2007年08月29日(Wed)
有償ボランティアの税務
昨日はNPO事業サポートセンターでNPO会計講座(基礎編)を行ってきました。
来月は9月12日(水)と19日(水)にNPO会計講座(中級編)を行います。 詳しい内容や申込はここを参照ください。 中級編でもテーマにする「NPO法人の源泉所得税」について、今回から数回にわたって連載します。 今日は、有償ボランティアの税金上の取り扱いについて述べたいと思います。 |
1. 有償ボランティアとは
有償ボランティアには明確な定義はありませんが、一般的には給与といえるほど金額は多くないけれども、幾分かの謝礼的な金銭を渡しているような場合を言うようです。 有償ボランティアというものが出てきた背景としては @ サービスの利用者側が、まったくの無償だと逆に気を遣ってしまうから A ボランティア側も、身銭を持ち出すようなことまでは受け入れにくいから B NPO側も資金力がなく、通常の給料と言える金額を支出する余裕がないから といったことのようです。 この有償ボランティアに対する支払いを雇用契約に基づく給与と考えるか、請負契約に基づく報酬と考えるか、によって、源泉所得税、消費税に違いが生じるため重要です (なお、労災保険の問題もありますが、専門外なので、ここでは省略します) 2.税務上の扱いの違い 税務上の扱いの違いとしては @ 給与と考えれば、他の職員と同様に源泉徴収の対象となります。また、ボランティアをした側は、給与所得となります A 報酬と考えれば、通常は源泉徴収の対象となりません(報酬の源泉徴収の対象となるのは講演料、通訳、翻訳など限定されており、通常はそれらに該当しないでしょう)。 またボランティアをした側は、事業所得又は雑所得になります。 B 消費税については、給与と考えれば、NPO側は消費税の控除ができませんが、報酬と考えれば消費税の控除ができます。 3.判断基準 給与と考えるか、報酬と考えるかについては、今までいくつかの裁判がありました。 その内容を要約すると、以下のような判断基準のようです (1) 指揮命令があるかどうか (2) 時間的・場所的に拘束されているかどうか (3) 旅費その他の費用の負担がされているかどうか (4) 対価の計算がどうなっているか 以下、細かく見ていきます (1) 指揮命令があるかどうか 雇用契約に基づく給与は、通常、雇用主や上司の指揮命令に基づいて労務の提供をします。 会社に勤めればそうですよね。 「この仕事をしてください」というものに基づいて行うものは給与です (2) 時間的・場所的に拘束されているか いつやってもどのようなやり方でもよければ給与とはいえません。 「何時から何時まではここにきてこの仕事をしてください」ということであれば給与といえます (3) 旅費その他の費用の負担がされているか 依頼者が旅費やその他の経費を負担していれば給与といえます。 経費の大部分は依頼された人が支払っていれば報酬という可能性があります。 企業に勤めていれば、仕事に関してかかるものは会社が負担してくれますよね (4) 対価の計算方法がどうなっているか 時間当たりなどで計算されていれば給与です。 「100個できたら○○円」などという感じであれば報酬の可能性があります。 これらを総合的に判断するということになります ということは、NPOの有償ボランティアの大部分は指揮命令を受けるし、時間的・場所的にも拘束されているのではないでしょうか。 また、費用の負担もあまりすることはないでしょうし、対価の計算は時間給、日給などが多いのではないかと思います そうすると、NPOの有償ボランティアは大部分が給与になると思われます。 「金額が少ないかどうか」で所得の区分が変わるということは税法ではありません。 4.源泉徴収税額 給与であるとすれば、源泉徴収はどうなるでしょうか? (1) 源泉徴収の方法 源泉徴収の方法には、大きく2種類あります。 @ 月額表で源泉徴収する場合 と A 日額表で源泉徴収する場合 です。 通常の会社であれば、月給で支払いますので、月額表で源泉徴収をすると思いますが、有償ボランティアの場合には、時間給や日給で支払うことが多いと思いますので、日額表を使うことが多くなると思われます。 支払い方法はまとめて支払っていても、時間給や日給で計算されていれば日額表を使います。 ただし、月ごとにまとめて支払うように定められている場合には、時間給、日給で計算されていても、月額表を使います。 (2) 日額表の丙欄 月額表には、扶養控除等申告書を提出するかどうかによって、「甲欄」という税額が低い税額になるか「乙欄」という税額が高い税額になるか、いずれかです。 しかし、日額表には、「甲欄」「乙欄」以外に「丙欄」というものがあります。 丙欄は、日給又は時間給で給与が定められているほか、 @ 雇用契約の期間があらかじめ定められている場合には、2か月以内であること。 A 日々雇い入れている場合には、継続して2か月を超えて支払をしないこと。 が条件になっています そして、この日額表の丙欄に該当すれば、日額が9.299円までは源泉税が0円です。 つまり、給与に該当したとしても源泉徴収をする必要がないということです。 単発のイベントなどに協力する有償ボランティアの方の大部分はこれに該当するのではないかと思います。 *登録制の有償ボランティアなどは雇用契約の期間が予め定められてるとみなされ、丙欄が適用されない可能性があります。 5.まとめ 以下まとめますと @ 有償ボランティアに対する報酬は、税法上は大部分が給与になると思われます A 給与になると原則的に源泉徴収の必要が生じ、消費税の控除はできません B しかし、単発のイベントなどの謝金については、日給又は時間給で支払われていると思われますので、継続して2ヶ月を超えて支払いをしないなどの一定の要件を満たせば、日額表の丙欄が適用され、日額9.299円以下の場合には、源泉徴収は必要ありません。 C ただし、日給、時間給などであっても、月ごとにまとめて支払う場合には月額表が適用されます Dまた、登録制のボランティアなどの場合には契約期間が2月を超えているとみなされ、丙欄が適用されない可能性があります 事前に税務署に確認ください * 労災保険の取扱いは違うと思われますのでご注意ください
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