2009年01月26日(Mon)
一般社団法人の税務
一般社団法人や一般財団法人の設立がだいぶ増えているようです
NPO法人や株式会社との違いはなかなか難しいのですが、その違いを「社会企業家のためのNPO・新公益法人Q&A〜仕組みの違いから優遇税制まで」という本にまとめました いいテーマと思ったのですが、なかなか売れずに、本を売るというのは難しいことなのだか、と実感しています。 今日は一般社団法人の法人税について詳しく書きたいと思います |
1.一般社団法人の法人税
一般社団法人は、法人税について、2階建ての制度になっています。 「非営利性の徹底している一般社団・財団法人」及び「共益的活動を主たる目的としている一般社団・財団法人」には、NPO法人同様に法人税法上の収益事業に対してのみ課税がされます。 法人税法で定める収益事業とは、@政令等に定める34の事業のいずれかに該当すること、A継続的に行われる事業であること、B事業場を設けて営まれる事業であること、の3つの要件をいずれも満たしている事業です。 会費や寄付金などは通常、収益事業になることはありません。 一方、それ以外の「一般社団・財団法人」は、全ての所得に対して課税がされます(会費や寄付金にも課税がされます)。 このうち、「共益活動を主たる目的としている法人」は、今日は触れるのをやめて、「非営利性の徹底している一般社団法人」と「それ以外の法人」について、どのような違いがあるのかをもう少し詳しく見ていくことにします。 2.非営利性が徹底された法人 (1)要件 非営利性が徹底された法人は、NPO法人と同様に収益事業課税が適用されます。 会費収入や寄付金収入には原則として課税されません。 非営利性が徹底された法人とはどのような法人でしょうか? 4つの要件が定められています @ 剰余金の分配を行わないことを定款で定めていること。 A解散したときは、残余財産を国や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。 B上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)をしたことがないこと。 C各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。 (2)残余財産の分配について このうち、@とAは、非営利法人なのだから当然のことを言っているように思います。 ところが、一般社団法は、非営利性については不徹底で、一般社団法人・一般財団法人が解散し、債務を完済した後の残余財産の帰属は、その帰属を定款で定めた場合には、定款の定めるところにより、定款の定めが無い場合には社員総会の決議により定めることになっています。 つまり、定款には残余財産の帰属先を定めずに、社員総会に一任することも可能となっています。 しかし、これは「非営利性」の考え方からいえば違和感があります。 税法上、NPO法人と同じ収益事業課税が認められるためには、定款に利益の分配を認めず、残余財産も国や一定の公益的な団体に贈与することを定めているという「非営利性が徹底している法人」でないといけないわけです。 (3)特別の利益とは? 非営利性が徹底している要件のBに、定款の定めに違反した行為として、「特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む」とあります これは、特定の個人や団体に特別の利益を与えるような行為は、実質的な利益の分配になるからということと思われます。 しかし、「特定の個人や団体に特別の利益を与える行為」とは具体的にはどのような行為でしょうか? これについて、法人税法の通達が出ました 法人税基本通達1-1-8 非営利型法人の範囲に規定する「特別の利益を与えること」とは、たとえば、次に掲げるような経済的利益の供与または金銭その他の資産の交付で、社会通念上不相当なものをいう @法人が、特定の個人または団体に対し、その所有する土地、建物、その他の資産を無償または通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること A法人が特定の個人または団体に対し、無利息または通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること B法人が特定の個人または団体に対し、その所有する資産を無償または通常よりも低い対価で譲渡していること C法人が特定の個人または団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していることまたは通常よりも高い利率で金銭を借り受けていること D法人が特定の個人または団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていることまたは法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること E法人が特定の個人に対し過大な給与等を支給していること 給与を過大に支払ったりすることは、その職員(あるいは役員)への利益分配になる可能性があるし、他の法人に無料で事務所を貸していたり無利息でお金を貸しているのも、本来受け取るべきものを受け取らないということで利益分配と同じことになる可能性があるということです。 (4)役員要件 「理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること」が条件です したがって、理事一人や二人の一般社団法人では、非営利性が徹底された法人にはなれないことになります。 3. 非営利性が徹底しない法人 (1)課税の問題 非営利性が徹底しない法人では、営利企業と同様に、すべての所得に対して課税がされることになります。 ということは、寄付金や会費収入にも課税されます たとえば、任意団体から法人成りして一般社団法人になり、任意団体の財産を引き継いだ場合には、任意団体から一般社団法人へ、寄付があったものとされます。 この場合に、非営利性が徹底していない一般社団法人だと、すべての所得に対して課税されますので、この任意団体から引き継いだ財産に課税されることになります NPO法人と同様の収益事業課税が適用される、非営利性が徹底された一般社団法人は課税されることはありません。 (2)メリット しかし、非営利性が徹底しない法人については、必ずしもデメリットばかりではありません。 たとえば、今まで中間法人であった法人が繰越欠損金がたくさんあり、その中間法人が、一般社団法人になるとします。 その場合に、もし非営利性の徹底した法人になってしまうと、この欠損金が、一般社団法人に引き継げなくなってしまいます。 というのも、法人税の扱いでは、「全所得課税」から「収益事業課税」への変更のように「課税所得の範囲」が変更になった場合には、その時点で、課税の関係を整理するからなのです。 従って、「全所得課税」である中間法人の欠損金は、「収益事業課税」である非営利性の徹底した法人には引き継げないという事態が起こるのです。 このような場合には、あえて非営利性の徹底しない法人になるという選択肢もあります。 4. みなし事業年度 このように、非営利性の徹底した法人と徹底しない法人では、「課税所得の範囲」が異なります。 このように、「課税所得の範囲」が異なるようになった場合には、それぞれの期間で所得金額を計算する必要が出てきます たとえば、最初は、非営利性の徹底しない一般社団法人を作って、そのあとに要件を整えて非営利性の徹底する一般社団法人になったとします。 その場合には、「全所得課税」から「収益事業課税」に課税の範囲が変わりますので、変わった時点で、「全所得課税」のものと「収益事業課税」のものを分けて申告をしなければいけません。 これが「みなし事業年度」という規定です。
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