2606樹木・水の循環 [2026年06月06日(Sat)]
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東葛しぜん観察会 研修会「樹木・水の循環」
川瀬美幸(柏市) 日 時:2026年6月6日(土)10:00〜12:30(座学)13:30〜15:00(実地)講 師:小林達明氏 場 所:千葉大園芸学部洗心倶楽部、担当指導員:渋谷 参加者:21名 午前中の講義はキャンパス内の「洗心倶楽部」という建物でイギリス式庭園の芝生や大きなクスノキを窓越しに眺めながら、ゆったりした雰囲気で始まった。講師は当会員でもあり、千葉大学名誉教授の小林達明さん。講義開始後に「今日は容赦しないので!」との言葉に、一同背筋が一瞬伸びたがその後に「途中で何でも質問してもらって大丈夫」とのフォローがあり、難しい専門用語も出てくる講義だったが、わかりやすく解説していただき、終始活発な質疑応答が行われる充実した時間となった。 これまで「樹木は葉っぱで光合成や蒸散をするために地面から水を吸い上げている」などと、ふんわり考えていた樹木の吸水は、科学的には「水ポテンシャル(植物が水を吸い上げる力)」によって制御されていることが分かった。この力の内訳は「浸透ポテンシャル(細胞内の溶液濃度による力)」「圧ポテンシャル(細胞の膨圧による力)」「マトリックポテンシャル(毛細管現象などによる力)」など。水道管でマンションの屋上までポンプで人工的に圧力をかける方法とは異なり、樹木は葉の蒸散により細胞内の溶液濃度を高め、負圧(引っ張る力)を生み出す。この浸透ポテンシャルは0〜-2.5Mpa(メガパスカル)に達し、水の高さに換算すると最大約255mもの高さに相当する。樹木はそれぞれに多様な形をしているが、隅々までこの驚異的な吸い上げ力で満たされていると思うと凄いなあ、と改めて感じる。また、アカメガシワやクサギといった先駆樹種(パイオニアツリー)は、勝手に強いイメージを抱いていたのだが、実は「葉の蒸散量が大きい割に、吸水力が弱く競争力が低い」という事が分かった。あえて競争相手が少ない過酷な環境で賭けに出るような独自の生存戦略をとっていて、なんだか人間社会にもそんな人がいそうだな、と思ったりした。 実際に午後の実習でアカメガシワの葉の温度を赤外線温度計で調べたところ、周囲の葉の温度よりも低いことが分かり「君は浸透ポテンシャルが小さいのに、その大きな葉っぱで蒸散をたくさんしているのね!」と言わずにはいられなかった。その他に実習では、長谷川式簡易現場透水試験器を使用し、浸透する水のスピードを計測した。分かったことは土の固さ(踏圧)で浸透するスピードはかなり落ちてしまうという事。湿地保全などで木道を設置するのは、単なる人間の歩行用通路ではなく、土壌の踏み固めを防ぎ浸透能力を維持する為の有効な手段だという事が分かった。現在、地球温暖化進行に伴い、線状降水帯による豪雨や洪水リスクが増加している状況では、今回学んだ「樹木の蒸散力」や「健全な土壌が持つ洪水抑制力」といった自然の持つ機能を生かす取り組みが今後一層必要になると感じる。まずは、自然観察指導員である私たちが、樹木の素晴らしさを周囲に伝えていかなければならない。木を観察する時には、見た目にとらわれてしまいがちだが、今回の研修では目に見えない水との関係を理論的、実践的に理解することで、新たな視点を持てるようになったと思う。 千葉大園芸学部キャンパス内のイギリス式、フランス式、イタリア式庭園も小林先生に現地を見ながら解説していただき、景観的要素や機能的要素などを取り入れた形になっていることを知った。 新しく知ることが多くて頭がパンパンになったが、実りの多い研修会であった。 東葛研修会 樹木 水の循環 写真報告.pdf |


