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タイムダラー

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創始者とその社会的背景

[2007年09月30日(Sun)]
創始者とその社会的背景

1.コア・エコノミーの重要性 

 「この世の中に役に立たない人はいない。地域で埋もれているパワーをコミュニティ再構築の資源として活用できないだろうか」こんな考えのもと、米国ワシントンDC在住の弁護士であり、市民活動家のエドガー・カーン夫妻が1980年の初期に考案したのが「タイムダラー」です。このタイムダラーは[1時間のサービスで、1点取得。貯めた点数で自分に必要なサービスを受けられる」という会員間での相互扶助のシステムです。全ての人が等しく持っている時間に基づいて価値付けされているタイムダラーでは、どんなサービスでも1時間=1点です。
 この点について時には、「子供たちが学校帰りに一人暮らしのお年寄りを訪ねるのも、元教員で経験豊かな高齢者が小学校で助手をするのも同じ1点では不公平ではないか」と言う意見も出てきます。それに対してカーン氏の答えは明確です。「タイムダラーの交換基準は、市場経済での労働の対価に基づいていない。つまり、手助けをする事によって得られる精神的な喜びの方が点数を得ることよりも重要だという価値観で考案されているから。仕事ごとに差をつけると、相互扶助で得られる精神的な喜び、人を愛する心、自分を高めようとする気持ちなどを締め出してしまう。そして、市場経済と同じ上下の関係ができてしまう。タイムダラーとは、市場経済の下では、経済価値のないと思われていた“しごと”「オイコノミア」と位置付けられる家事労働、地域での思いやりの交換などをコア(核)エコノミーとして、正当に評価しようとの運動なのだから。そして、市場経済の下では価値のない人と決めつけられている人、声なき人たちが、“市民”として、疑問を持ち、社会に主張し、アクションを起こすデモクラシーの実現を目指すものだから」。

2.コミュニティ再構築のために

 こうして始まったタイムダラーは、その後システムの改良を重ね、1987年には、ロバート・ウッド・ジョンソン財団から、120万ドルの助成金が出され、米国内6ヶ所のモデル地区で3年間のパイロットプログラムが開始されました。最初は高齢者による在宅支援プログラムとして、将来、困った時のために点数を貯めることを奨励していましたが、その内、自分のために貯めるだけでは点数は流通しない。これは「コミュニティの再構築」という本来のミッションから外れ、プログラムの成長を妨げるのではないかとの意見が6ヶ所の拠点から出てきました。
 こうして、パイロットプログラムの終了時には、「サービスのメニューは在宅介護だけには限らない」「利用者、協力者と分けないで双方向性にする」「点数は2、3年で使い切る」「点数は自分のために貯めるだけではなく、寝たきりなどで、自分では点数を貯めれない人、または事務所に贈ることを奨励する」「中高校生、大学生などにも参加をすすめる」などと、新しいアイデアを各地で取り入れていきました。

3.異世代の交流を目的に

 6ヶ所のモデル地区の中でも、特に異世代の交流に力を入れていたのがマイアミ市です。その中心で活躍していたのは、キューバ系アメリカ人のアナ・ミヤレスさん。銀行での国際部長の地位を捨て、NPOの世界に飛び込んだ彼女の活躍はめざましく、マイアミ・デイド郡の病院・教育委員会・企業・保険会社などとリンクしながら、地域の課題解決のための事業や、さまざまな異世代交流の事業を始めていきました。
 例えば、高齢者が主体となって、タイムダラーの点数で給料を受け取るリトルハバナでの保育園経営、マイアミビーチ高校の生徒と労働組合の退職者たちがペアを組んで行動したハリケーン復興事業など、画期的な数々のプログラムを実施していったのです。

4.デモクラシーの実現を目指して

 ところで、タイムダラーの創始者に話を戻しますが、1960年代からアフリカ系アメリカ人でダイナミックなジーン夫人と物静かなエドガー・カーン氏は、公民権運動に始まり、低所得者のための法律専門学校の設立など、テレビや新聞でよく報道された著名人夫妻でした。1990年、ジーン夫人は週刊誌『タイム』のウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれましたが、タイムダラーが世界に広がるのを見ずして、翌年の1月にガンで亡くなっています。
 こうして、社会正義のためには果敢に行政や企業に意見を申し立て、常に弱者の側に立って運動を展開していた彼らが創案したタイムダラーは、1時間1点でお互いのサービスの交換に使われるだけでなく、このシステムをツールにしてさまざまなプロジェクトを創造していきました。特に低所得層の人たちが他者への依存から自立し、一人の“市民”として社会にデモクラシーの実現のためにアクションを起こす、そのきっかけに使われているケースが多くあります。
 例えば、フロリダ、ワシントンDCでの仲間達同士の家庭教師プログラム事業、ニューヨークのHMO(会員制健康医療団体)での高齢者・疾病予防プログラムなど、当事者が自発的により良い生活を目指して行っているプロジェクトにタイムダラー・システムを取り入れています。

Posted by 大年 由美子 at 08:15 | 社会的背景 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
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コメント
大年さん、
最新コメントの所に、入れる原稿を用意しますので、よろしくお願いします。とても簡潔で、いいブログなので、一緒に育てて生きましょう。

では、酷暑の候、がんばってね。

へロン
Posted by:へロン久保田雅子  at 2008年08月09日(Sat) 23:20
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