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高校生がつくったサバ缶が宇宙へ [2020年10月11日(Sun)]
先日、かつて海洋政策研究財団で「沿岸域の総合的管理」を推進するためのモデルプロジェクト「海を活かしたまちづくり」に一緒に取り組んだ大塚万紗子さんから「こんな素敵なニュースが!」とメールをいただいた。

それには「福井の高校生が開発 サバ缶が宇宙へ 野口聡一さんに提供見通し」というNHKのニュースWEB(9月29日)と、科学技術振興機構(JST)のScience Windowの「鯖街道から宇宙へ!〜高校生がつくったサバ缶がJAXA認証の宇宙食に〜」という記事(2019年12月12日)などが添付されていた。

それらをまとめると概略次のとおり。

福井県県立若狭高校海洋科学科の生徒たちの「宇宙日本食サバ缶プロジェクト」が開発したサバの缶詰(「鯖醤油味付け缶詰」)が、日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが10月31日に打ち上げられるアメリカの民間の宇宙船で国際宇宙ステーションに行って滞在している間に、別の輸送船で宇宙ステーションに届けられ、野口さんらの宇宙飛行士に提供されることになった、という。

「小浜の優れた水産加工技術を世界に伝えたい」という生徒たちの思いがこもったこの「宇宙日本食サバ缶プロジェクト」は、14年前に若狭高校海洋科学科の前身の小浜水産高校で始まった。

サバで有名な福井県の小浜市にあるこの高校にはサバ缶製造の実習工場が併設されていて年間1万個ほどのサバ缶が製造されている。2006年に同校は高度な食品衛生管理技術を学ぶ授業の一環として衛生管理の世界基準であるHACCP(ハサップ)を取得。それを指導した小坂康之先生が、ある日、授業でHACCPはもともと米国航空宇宙局(NASA)が宇宙食など食の安全のために開発した衛生基準であるとつたえると、生徒たちから「それなら自分たちのサバ缶も宇宙に飛ばせたい」と提案があり、宇宙食への挑戦が始まった。

さらに、2013年に小浜水産高校と「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校の若狭高校が統合し、丁度そのころ同校でJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙食についての講演が行われたのがきっかけとなってサバ缶を宇宙食にするプロジェクトがSSH事業の課題研究として本格的にスタートした。

宇宙食に認証されるには、HACCPで求められる製造工程の基準のみならず、栄養分、保存条件、味など、さらにサバ缶のように汁を含む食品については粘度についても、JAXAが定める宇宙日本食認証基準をクリアしなければならない。生徒たちはそれらの課題を一つ一つ解決していって、ついに2018年11月に若狭高校のサバ缶はJAXAから宇宙日本食に認証された。

しかし、これだけではまだ足りない。実際に宇宙に持って行ってもらうためには宇宙船に搭乗する宇宙飛行士が試食してこれを持っていくのを希望することがもっとも重要という。今回の宇宙食採用は、その難関をもクリアした結果である。

これについて若狭高校海洋科学科の小坂教諭は「生徒や卒業生の思いが宇宙に届けられることはうれしい以外のことばでは表現できません。実際に野口さんたちが食べる瞬間が楽しみです」と話していた、という。

14年間の長きにわたって先輩から後輩へと引き継いでこの高い望みを掲げたプロジェクトに取り組み、ついにこのような素晴らしい成果を達成した歴代の生徒の皆さんの熱意と努力、そしてその間ずっと生徒たちの活動を見守り、導いてきた小坂先生の指導力に敬意を表したい。
 
実は、このところご無沙汰していたが、私も大塚さんも小坂さんとは「海を活かしたまちづくり」の取り組みを通じて深く結ばれた仲なので、これは大塚さんの言うとおり「素敵なニュース」である。

わたしは、海洋政策研究財団で海洋基本法の制定に取り組み、制定後は、海洋基本法が掲げる基本的施策の推進に取り組んだ。2010年からは、沿岸域の諸問題に積極的に取り組む意欲のある地方公共団体と協力して「沿岸域総合管理(ICM)」のモデルサイトを立ち上げ、地域の実情に応じたICMの取り組みを支援して過疎化・高齢化等に苦しむ地方沿岸域が元気の出るような取り組みを開始し、それをモデルにして国の総合的な沿岸域管理制度を樹立することを目指した。

まず、全国から「海を活かしたまちづくり」に意欲的な地方自治体を発掘してモデルサイトを立ち上げるために意欲のある自治体に関する情報の収集に取り組んだ。そのとき、水産関係の方から福井県小浜市の推薦があり、まずこの人に相談してみてはどうかと紹介されたのが小浜水産高校教諭の小坂康之さんだった。

そこで小浜水産高校に小坂さんを訪ねてモデルサイトの立ち上げについて相談するとともに、小浜水産高校(後に若狭高校に統合)の海洋・水産教育について話を聞き、校内を見せてもらった。そのとき見聞した、小坂さんが取り組んでいる海洋・水産に関する前向き、かつ実践的・専門的な水産教育は私のそれまでの常識を覆す優れたものだったので強く印象に残っている。そして、小坂さんの助言を受けて福井県立大学の富永教授、小浜市産業部の河野次長等に会い、小浜市で「海を活かしたまちづくり」の取り組みを立ち上げることができた。

このように小坂さんは10年前からの知己なのでこのたび久しぶりに素敵なニュースに接してその活躍を慶ぶとともに今後益々のご活躍を心からお祈りしている。
Posted by 寺島紘士 at 00:26
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