水平線の向こうから
[2011年09月08日(Thu)]
「水平線の向こうから」 とてもよい絵本です。
なんだかとても読みたくなって、引っ張り出して読みました。
身体が辛い時、ベッドの中ではいろいろなことを妄想します。
このまま、もし死ぬようなことがあれば私はどうだろう、何を想いのこすかな、とか。
それとも、やるだけやったから、もうじゅうぶんだ、って?
そんなはずもなく。後悔だらけでしょう。
作者の堂園晴彦さんは、日本のホスピス(緩和)ケアの最前線を歩んでこられた医師です。
1500人を超える患者さんを看取ってきた経験をもとに作られた絵本なんです。
「死」という概念をまだ持たない幼い娘を遺して旅立たねばならぬ病気のおかあさん。
突然の別れにただひたすら涙をこぼし、悲しみにくれる幼い娘。
おかあさんは、亡くなる前に娘に自分を船にたとえて話します。
「おかあさんの船は、水平線の向こうに消えてなくなるでしょう。でもいなくなってしまうのではない。」
「死んでいくのも同じよ。いなくなるのではなくて見えなくなるだけなのよ。」
とてもとても哀しいお話なのに。透明感にあふれ、そして愛がこぼれてきます。
葉祥明さんのの優しい色使いに泣けてきます。
作者の医学博士でもある堂園さんのあとがき、心に残りました。
人は死が近づくと本当にやりたかったことに気がつく
しかし、それをするには残された時間が短すぎる
豊かな最期をすごすには
結局自分が本当にしたかったことをしたと思う人生をおくることである
死ぬことは不幸ではないが、不幸な死に方はあるようだ
いやー、まさにそう、本当にそうだと思います。
死にざまは生きざまですね。
やっぱり、自分らしくちゃんと生きていかなきゃな、と病床で熱くなりました。
それから、もう一冊。
わすれられないおくりもの
これまた、泣かされますよね。スーザン・バーレイさんの作品です。
主人公のアナグマ、イギリスでは最もなじみの深い動物、と書いてありました。
これまた、「死」をテーマにした深い絵本なんですよー。
「身近な人を失った悲しみを、どう乗り越えていくのか」
賢くて、いつもみんなに頼りにされているアナグマさん。
冬が来る前に死んでしまいました。
「長いトンネルのむこうに行くよ、さようなら。アナグマより」という手紙を残して。
悲しみにくれる森の動物たちは、それぞれがアナグマとの思い出を語り合ううちに、
彼が宝物となるような知恵や工夫を残してくれたことに気付いていきます。
そして、春が来る頃には、アナグマのことは楽しい思い出へと変わっていくのでした。
アナグマさんのごとく、生きて、そして死んでいきたいものです。