DV男性被害者とDV女性加害者 [2010年12月27日(Mon)]
NHK徳島「四国羅針盤」の「DV男性被害者」見て
まず番組をみて、『DV、DVと言って女性被害者ばかり取り上げ、世の男性は責められている気がしていたが、けっこう男性被害者もいるんじゃないか、何も男性ばかりが悪いんでなく、女性も悪いんだし、暴力は「お互いさまだよね」』というメッセージを感じました。 社会に広く発信する情報番組では、「DVについて」は単に男女を対比するだけの描き方をしてほしくないのです。DVは今日の社会が暴力を容認する風潮があるため、男性も女性も家庭の中でも「短絡的に暴力によって解決する」考え方が蔓延していることを伝えてほしいです。 また被害の実態から言うと、「お互いさま」ではないのです。 1.2008年内閣府の調査では、女性被害者は3人に1人、男性被害者は5.5人に1人ということですが、女性の被害の深刻さ、残忍さが言われていません。なぜDV防止法が制定されたかというと、家庭という密室で夫から妻への暴力によって、たくさんの女性が殺害されていたからです。男性被害者が妻から殺害されたというのは、ほとんど聞きません。(男性加害者が、追い詰められた妻によって殺されているのです) また女性被害者へは、性的な暴力があり、望まない妊娠をさせられているのです。 被害者の中には、監視され、外出ができないようになり孤立させられます。 そして意を決して家を出るとつきまといを受け県外への避難をする場合もあるため、仕事、住居、友人・知人、自分の身内、子どもなどすべてを失い、心身に深い傷をうけPTSD(心的外傷性障がい)を起こすのです。生活全般の支援を受けなくてはいけないのです。 男性被害者は何を失うのだろう。失うとしたら所有物である、妻・子ども(親権を取る場合もある)たちです。仕事、友人・知人、身内、住居、なんと言っても命を失わないし、望まない妊娠などはないのです。 2.被害者たちはなぜ暴力のある家庭に留まるのでしょうか? 男女とも、暴力を受けていることは恥ずかしく誰にも口外しません。これは被害者特有です。また子どもがいるため離れられないし、家庭を維持しなくてはと男女とも思っています。 3.加害行為の理由はなになのでしょうか? 男性の加害理由は、親密な関係の相手(妻、元妻、交際中の相手、元相手にも)に対する、力を使っての支配です。自分は上下関係、主従関係にして、妻や子どもを支配下に置くのに暴力を使うのです。 では女性加害者は、あのテレビに出演した女性について考えると、彼女は仕事をやめ、専業主婦となり、家事と育児にたった一人で向き合っています。 とくに子育てのプレッシャー(「母親だろ。こんなこともできないのか、なにやってんだ!」と言われる)と不安(周りが期待するような子育てができない、母親業に自信がないなど)と孤立した状態(相談できない、支えてもらえない状況)であったと言えます。夫に相談しても 仕事に逃げ、向き合ってくれない。彼女の苦しさ、つらさ、不安をしっかり受け止めず、逃げて、最後は「ゴメン、ゴメン」と謝って済ませていたのではないでしょうか? 夫の働き方はどうでしょうか?彼は育休を取れたのか?家事、育児をどれだけやったのだろうか?土・日も出勤したのだろうか? 子育ては、妻一人ではできません。夫や身内や友人、職場の支援と社会資源の利用(保育ママ、ファミリーサポート、託児所、児童館など)が絶対必要です。 東京「アウェア」の山口のり子さんは、つぎのように話しています。 @男性DV被害者支援も確かに必要かもしれないけれど、統計では女性の被害者が圧倒的に多いし、深刻な被害を受けているという事実を伝え、その支援が緊急だということを番組内で言ってほしかった。 A女性の暴力行為は彼女の責任だけれど、女性がひとりで子育てをしなければならない状況や、男性が実際には子育ての責任を果たさないし、やろうとしてもできない状況などについても言及しないと、問題解決に向かう報道にならない。 米国のDV防止専門家のランディ・バンクロフトさんも、『社会ではあまりにも女性被害者への暴力が蔓延しているため、女性が受ける被害の深刻さや困難さが、真剣に受け止められなくなっている』と言えるのではないでしょうか? |