The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛
[2012年08月13日(Mon)]
アウンサン・スー・チー、という歴史に残るであろう女性。
彼女の半生を描いた「The Lady ひき裂かれた愛」。
メジャーな映画館で上映しないのが不思議です。
映画はその昔、ビルマが豊かで美しかったころの風景から始まりました。
ミャンマーではなく、ビルマと書きましょう。
暗殺後も国民から敬愛されている将軍を父に持つ、アウンサン・スー・チー。
軍事クーデターが発生し、民主化政策を進めるアウンサン将軍が暗殺されますが、
その日の朝、幼い娘、スーの髪に蘭の花をさし、ほほ笑んでいた彼の笑顔が象徴的でした。
軍事政権が続いたビルマで国民の絶対的な支持を受け、民主化運動を進めた彼女は、
つい最近、2010年まで、なんと15年にわたって自宅軟禁生活を強いられたのです。
途方もない時間ですよね。
1991年にノーベル平和賞を受けながら、
自宅軟禁されていたために授賞式に出席できなかったアウンサンスーチー氏。
今年6月、21年越しに受賞演説を行いました。
記者会見も含めて、私は彼女のトークを初めて聞きました。
なんと聡明なスピーチ、受け答えをする人だろうと。改めて思った次第です。
女史を演じたのは「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」のミシェル・ヨー。
ビルマ語のセリフを完全習得、加えて本人のしぐさや癖、なまりまでも研究したらしい。
すごすぎです。
最初は本人のルックスと全然似てないよなー、と思っていたけれど、、、
なんか、似てても似てなくてもどーでもいいや、と思わせる熱演でした。
スーチーさん、「鋼鉄の蘭」と呼ばれていたらしいけど、
いつも髪に綺麗なお花を飾って、忘れない女らしさが本当に素敵だと改めて思いました。
しなやかで美しく。そして強靱な精神力。
自宅軟禁の際に、彼女はたくさんの書をしたためます。
それを家のあちらこちらに貼っていくのですが。
こういうことを軟禁中にやっていたんですね。
ガンジーの非暴力、非武装の思想に魅かれていたようです。
書を貼っていくのを興味深そうに見ている兵士がいて、彼にその中の一枚を見せます。
「貴方は英語がわかるのね?なんて書いてあるかわかる?」と。
押し黙る兵士に、彼女はこう言ったんです。
「あなたが国の事を考えなくても、国はあなたの事を考えている。そう書いてあるの。」
印象的なシーンでした。
スー・チーさんはイギリス人男性と結婚し、2人の息子がいたんですね。
1988年までイギリスで普通に一家の妻、そして母として暮らしていたようです。
母の看病のために、イギリスから祖国のビルマへと戻り、そこから人生は激変。
軍事政権が民主主義運動を弾圧するのを目の当たりにし、
さらには目の前で民衆が射殺される光景を目撃してしまうのです。
民主主義運動家たちは、将軍の忘れ形見、スー・チーに選挙への出馬を訴えかけ、
彼女もそれにこたえる形で、民衆の前に立つわけですが。
それを機に軍事独裁政権から圧力をかけられ、自宅軟禁へとつながっていきます。
この映画は、どちらかという夫婦愛、家族の愛を描いたもの。
軍事政権によってその夫と引き離され、彼の死に立ち会うことすら叶わなかった。
ビルマを離れて自分のもとへ帰ってくることを、このイギリス人の夫は拒絶したんです。
引き裂かれるような心。
誰にも理解はできないかもしれない。
彼らにしかわからないところで深く深く結ばれた愛情なのだと思う。
この夫婦の会話がとにかくよいのです。
男女の中にありがちなエゴの姿がないのです。
1991年のノーベル賞の授賞式のシーン。
息子が立派に代理でスピーチをするのですが、
軟禁状態のビルマの自宅で、彼女はラジオで聴いていました。
オーケストラの音に合わせて、ピアノを奏でるスー・チーさん。
その頬は涙でいっぱいでした。
軟禁て、、、
普通じゃ耐えられないと思う、、、
彼女の言葉で、
「最低限の心構えと最高の望み(希望)を!」というのがあります。
すごくわかります。
こんなにも優しく誰かを愛し、誰かに愛された人は強い強い。
本当に感動しました。
女性の時代、きてますね。
オリンピックもそうだったけど!
映画館のお化粧室で、ふっと鏡を見て、あっ、と思いました。
私はひょっとしたら、スー・チー女史っぽいかも、、、と。
あんなに聡明で人格者で美しくもないけどね(笑)。
ロンジーというあの民族衣装のスカートと、きれいな蘭の花を髪にさせば、
ちょいと似てるかも、、、
にゃは。