漁業の行く末 [2011年05月06日(Fri)]
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県漁協は、27日に
開催した経営委員会で「次世代に引き継げるよう新しい漁業の 構築を目指す」として、組織的に漁や養殖を行なう協業化を 導入する方針を決定しました。 宮城県漁協に所属する約1万人の組合員のうち、大半が漁業継続を 希望しているとのことですが、同漁協は「漁港や養殖施設など、ほぼ 全ての生活基盤を失った」「漁師の個別努力では再建は困難」と あらためて危機感を表明し、国有化や株式会社化を含めた共同体組織に より再建を目指す方針を打ち出したのです。 太古から漁師同士の結束は強く、助け合いによって地域漁業が 成立してきたのは事実ですが、あくまでも個人経営が主流だった 我が国の漁業にとっては、今回の決定は歴史的、抜本的転換点に なるかもしれません。 確かに、コスト削減や経営の効率化、船や設備の復興に必要な資金調達など 協業化によるメリットは大きいはずで、漁業関係者からは「自然な流れ」との 声も聞こえてきます。 しかし一方では、一匹狼として生きてきた現場の漁師からは、協業化への 戸惑いや反発の声も上がっているのです。同じ地域の漁といっても、狙いや 漁獲規模はそれぞれ異なり、漁の仕方には一子相伝のような独自の拘りも 多いと聞きます。気仙沼のある漁業者は「漁師同士でやり方が違い、3人だって 意見が合わない。船の上では誰にも縛られないのが漁師のいいところ」と 協業化へ断固反対を唱えました。 現実的復興と漁師としての生き様、生産業としての効率性と漁村文化など 様々な狭間で漁師世界は揺れています。そして、その行く末は大魚食国家の 一員である私たち一人ひとりにとっても重大事なのです。 |