
その人の世界。[2016年01月26日(Tue)]
久しぶりに観ました、
ジャームッシュ作品『 ナイト・オン・ザ・プラネット 』。
世界の5都市を舞台にした、
タクシードライバーと乗客の人間模様を描いた映画です。

やっぱりオモシロイー!!
クセのあるタクシードライバーたちが
「 お客様にご利用いただいている 」ではなく、
「 自分の世界にようこそ 」なスタンスで。
下北沢にあるカフェ『 ベアポンド・エスプレッソ 』の
“ 田中勝幸さん ” のこのコトバのような世界観。
「 人生は自分だけのものだから、
たくさんの人に理解されなくてもいいんです。
家族や大切な人だけがわかってくれればいい。 」
「 僕の考えでは、
この店でマシンの前に立っている時は、自分はキング。
何か言われたら “ お前、誰に向かってモノを言ってるんだ ”
と堂々と言える。
でも、そこから一歩出たら僕は浮浪者と同じ。
そういう生き方なんですよ。 」
コスタリカの路線バスのドライバーは本当に愉快でした。
ひたすらにバラードをかけるドライバー。
お気に入りチームのサッカーの試合をラジオで流すドライバー。
ウエスタンハット&レイバン風サングラスのドライバー。
それぞれのバスが
その人の好きで溢れた空間だったのですが、
一度、こんなことがありました。
ドライバーは、もうすぐ60歳くらいのおじさん。
ラテンドライバーならではのスピードで、
直線では周りの車をぶち抜き、カーブは攻めに攻め、
サッカー選手だと、バルセロナ時代のロナウドみたいな運ちゃん。
赤信号で止まると、
何かを確認しながらバックミラーを動かし始めました。
そのミラーの先に映ってるのは、スタイル抜群の美女。
おじさんはその子に向けて盛んに目配せをして、
気づかれないとわかると手を振って、ナンパを敢行したのです。
しばらくして気づいた美女。
まったく嫌な顔をせずに、
愛想よく手を振りかえして、おじさんニンマリ。
微笑ましくてすっごくよかったのですが、
ひとつだけ困ったことは、信号が青に変わると、
美女のリアクションでテンション上がったおじさんが、
さらなる怪物ロナウドになってしまうこと。
コンポステーラ戦のときのような誰も止められない状態になり、
カーブでのスリリングさは半端なかったのでありました。
コスタリカやブラジルでは
そういう「 その人自身 」が見える瞬間がいっぱいあって、
それはそれは愉快だったなぁ。
( その分、面倒くさいこともあるんだけども… )
やっぱ、人間が大好きです。
『 音楽、場所、人……
時間が過ぎるのは早いから、
来るもの拒まずで受け入れるし、
僕に話しかけてくるものを大切にする。 』
映画監督 ジム・ジャームッシュ