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横浜市で市民協働条例についてのラウンドテーブルを開催 [2012年05月22日(Tue)]
2012年5月22日の夜、横浜市市民活動支援センターで「横浜市市民協働条例」をテーマにした円卓会議が開かれました。6月の市議会に条例を議員提案で提出するというのが異例であるならば、議員の提案条例案を公開し、パブコメを募るのもまた異例。さらに市民が呼びかけて提案した議員を交えての円卓会議を開くというのは、いかにも横浜らしい流れです。

冷たい雨の中、集まった市民は40人ぐらいだったでしょうか。開催日の10日ほど前に告知されたにもかかわらず、これだけの人が集まるのも横浜の底力。

私は開始から30分くらい遅れて参加したので議員の説明はほとんど聞くことができなかったのですが、市民との議論は最初から最後までじっくりと聞いて来ました。このような議員と市民が平場で話し合うような場では、議論の文脈を無視して延々と自説を述べる人や、非難に終始してうんざりする人も珍しくはないのですが、市民側からの発言は、互いに敬意を払いつつ「言いたいことはきちんと言わせてもらう」という気分が共有されたものでした。これもまた、横浜らしい光景と言えるかもしれません。

■プロセスへの疑問
市民からの意見のほとんどが、条例案策定のプロセスについてのものでした。横浜市では、市民活動や協働に関した重要な施策を作るときは、市民とともに作り上げるプロセスを重視してきました。それが市民の意識を高め、市民活動を育んできた原動力の一つです。

ところが、今回はパブリックコメントを募集すると言っても、議員提案として条文を作る過程に市民の関与がほとんどなかったことは大きな問題であるとの指摘です。市民と対話しつつ条例案を煮詰めていけば、間違いなく市民の協働の意欲やスキルが高まるはずです。

議員は「内容に問題が無ければ、誰が、どのように条例案を作っても良い」と考えているように見受けられましたが、そうではないと強く主張したい人が多かったのだと思います。

今回の円卓会議の成果は、パブコメや円卓会議で出た意見に基づき、修正した条例案をもとに、議会にかける前にもう一度ラウンドテーブルを開くことが決定したことです。

■見えない理念
この条例は「横浜市市民活動推進条例」の全部を改正する形で提案されるものです。では、「横浜市市民活動推進条例」のどこに問題があるのか、そして、目指す横浜市の市政・市民活動・協働がどのような姿であるのか、方向性が見えません。「今の条例のどこが悪いのかわからない」という参加者もいました。市民活動推進条例には「前文」がありましたが、この条例案には前文が無いからです。前文にそのような内容を盛り込んではどうかとの意見もありました。

■条文への疑問
「内容に問題が無ければ、大筋で合意しておいて、実際の運用は規則に委ね、規則を作る過程で市民参加の場を確保する」というのが議員のお考えのようですが、実際は問題が大いにあると思われた方もいます。

例えば、「市民協働事業の提案」を規定した第10条に対して質問がありました。今までも、横浜市では市民が行政に協働事業を提案する制度がありました。ただ、採択が年度の途中であるために、協働の案件が採択されても行政側で年度の事業計画が決まっているなどして、協働事業が非常に実施しにくいという弊害があったとおっしゃった方がいました。議員の答えは「付則で、条例の施行日は規則で定めることとしている。行政側に準備をする時間は十分に与えている」でした。質問の趣旨と回答がかみあっていません。質問をした方は「市民提案による市民協働事業の実効性」に対して疑問を呈しているのですが、議員は「条例の施行までに時間の猶予を与えているのでだいじょうぶ」。回答できないのでわざと論点をずらしたのか、それとも質問の趣旨が理解できなかったのかわかりませんが、議論が尽くされていないままに動き出そうとしていることだけは確かです。

付け加えるなら、行政と市民とが協働事業を作り上げていくには時間が必要です。第10条には、「市民協働事業を行おうとする市民等は市に対して、市民協働事業を提案することができる。市長は速やかに提案を審査し、採用の要否を決定し、理由を付して提案者に通知しなければならない」とあります。どのような要件を満たしていれば提案できるのか、どのような手続きがとられるのか、規則などの下位立法に委ねていませんので、この条文に従うと、いつでも誰でも(個人でも)協働事業を提案できることになります。そして、市長は全ての提案を審査し、回答する義務を負うのです。いったい、どうしたらこのようなことが可能なのか。質問をした方の疑問はもっともです。第20条に「この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める」という条文を加えることで、あとのことはみんな規則で決めてしまえということなのかもしれません。苦労するのは、制度設計をする人は大変な苦労をすることでしょう。

今回の円卓会議では、時間の制約で逐条的な議論がほとんどできませんでした。協働契約や中間支援機関など多くの参加者が条文に疑問をもったまま議会にかけられようとしていることに参加者の多くは不安を感じていると思います。

できることであれば、条例案策定のプロセスを市民に開き、多くの市民の理解と共感が得られるよう、6月の議会提案を延期できないものか、帰りの道でずっと考えていました。

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