寄付とこれからの社会 [2012年09月28日(Fri)]
10月1日に発行する「シミンズシーズ」の機関誌用に、「寄付とこれからの社会」について文章をまとめました。
読んでいただければ幸いです! ---------------- 「教養」という言葉を聞いて、イメージされるものは何でしょうか。ヘーゲルやカント、デカルトといった哲学者を思い浮かべるでしょうか。それとも、ベートーベンやモーツァルトといった音楽家でしょうか。印象派の絵画でしょうか。 20世紀、いわゆるハイカルチャーと言われる類の「教養」を身につけていることが、社会人としての「常識」や「たしなみ」でした。ビジネス界においても、これらの「教養」を身につけていることは、「見識」の高さを示すことになり、ある意味での紹介状やパスポートの役割を果たす場合もあったそうです。世界に通用するエグゼクティブになるためには、必ず「文学」や「音楽」とくに「クラシック音楽」といった「教養」が必要だったのが20世紀だと言えるでしょう。これらのことを、大前研一氏は、著書「『地の衰退』からいかに脱出するか」の中で書いています。 では、「21世紀の教養」は、何でしょうか。大前氏の著書によると、最近の世界のエグゼクティブの共通の話題は、以下のような内容だそうです。 「あなたは、近年の環境問題とその対策について、どう思うか?」 「アフリカのエイズの人たちのために、あなたは最近何かをしたか?」 つまり、「地球市民として具体的にどのように考え、どのようなアクションを起こしているか?」という、「知識」「見識」「経験」が問われるようになってきたというのです。 2011年6月22日、新寄付税制を盛り込んだ税制改正が成立しました。この改正により、一定の基準を満たすことによって認められる認定NPO法人の基準が緩和されたり、認定NPO法人や公益社団・財団法人等への寄付金について、「税額控除」が可能となったりするなど、寄付金に関する税制優遇の制度が大幅に改正されました。日本において、寄付文化がもっと広がるように歴史的な大改正を遂げたのです。 これまで、「企業は、利益を上げて納税すれば、それで社会貢献している」「寄付なんて胡散臭そう」「あまり自分には関係ない」という考えが多くを占めていました。しかし、今時代は変わりつつあります。グローバル化した社会において、通用するためには、「社会貢献」意識を持つことが、エグゼクティブの必須条件になりつつあるように、「寄付」ということさえ身近なものになりつつあるのです。これからの時代は、税金で支える「公共」から寄付で支える「社会」に変わりつつあるといっても言い過ぎではないかもしれません。 私達シミンズシーズは、この兵庫においても、「寄付」という行為が身近なものになるように、昨年から(仮称)ひょうごコミュニティ基金創設に向けて、動き始めました。まだまだ日本の制度は、誰もが「社会貢献」しやすい制度になっているとは言えません。私達は、「社会貢献」という人々のジリツした動きを後押しするために、その制度や環境を整えていきたいと思います。 |