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就労A型とB型を独自分類する実証試験 [2026年03月06日(Fri)]
こんにちは、障害当事者団体ベクトルズ 相談役の内田貴之です。
久しぶりに障害者福祉について、少し頭を使って考えたくなりました。今回のテーマは、就労継続支援A型とB型についてです。利用者&事業所運営者どちらにも向けた記事です。

いつもは「作業所」と書いていますが、今回は運営者についても書いているため「事業所」にしています。意味は同じです。違いがあるとしたらニュアンスですね。

僕は支援員として勤務していた頃も、利用者として通う側になって以降も、さまざまなA型・B型を見学したり、体験したり、時には利用してみたりしてきました。その中で強く感じたのは、A型とB型という制度の違い以上に、事業所ごとの差が大きいということです。同じA型でも雰囲気がまるで違う。同じB型でも、そこで過ごす一日が別世界になる。制度の説明だけでは、この差はなかなか伝わりません。

利用する当事者側からすれば、ここが本当に難しいところです。A型かB型かを選ぶ以前に、どの事業所が自分に合うかが分からない。パンフやホームページには良いことが書かれているけれど、実際に通ってみないと見えない部分が多い。体験をたくさん回るのが理想だとしても、体力や時間の事情でそれができない人もいます。

一方で、福祉の現場で支援に携わる方々にとっても、これは悩ましい問題だと思います。利用者の希望や適性を踏まえて事業所を紹介したい。しかし「A型」「B型」という制度名だけでは説明が足りず、事業所ごとの特色を言語化しづらい。結果として、当事者側も支援側も、選ぶための“比較の軸”が少ないまま話を進めざるを得なくなる。ここに、選びにくさの根があると僕は感じています。

障害当事者団体ベクトルズは、直接的な障害者支援を行う団体ではありません。けれど、当事者が困っていることを放置したくない、という思いは強くあります。そこで今回、ベクトルズとして「事業所探しの一助になりたい」という目的で、ベクトルズ独自の分類を試してみようと思います。

分類は、優劣をつけるためのものではありません。事業所の「運営の重心(タイプ)」を見える化して、比較の軸を増やすためのものです。

現時点での分類案は次のとおりです。

■就労継続支援A型(※就労負荷軸)
・A型+:仕事寄り
・A型 :バランス
・A型−:福祉寄り

■就労継続支援B型(※方向性軸)
・B型+:就労支援型
・B型 :スキルアップ型
・B型−:生活寄り

A型は雇用契約があり、最低賃金が保障される制度です。だからこそ「作業」ではなく「仕事」に近い場になりやすい。一方で、現場には「A型なのにB型に近い」ような事業所も存在します。そこを当事者が誤解なく選べるように、A型は就労負荷の観点で整理したい。こういう考え方です。

B型は雇用契約ではなく、工賃を得ながら社会参加や経験を積む制度です。僕はB型の存在意義の中心は「スキルアップ」にあると考えています。学習や訓練、資格取得などを通して、できることを増やしていく。その結果として、別のB型へ移る人もいれば、A型や一般就労を目指す人もいる。もちろん、居場所や安心感など別の意義もあります。ただ、方向性の違いは当事者にとって重要なので、B型は方向性(就労支援/スキルアップ/生活寄り)として整理したい。そう考えています。

「生活寄り」というのは「地域生活支援センター」寄りのB型という意味です。

この分類が本当に実用的なのか、現場の肌感としてズレていないのか。そこを机上ではなく実地で確かめるために、まずは札幌市内の顔馴染みのB型事業所に協力していただき、試験運用的に試してみます。具体的には、運営者側の自己申告と、利用者側の体感をそれぞれ集計し、分類が「選びやすさ」に寄与するかどうかを見ていく予定です。

今回の試験運用は、まず1事業所に限定して行います。協力していただくのは、札幌市内のB型事業所です(※まだ協力同意および許諾を得ていないため事業所名は伏せます)。いきなり多くの事業所に広げるのではなく、まずは現場で無理なく回る形で、分類が実際に役に立つかどうかを確かめたいと考えています。

運用の方法も、なるべくシンプルにします。運営者側には、「運営の重心」を自己申告として回答していただきます。利用者側には、利用してみて感じるものを段階的に選択してもらい、最後に「最も強く感じるもの」を選んでもらう。

紙のアンケートでは回収や集計が大変なので、スマホから回答できるフォームを使い、回答結果はスプレッドシートに自動集計される形にしました。これなら、運営側にも利用者側にも負担が少なく、結果も整理しやすいからです。

そして、集計結果がある程度たまった段階で、ベクトルズとして「この分類は実用的だったか」「誤解を招く表現はないか」「当事者側にとって選びやすさが増えたか」といった観点から整理していきます。もし改善点が見つかれば、分類の呼び方や説明文、集計の取り方そのものも見直すつもりです。最初から完璧なものを作るのではなく、試験運用しながら育てる。今回の取り組みは、その第一歩です。

もちろん、ここで誤解してほしくないのは、この分類が「良い事業所・悪い事業所」を決めるランキングではないということです。あくまでも、事業所のタイプを言語化して、比較の軸を増やすための試みです。

最終的に合うかどうかは、利用者本人の相性や目的、通いやすさ、体調、そして実際の雰囲気によって変わります。僕自身も、同じ作業内容や同じ工賃に見えても、支援員の姿勢や利用者の空気、作業中の賑やかさ、席や空間のルールなどで「居心地」は大きく変わると感じてきました。分類は万能ではありません。けれど、比較の軸が一つ増えるだけでも、選びやすさは少し前に進むのではないか。僕はそう考えています。

最後に、今回の試験運用に協力してくださるかどうは、まだ分かりませんが。ベクトルズとしては、当事者が事業所探しで困っている現実を無視したくありません。直接支援の団体ではなくても、困りごとの軽減に寄与できる余地はある。今回の取り組みが、そうした一助になれば幸いです。

※追記※
PC・スマホ・タブレット端末どれでもネット接続さえできれば「回答できる」ものにしようと考えた時、WEBプログラミングを使ったアプリケーションのようなものを作るか、既存のGoogleフォーム&スプレッドシートを使用するか迷いました。どうも、Googleフォーム作成やスプレッドシートそのものにも苦手意識があったからです。WEBプログラミングは、一切の知識ありませんが(笑)chatGPTにやってもらえますから。それについてもchatGPTに相談したところ、簡単なのは既存の無料の仕組みを使うことだとアドバイスをもらった上、手順も丁寧に教えてくれたので「Googleフォーム&スプレッドシート」になりました。先述したとおり、まだ試験運用的なものです♪

以上
障害当事者団体ベクトルズ
相談役 内田貴之
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