漂着ごみ 日本も加害者 [2009年05月14日(Thu)]
処理推進法案づくり大詰め / 漂着ごみ日本も加害者 ミッドウェー島で悲劇 ミッドウェー島に漂着した日本製のごみ 写真:NPO法人OWS 提供 先月の中日新聞に「漂着ごみ、日本も加害者」と題した記事が掲載されました。漂着ごみ問題の本質に迫る内容ですし海守の過去の講習でもお馴染みの皆さんが登場しているのでご紹介します。 (新聞社の掲載許可の関係で、今日の掲載となりました。) 掲載紙:中日新聞 2009/4/11朝刊「特報」 ※この記事は中日新聞の許可を得て掲載していますが転載はできませんので、ご了承ください。 日本の海辺の景観は今、漂着ごみで見るも無残に荒れ果てている。頭を悩ませてきた沿岸自治体を、国が財政面で助ける「海岸漂着物等の処理推進法案」づくりが大詰めを迎えている。だが漂着せずに浮遊する海洋ごみへの対応は触れられていないなど課題もある。「白砂青松(はくさせいしょう)」は取り戻せるのか。(野呂法夫) 新法案で「発生の抑制」が国民に求められた漂着ごみ。その中にはハングルや中国語が書かれたごみも交じり、周辺国を迷惑視しがちだ。だが、「日本も同じく加害者であることも忘れないでほしい」。鹿児島大水産学部の藤枝繁准教授は独自の調査からこう話す。 調査は2003−06年に行ったライタープロジェクト。現在も継続中だが、漂着ごみの指標として簡易ライターを拾い集め、流出場所などを推定する取り組みだ。ライターは国別で形や製造記号が異なる。店名などが記載され、使われていた都市が特定できるものもある。漂着数も多く、小型で回収しやすい。その調査結果から何が見えたのか。 まず台湾に近い与那国島から沖縄、鹿児島県の種子島までは、半分が中国・台湾製だ。対馬から韓国製が増え、日本海の山口県から福井県にかけて、対馬暖流に流された韓国製が半分を占める。能登半島以北の東北沿岸では、富山県や新潟県などの日本製が増加。韓国製は2割に減るが少数は北海道の宗谷岬を回り知床岬まで届いていた。 一方、太平洋沿岸は9割が日本製で、残りは中国・台湾製が黒潮に乗って流れ着いていた。ところが「太平洋では日本が最大の加害者になる」と藤枝氏は言い、東京から約4500キロ離れた米国のミッドウェー島で子育てするコアホウドリの悲劇を紹介する。「親鳥は海面に漂うプラスチック製品を餌と間違え、ヒナに与える。幼鳥の死骸(しがい)の胃袋を調べたら、計325個のライターが出てきた。国が判明した8割のうち、日本が58%と多く、中国・台湾が19%だった」 環境団体「JEAN/クリーンアップ全国事務局」(東京都国分寺市)によると、昨年の同島慰霊ツアーの参加者が海岸で拾ったごみも日本製が目立ち、新潟、静岡県内の企業名などが記されたライターがあった。小島あずさ代表は「ウミガメや海鳥が集まる生態系豊かな島。海流の恩恵だが、今はごみももたらし、貴重な生き物を苦しめている」と話す。さらに藤枝氏の調査でライターの流出地は河川の上流の都市も多く、太平洋沿岸に出たごみはその後、広く太平洋に流出していることも判明した。東京から南へ約1000キロ離れた小笠原諸島でも日本製が6割以上あった。 このため法案には、漂着ごみは太平洋上を含む周辺国の共通の課題として解決する「国際協力の推進」が盛り込まれた。藤枝氏は言う。「あの広い太平洋上にさまざまなごみがどれほど浮いているものか。日本は太平洋にかなり負荷をかけている。被害者である一方で、加害者でもあると認識して考え、行動しなければならない」 |