そもそも命を経済的な恐怖によって労働へ駆り立てる仕組みにしてよいのか [2026年09月07日(Mon)]
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生活保護は生活を保護する足し程度であるべきで、医療費は3割であるべきなのです。日本に足りないのは、お金がないことも含めて寿命という考え方です。金がないと死ぬかもしれないから、必死に働き、国は経済成長するのです。金がないほうが良い医療を受けられるなら、誰も真面目に働きません。しっかりとお金と命を結びつけるべきなんです。
…というツイートを見かけまして、障害当事者団体ベクトルズとして以下のようにコメントしたのでコラム記事にもしておきたいと思います。 ご意見として拝読しましたが、障害当事者団体ベクトルズとしては、いくつか根本的に考え方の異なる部分があります。 まず、「生活保護は生活を保護する足し程度であるべき」とのことですが、私たちはそのようには考えていません。生活保護制度は、生活に少しだけお金を足す制度ではなく、生活に困窮する方に対して必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とした制度です。 また、「お金がないと死ぬかもしれないから必死に働く」という考え方について、生活保護を必要としていない人が、自分や家族の生活を維持するために働くこと自体は当然のことだと思います。しかし、私たちは「死にたくなければ働け」という状態を社会が意図的につくることが、労働意欲や経済成長につながるという考え方には賛同できません。 働く理由は、生計を立てることだけではありません。仕事そのものへの喜び、社会との繋がり、自分の能力を活かすこと、誰かの役に立つことなど、人によって様々です。 そして何より、障害や病気、高齢などによって、働きたくても充分に働くことのできない人が現実に存在します。「お金がなければ死ぬかもしれない」という圧力を労働の原動力とする社会では、そうした人たちはどうすればよいのでしょうか。 「お金がないほうが良い医療を受けられる」というご指摘は、おそらく生活保護における医療扶助を指しているのだと思います。確かに、生活保護受給者は原則として医療扶助によって必要な医療を受けることができ、窓口で自己負担をしない仕組みになっています。一方、働いている人が医療費の自己負担を重く感じ、「自分たちは負担しているのに、なぜ生活保護受給者は無料なのか」と疑問や不公平感を抱くこと自体は理解できます。 しかし、その問題への答えが「それなら生活保護受給者にも医療費を負担させよう」でよいのかについては、私たちは慎重に考える必要があると思います。生活保護を利用している方の中には、高齢者だけでなく、障害や病気などによって継続的な治療を必要としている方もいます。複数の診療科を受診しなければ生活そのものを維持できない人もいます。そうした人に一律3割負担を求めれば、経済的な理由から必要な受診を控える人が出てくる可能性があります。 また、本当に生活保護受給者にも3割負担を導入するのであれば、単に「今日から医療費を3割払ってください」では済みません。最低生活費そのものが現在の制度設計を前提としている以上、医療費負担を新たに課すのであれば、それを踏まえた最低生活費のあり方や、医療扶助・健康保険制度との関係なども含めて制度全体を考え直す必要があります。 そして、私たちが投稿でもっとも違和感を覚えたのは「金がないほうが良い医療を受けられるなら、誰も真面目に働きません」という部分です。人は「生活保護受給者より良い医療を受けるため」に働いているのでしょうか?少なくとも私たちは、人間の労働をそのような価値観だけで捉えてはいません。生活保護を利用しなければならない人が必要な医療を受けられることと、働いている人が真面目に働くことは、本来、対立させなければならないものではないはずです。 働いている人の医療費負担が重いのであれば、「生活保護受給者にも同じ負担をさせるべきだ」という方向だけではなく、「働いている人も必要な医療を安心して受けられる社会にするにはどうすればよいか」という方向から考えることもできます。 最後に「しっかりとお金と命を結びつけるべき」とあります。生きていくためにお金が必要であること自体は現実です。しかし、「お金を得られなければ、必要な医療を受けられず死ぬ可能性がある。その恐怖があるから人は必死に働き、経済が成長する」というところまでお金と命を結びつけるのであれば、障害当事者団体として、私たちは賛同できません。 社会には、働ける人もいれば、働きたくても働けない人もいます。今は働けていても、病気や事故によって明日から働けなくなる可能性は誰にでもあります。生活保護をはじめとする社会保障は、そのようなときに人の生命と生活を守るためのセーフティーネットでもあります。 「働かないと死ぬ社会にすれば、みんな必死に働く」のではなく「働ける人は働き、働けなくなったときにも生命と最低限の生活は守られる」。私たちは、後者の社会のほうが望ましいと考えています。 以上 障害当事者団体ベクトルズ 代表理事 内田貴之 |


