計し、それを活動計算書に転記し、貸借対照表には現金預金を計上するだけですので、難しくないと思います


 このような場合の活動計算書と貸借対照表のエクセルシートは、「みんなで使おう!NPO法人会計基準」のHPの記載例1をダウンロードして使うといいと思います


 ダウンロードは、以下からできます


 NPO法人会計基準作成ツール 
 
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