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マヤ人は人類滅亡を予言してはいません [2012年05月26日(Sat)]
「マヤ文明は天体観測から正確な暦を複数持っていたことで知られていますが、「長期暦」と呼ばれる暦が2012年12月で一周することが「世界の終わり」と解釈され、人類滅亡を予言しているとのうわさがあります。

いたずらに世間の不安を煽るような「風評被害」にはうんざりしていたので、考古学者は何をしているのかと思っていたら、最近、岩波新書の『マヤ文明―密林に栄えた石器文化』青山和夫著という本がありました。マヤ文明についての最新の知見を素人にもわかりやすく書いてある好著です。マヤ暦についての記述もあり「2012年に人類は滅亡しない」とはっきりと書いてあります。

そもそもマヤ人は、私たちが意識しているように、時間が過去から未来に続く直線としてはイメージしていなかったのです。太陽や月の運行のように、時間を無限に循環する環のように考えていました。日本や韓国、中国にも、十干と十二支を組み合わせて60年で一回りする「干支(えと)」があります。「壬申の乱」は672年に起きた日本の内乱で、「壬申倭乱」は1592年に豊臣秀吉が朝鮮にしかけた戦争を朝鮮側で言う呼び名。どちらも壬申(じんしん・みずのえさる)の年におきたことが名前の由来です。ちなみに、甲子園球場は1924年「甲子(こうし・きのえね)の年に完成したことを記念した名前だそうです。干支暦が一巡して原点に戻ったからめでたいということなのでしょう。

マヤ人は、周期の異なる何種類もの暦を使っており、その一番周期の長い暦が2012年で一巡することが人類滅亡説の根拠ですが、干支が60年ごとに繰り返すように長期暦も一周するとまた原点からやりなおしになるだけなのです。マヤ人は、長長期暦が一巡するとなったら、滅亡を心配するのでなく、新たな「世紀の始まり」を祝うことでしょう。さらに、驚いたことに、青山氏によればマヤ人は、さらにずっと長い周期の暦も持っていたらしいのです。一番長い周期の暦は地球の歴史よりも長いそうですから、驚くべきことです。

この本の中で青山氏は、マヤ文明の衰退についてもページを割いています。環境問題を考える身にとって興味深く、終末論よりもずっと深刻な問題を提起しています。

まず、一般的にマヤ文明が突然崩壊したというのは実態をとらえていないそうです。巨大なピラミッドや石碑を作るような都市文明は数世紀をかけて徐々に衰退しますが、都市を離れ、農耕を主体とするマヤの人たちの暮らしはスペインによる侵略の後も残っています。この部分を読んで宮崎駿のアニメ『天空の城ラピュタ』を連想しました。

マヤで都市が放棄された理由は、いくつかの要素が複合しているとの説が有力です。青山氏は「人口増加」「環境破壊」「戦争」が主な原因と考えています。車輪を持つ輸送機器や大型動物を使った運搬手段を持たなかったマヤ文明は、人口の増加が近辺の自然環境の悪化につながりやすく、環境問題を解決するために戦争が頻発したというのです。さらに、王や王族は自らの権威を維持するためにさらに巨大な建造物を作り、農民の疲弊や環境破壊をさらに進める結果となったと説いています。

今の人類の所業を考えると、繁栄を持続するために、環境を保全するのではなく都市化を進め、環境への負荷を増やしています。

青山氏は、石器が専門の考古学者ですが、考古学の研究から得た知見を、現代に生きる私たちに伝えることがだいじだと考えていらっしゃいます。好著にめぐりあえたと思います。
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