海上漂流・生還の秘訣 [2009年10月29日(Thu)]
八丈沖で転覆、約4日間漂流していたキンメ漁船の船内から
奇跡的に乗組員3名が救出された件は、ご存知かと思います。 数々の条件が合致して生還に至った本件は、まさに奇跡中の奇跡と 呼ぶに相応しいと思います。 →事件詳細は「ブログ・海洋汚染情報」へ 4日間、想像を絶する恐怖の中で、冷静に、そして的確に救助を待った 乗組員の皆さんの精神力と、捜索にあたった関係者一同、そして もちうる最大の力をもって救助にあたった海上保安庁には、心より敬意を表します。 事故の全容はいずれ明らかになると思いますが、「奇跡的」とはいいつつも 救命に至ったのには、それなりの理由があるはずです。 そこで今回の海守ブログは、「海上漂流・生還の秘訣」と題してお送りします。 いくら海守会員の皆様といえども、海上漂流を余儀なくされる可能性は低いでしょうし、 あってはならないことですが、「まさか自分が」と遭遇するのが事故ともいえますので 参考にしていただければ幸いです。 ※なお、この記事は07年にも掲載した内容を含みますが、新規入会の方も 大勢いますので、上記事故を契機として復習させていただきます。 ◆参考文献として、旧運輸省監修の「生き抜くために」 (海上漂流者の応急手当と生命維持のための指導書)を利用しました。 ◆あくまでも一般論で、実際には状況に応じた対応が必要ですが 万一の時は参考にされてください。 ≪希望をもって≫ 海上漂流に限らず、生きる希望と生命力は比例するといわれます。 望みを捨てた時が、終わりの時です。 食料も飲み水もなく1ヵ月以上も漂流し助かった事例は沢山あります。 どんなに絶望的な情況でも「生き抜こう」と思うことが、生還の第一歩なのです。 ≪仲間がいれば≫ もし数人で漂流した際は、団結です。 ついつい「我先に・・・」とか「自分1人ならば・・・」となりがちですが 仲間が多いほど知恵が生まれ、生還のチャンスが広がります。 安易に単独行動をしてはなりません。 ≪食料≫ 人は、食料が無くても40日は生きられるそうです。 一方で、水がなければ5日ともちません。 食欲は抑えがたい欲望ですが、何より水です。 食料より水の確保を優先させましょう。 なお、1日あたり500ml以上の飲み水がなければ、肉や魚、繊維質は 食べてはいけません。逆に体の負担となります。 飴やチョコ、救命用食料など、エネルギー効率のよい食品だけを摂るようにしましょう。 また、24時間は前日に摂った食料で体を良好に保てますので、食料が少ない場合 漂流してから24時間は何も食べる必要はありません。 ≪水≫特に重要! ・くどいようですが、水だけでも40日は生きられます。 ・海水や尿は決して飲んではいけません。 ・雨水は最大限利用しましょう。 ・飲み水が少ない場合、漂流後24時間は水を飲む必要はありません。 ・救命用の水がある場合、1/3は最後まで温存しましょう。 ・集めた雨水は腐りやすく、せいぜい2日ほどしか飲めません。 ≪アピール≫ 救命ボートには、必ず鏡と防水ライトが積んであります。 日中には鏡の反射光を使って付近の船舶や航空機に救助を求めましょう。 反射光は条件によって30kmも先まで届きますので、遠いからといって 諦めてはいけません。夜間は、同様にライトでアピールしましょう。 ≪体力の温存≫ 漂流中は本能的に陸地を探したくなるといいます。 しかし、救命いかだやライフジャケットで陸地を発見して上陸するのは至難の業です。 一般には、むやみに動き回らずに体力を温存した方がいいといえます。 ≪体温の維持≫ 体温が30℃を下回ると生存は急激に難しくなります。 そこで、体温の維持が大課題となりますが、その際に重要なのが「濡れないこと」です。 風が無い状況でも、衣服が濡れていると通常の10倍以上の速度で体温が奪われます。 ちなみに、水中の場合、水温×3分が安全に活動できる目安といわれています。 例)水温20℃の場合:20×3=60分(安全が保てる目安時間) なお、乗船中の船に沈没の恐れがある場合、救命ボートに移動するのが大原則です。 しかし、今回の事故では、セオリーどおり救命ボートに乗り込んだ船長の方が 亡くなっており、実に残念な結果といえます。 |