朝の散歩 [2011年05月12日(Thu)]
![]() つい先ごろまで長袖にカーデガンなぞを羽織っていたのに みなさん一気に半袖へと衣替えです。 雨が降っても蒸し暑く、じめじめとまるで梅雨のような天気が続いています。 天気の良い日は、戸外でランチを楽しんでつかの間の「春」を満喫したいもの。 Kさん、先月は「あの空の色。それに桜の花が映えて…」と感想を言われていました。 「美味しいですか」と尋ねると「何もかも美味しい」。 春の空気とともにいただく食事は、特に美味しく感じられるのではないか、と思いました。 ![]() ![]() ![]() ![]() さて、ともの家には3匹の犬(元・野良犬)がいます。 これまで、アンジュールの職員が玄関前のクロとシバ(その名の通り黒犬とシバ犬) を散歩に連れて行っていたのですが、 一人で二匹を一度に連れていくのは大変ということで、 シバちゃんの散歩は昨年から小規模の担当になりました。 利用始めたころに比べ体重が6キロ増えた、男性利用者Nさん。 以前は良く歩く方で、離れた自宅へ日に何度も帰っていました。 それが、ここでの生活に慣れて落ち着かれたのか、道を忘れてしまったのかわかりませんがちょうど昨年の五月からぴたりと外へ出なくなり、 健啖家であることも災いし(?)どんどん体重計の針は増加を示す一方に… これはちょうど良い機会とばかりに、朝の散歩はNさんの役割となりました。 最初のころは「眠い、行かん」と動いてくださらなかったり、 職員から「こんな寒い日に歩かせるのはおかしい」「Nさんにはしんどすぎる。散歩は業務の一環として職員だけで行ってはどうか」という意見があったのですが、 散歩を「業務」としては、犬もかわいそう。生活の一部として、「主体者」であるお年寄りと一緒に行くのが「介護」ではないか、と提案しました。 健康なうちは、寒さ暑さも肌で感じながら汗をかいて歩きたいと思います。それは、“いずれ歩けなくなる”現実があるからです。 それに、犬を見るNさんの瞳はとても慈愛に満ちており、 「ちょいちょいちょ〜よしよしどこいくの、おやうんちかな…おしっこか、ハハハ」 など優しく声をかけて下さるのです。 散歩はNさんのケアプランとして位置付けました。 毎朝、Nさんとともに手を携えて歩きながら(実際のところ、歩みの重いNさんを引っ張りながら)Nさんの様子を観察します。おっ、今日は快調だな。坂の上の桜を見に行ってみよう。 今日はしんどそうだな…坂はやめて、住宅街を通ろう。 など、Nさんの体調に合わせてコースも変更。 そうこうしているうちのある日、「表で犬が鳴いています…」と話しかけるとNさんの方から 「そりゃかわいそうや。散歩に行こう」と私を誘われたのです。 犬のことを思いやる言葉に感動しつつ、ともに暮らすとはこういうことだな、と思いました。 日課としての散歩を通じ、Nさんはシバに心寄せているのです。 さらに、近所を散歩することで思いがけない発見も。 ロビー展に来ていた小学生が家から声をかけてくれたり、 犬を連れた親子連れと仲良くなったり。 同時刻に散歩する二人連れの老婦人たちはいつもにこやかに会釈してくれます。 わざわざ車を停め、手を振ってくださる方もいました。 また、他デイサービスに通う男性を見送る家族に、「どこもおかしいのばかりやな」と 言われた時は衝撃的でした。Nさんを“おかしい”という目で見るばかりでなく、 自分の夫も“おかしい”と侮蔑するとは…。複雑な家族の心中を考えてしまいました。 昨日、曇り空のもと心配しながら散歩に出かけたところ、予感的中、途中で降り出した雨に 「うわー冷たい」と急いで歩を進めていた私たち。 傘を持ってこなかったことを悔やんでいました。 すると、近所の方が顔を出し、「ここで雨宿りしていったら」と声をかけてくださったのです。 思いがけない言葉に感動しました。 人間って、やっぱり捨てたものじゃない。 後から聞けば、事務のMさん、スタッフOさんも、傘を持って私たちの行方を追ってくださっていたそうです。 レモンの木から落ちてきた実を拾って、話題にしたり、 遠出できない人のために、道端の野の花を摘んで帰ったり。 多くの方に感謝しつつ、今日も暑い夏に向かってNさんと二人歩く日々です。 |